第4話

 えっ、と声を上げて辺りを見回して見ても、そこは草原だった。

 いつの間にか歩きすぎていたのかと思ったが、川の形を見ると、明らかに村の場所の川だ。

 村が……消えた?

 そんなこと、有り得るのか?

 ああ、もしかしたらこれも魔法なのかもしれない。俺が村に帰って来られないように、わざわざ俺の視界から村を消したんだ。

 なるほど。魔法ってモノは凄いな。


「あら…小さな坊や…ここで何をしているのですか?」


 美しい声が聞こえてきた。振り向くと、そこにはクリーム色の髪の毛をハーフアップにしてピンクのリボンを付けている女の人がいた。

 驚いた。こんな綺麗な女の人見たことが無い。

 年は20歳位だろうか。身長は俺よりも高くて、胸が大きい。

「えっと……」

 初対面の女の人と話すのは初めてで緊張する。それに……美人さんで……

 吃ってしまっていると、女の人は手に持っていた籠を置くと、こちらにやってきた。


 俺の前に辿り着くとしゃがんで俺の視線に合わせてくれる。

「坊や、迷子かな?」

 女の人は微笑んでそう言った。

 迷子……?いや、迷子ではない。正確には親が死んで、村から追い出された所で……

 いや、迷子ということにしておこう。

「う、うん。はぐれちゃって……」

 女の人はニコッと微笑むと、俺の頭に手を置いた。

「親御さんは?」

 そのままゆっくりと撫でられる。いい匂いだ。

「わかんない……」

 そう言うと、女の人は可哀想な子を見るような目で見つめてきた。

「そう……じゃあ、あたしの家においでよ。」


「え?」

 家……?この女の人の……?そんなことして貰っていいのだろうか。

「で、でも……」

「いいの。早く行きましょう」

 女の人は俺の手を引くと、強引に歩き始めた。籠も持ち上げると、そのまま俺は森の中を女の人に連れられて進んで行った。


 この女の人は優しいな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る