第3話
「………」
レイジは何も答えなかった。レイジ……なんでそんなに成長しているんだ?父親譲りの赤い髪と、赤い瞳……そして、村1番の魔力の持ち主として手の甲にいれられた赤いクロスの刺青……それは俺の弟と証明するようなものだが、俺の目の前にいるのは明らかに大人の男で……お前は、俺と1年年下なだけだろ?なんで……
やっぱり、これが魔法というものなのか?
「……俺の父さんと母さんを、殺したのはお前なんだろ?」
そんな訳ないだろう!そう言いたいのに、口から出るのは掠れた息だけだ。
レイジはこちらにやってくる。その瞳は酷く澱んでいて、もしかしたら、次こそ本気で俺を殺すつもりかもしれない。
「ち、違う。俺じゃない!」
必死で声を出して否定するが、レイジの足は止まらない。
「殺す殺す殺す……殺すっ!!!なんでお前が俺のっ!!!!くそっ!!死ねよっ!!!」
レイジが右手をゆっくりとこちらに向けてくる。まずい!さっきの“魔法”を使ってくる気だ!
咄嗟に逃げようと、腰をあげる。
早く、逃げないとっ
「……やめろよ」
突然聞こえた声に、動きが止まる。振り返って確認すると、俯いたガビンがいた。その顔は、どこか暗く影になっている顔からは表情が見えない。
「…ガビン……」
レイジも気がついたのか歩みを止めて、ガビンの方を見ている。
「そんな事をしても、意味が無いだろ?」
ガビン……?何を、言っているんだ?
「アル、お前は親殺しという大罪を冒した!ここから出ていけっ!!!」
ガビンは捲し立てるようにそう言うと、俺の方に歩いてくる。
そして俺の手首を強引に掴むと、そのまま放り投げた。
そのまま、俺は重力に従って地面に激突する。
背中が割れたのでは無いかと思うほど、鋭い痛みが走る。
「今日中にこの村から出ていけ、いや、今すぐだ。」
ガビンは俺の事を睨んでから、直ぐにレイジの方に振り向いた。
俺は反抗する気にもなれず、痛む体を抑えて立ち上がると、そのまま玄関の方へ向かう。
俺は、この村には要らないみたいだ。ああ、そうだ。魔法が無い俺の存在はこの世界では無価値なんだ。
仕方ない。俺には魔法がないんだから……
目が熱くなるのを誤魔化しながら、俺はそのままヒソヒソとチラチラこちらを見ながら話している老人達を通り過ぎると、村の入口に向かって歩く。
ああいいさ。こんな村出ていってやるよ。あいつらなんか、死んでしまえばいい。
心の中で願う。
こんな村、滅びてしまえ。
そう願った時、心の中の黒い塊が、無くなった気がした。
突然、時が止まった様な、得体の知れない危険が迫ったような気配を背後から感じた。
ふっと振り返ると、そこには先程居た村なんてものは無く、ただの広い草原が広がっているだけだった————
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