竜装騎士、覚悟を決める
「ぶ、ブレイス……お前……いくら修行でもやりすぎだぞ。今、蘇生をするから……」
何か理由があるはずなのだ。
それくらいブレイスへの信頼は厚かった。
それこそ六百年前の七人は家族のような存在だったのだ。
「ああ、お兄さん。言っておくけど蘇生はできないですよ。だって、コレは死んでいるけど生きているからね」
心臓が止まって土気色の肌をしていたコンは、信じられないことにうめき声をあげて手足を小さく動かしていた。
「まさか……アンデッドか!?」
「そうです。死んだ身体に魂が囚われている状態。しかも――
「ブレイス……お前!?」
エルムはブレイスに掴み掛かろうとするも、手で制止された。
「おっと、力でお兄さんに敵うはずありません。ですが、こちらは人質がいます。
「お前はいったい何がしたいんだ……」
「
ブレイスの言う〝遊び〟というモノが理解できない。
今わかっているのは、力尽くでブレイスをどうにかするというのは難しいということだ。
「お兄さんはまず、ボリス村の中を見て回って来てください。
ブレイスは短距離転移魔法を使って、コンと共にどこかへ消えてしまった。
残されたエルムはしばらく無言で思い詰めた表情をしたあと、ウリコの店へ向かってみることにした。
一階のカウンターにいたのは、真っ青な顔をしたウリコと、怒りの表情を見せるジ・オーバーだった。
ジ・オーバーは今にも掴み掛かってきそうな勢いで向かってきた。
「エルム、これはどういうことなのであるか!? ウリコが……村の者全員がおかしなモノを植え付けられておる!!」
エルムも薄々は気が付いていた。
村の中にある百近い古の魔王の薄い気配――それは村人たちだったのだ。
それを確認してしまい、胸中には複雑で重い気持ちが渦巻いてしまう。
「みんなは無事なのか……?」
「今はまだ、ウリコと我以外は気が付いていない」
ウリコの方を見ると、平常心を保とうとして震えていた。
「い、いやぁ~……。ロリオバちゃんの様子がおかしいからって問い詰めたら、私の中に変な物が埋め込まれていると聞いちゃいました……」
「ウリコ……」
普通の人間は気付かなくても、力ある存在であるジ・オーバーだけはエルムのように察知してしまったのだろう。
まだ幼い彼女がどれだけ動揺したか想像に難くない。
ウリコもそれで気が付いたのだろう。
「ブレイスが……古の魔王の細胞を村の人間に埋め込んで、アンデッドにしようとしているらしい……」
「あ、あはは……。もしかしたら、私ならアンデッドになっても意外と楽しく暮らせるかもしれませんよ……?」
二人に心配させまいといつものように冗談を言うウリコだが、それが逆に痛々しい。
自らの身体がアンデッドになってしまうかもという状況に、普通の人間が耐えられるはずないのだ。
エルムは覚悟を決めた。
「ジ・オーバーは、ここでみんなのことを頼む。何があるかわからないからな」
「エルムはどうするのであるか……?」
「ブレイスのところへ行くよ。どうやら俺と遊びたいらしいからな……!」
六百年前の仲間――家族に均しい存在と戦うことを決めた。
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