幕間2 滅びゆく王国

 ナムゥ大陸の王都。

 その城にある王の間。

 荘厳そうごんな玉座に腰掛ける、王冠をかぶった白ヒゲの男がいた。


「なんたることだ……」


 その男は王だった。

 だが、これからも王でいられるかわからない不安で顔が歪んでいた。


「お前たち、わかっているのか!?

 最強の竜装騎士であるエルムが、この王国を数百年間支えてきたのだぞ!」


「ひぃっ!?」


 王の御前で手枷を付けられ、自称SSSランクの貴族たちは横一列で並ばされていた。

 貴族ともあろう者がこの状態ということは、地位を剥奪されて、烈火の如き怒りを浴びる罪人になっているということである。


「アレを……エルムを失ったら……もう終わりだ……」


「お父様……」


 王の横にはスタルカ姫が心配そうに立っていた。


「クソッ!

 なんとか関係を強固に保つため、娘を婚約者にやろうとしていたところに……!

 お前たちのくだらないSSSランクゴッコのために我が国は滅びようとしているのだぞ!?」


 エルムがいなくなってから、王国は斜陽を迎えていた。


 圧政──。

 これはエルムがクエストで民衆を殺処分すると見せかけて、隠し財産を使って、説得をしたり、移住や仕事を斡旋していたのだ。


 災害級モンスター討伐──。

 貴族が希少素材欲しさに手を出して、それをエルムが後処理していた。


 異種族への侵攻──。

 これもエルムが殺処分すると見せかけて、うまく説得して逃がしたりなのだ。


 まだまだあるのだが……。

 エルムがいなくなって、それらが全て処理しきれなくなり、自業自得の波として王都に向かってきている。

 一番到着の早い先頭にはSランクモンスターの集団である。


「お、王よ! Sランクモンスター程度なら、エルムなんていなくても……。

 なんとかなるのでは……?」


「なるか馬鹿もん! 一匹ならまだしも集団だぞ!?

 それを軽々と対処するのは、エルム以外の人間にできるはずがないだろう!?

 どこまで常識知らずなのだ!! お前ら役立たずの貴族は!!」 


「ひぃっ!?」


 数百年、エルムに頼り切っていたおかげで王国軍も練度は低く、まともな防衛は期待できない。

 冒険者に呼びかけようにも、すべてエルム頼りだったために王の人望がない。


「くっ、もはや遷都せんとしかないというのか……」


「お、お父様……王都を別の場所に……!?

 この城は、王都はどうなるのですか!?」


「もう……今の王都は滅びるしかないのだ……」


 ──その後、王都から人は消えて、Sランクモンスターが跳梁跋扈ちょうりょうばっこする廃墟となった。

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