第4話 もうすぐクリスマス

 クリスマスも近づいてくると街の様子は急に華やいだものになり、クリスマスツリーやイルミネーションで幻想的な世界が演出される。


 咲良と美月は仕事が終わってから待ち合わせをして、総合ショッピングセンターへ食事に来ていた。ここには広場に巨大なクリスマスツリーがあり、毎年この時期になると二人で見に来ていた。


「これ見るとクリスマスが来た――って感じがするよね」


 美月の言葉に巨大なツリーを見上げて、クリスマスが近づいて来たことを実感する。浮き立つ心を表して声が弾む。


「ほんとだね~」


 そう言ってツリーから周りの人混みに目をやる。何気なく視線を向けた先に長谷川の姿が見えた。少し距離があるので、よく見ようと動こうとした時、隣にいた女と楽しそうに笑い合い、二人は雑踏に紛れて見えなくった。


 今のは何? あの女は誰?


 呆然としていると「クリスマスはどうするの?」という美月の声に我に帰る。


「え、‥‥‥いや、まだ、決めてない‥‥‥」


 慌てた咲良の様子に何か言いたそうな顔をする。それを遮るように美月に話を振る。


「美月は? 彼と、どこか行くの?」

「うん、秀君がホテル予約してくれたから」

「ホテルのレストランでディナーして、そのまま部屋へ直行か」

「ふふ、そういうこと」


 美月は「付き合って5年目の記念なんだよ~」と嬉しそうに笑う。

 

 二人は大学生の時から付き合ってる。何でそんなに続くのか、長い時でも半年しか続いたことのない咲良には不思議でしかたない。

 小さな声で「よく続いてるよね」と呟いた。


 二人はショッピングセンター内のレストランへ移動した。窓際の席に案内されて窓を見ると、クリスマスツリーの一番上に飾られている大きな星形のオーナメントが目の前に見える。


 上から見るツリーも幻想的で良いものだと見ていると、美月の声に現実に戻された。


「長谷川って男とは、その後どうなのよ?」

「どう、とは?」


 一瞬先程見た長谷川と女の姿が頭によぎり、眉をしかめそうになる。


「会ってるんでしょう?」


 美月が確信しているかのような声音で言ってきた。


「うん、‥‥‥まあ、何度か会ったよ」


 美月に「それで」と聞かれ、ポツリポツリと今までのことを打ち明ける。


 咲良は美月の家に泊まりに行った後も、長谷川とは仕事で顔を会わせる以外に、一緒に食事をしてからホテルに行くというのを何度か繰り返した。しかし、最初の日以来『付き合おうか』という言葉が長谷川の口からでたことは一度もなかった。


 話し終えると「そんな男、止めときなよ」と美月が顔を歪める。そんな遊び人……と続いた声に、先程見た長谷川と女の笑い合う姿が思い出された。

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