第41話FAX

「え、使い道って……文字をこういうふうに点滅する蛍光色でモザイク状に表現できたら面白いなって思ってただけですけど。タイルを敷き詰めたモザイク絵を見てて、このタイル一つ一つの色を制御できて入れ替えられたら……ほら。さっきスライムさんがやったみたいに、モザイク絵をスライムさんは動いてないのに、あたかも文字が動いているように見えるじゃないですか」


 文字を動かせるようになったら面白いですか? たしかに面白いことになるかもしれないわね。あんたの発明が世界を変えることになるかもしれないんだから。それってとっても『面白い』んじゃないかしら。


「ちょっとわたしにも部下のスライムの点滅を指示させてくれるかしら、マッドドクターさん。」


「どうぞどうぞ。なにか面白いことでも思いついたんですか、マオウ課長さん」


 ええ。思いつきましたとも。とっても面白いことをね


「あんたたち、あたしが指示する通りに光るのよ。光るスライムは03……」


   ■       ■       ■       ■   

    ■     ■      ■  ■     ■  ■  

   ■■■■■■■■■     ■ ■■■■■■■■■ ■

  ■■ ■■■■■ ■■    ■■■ ■■■■■ ■■■  

 ■■■■■■■■■■■■■   ■■■■■■■■■■■■■

 ■ ■■■■■■■■■ ■     ■■■■■■■■■ 

 ■ ■       ■ ■     ■       ■ 

    ■■   ■■         ■■   ■■   


「あ、すごいですね、マオウ課長さん。なるほどお。文字じゃなく、絵をモザイク状に表現しましたか。モザイクってのはもともとタイル絵ですものね。でしたらスライムさんでモザイク絵が表現できますね」

 

 そういうことよ。そして、それだけじゃないのよ。


「21のスライム光りなさい、そして……」


   ■       ■       ■       ■   

 ■  ■     ■  ■      ■     ■    

 ■ ■■■■■■■■■ ■     ■■■■■■■■■ 

 ■■■ ■■■■■ ■■■    ■■ ■■■■■ ■■  

 ■■■■■■■■■■■■■   ■■■■■■■■■■■■■

   ■■■■■■■■■     ■ ■■■■■■■■■ ■

   ■       ■     ■ ■       ■ ■

    ■■   ■■         ■■   ■■   


「ほほお。さっきは左側が両手をぶら下げていて、右側が万歳していたのに……今は左側が万歳して、右側が両手をぶら下げていますね。なるほど。絵が動いているように見えるわけですか……これはすごいですね。マオウ課長さん。代わってくださいよ。僕もそのモザイク絵のモンスターを万歳させたり、左右に動かしたりしたいです」


「いいですよ。もともとマッドドクターさんの発明なんだからどうぞご自由に」


「ありがとうございます。いやあ、なんだかわくわくしてきましたよ。こんなに面白いものがこの世にあったなんて」


 ふう。なんとかうまくいった。この理系オタクをほっておいたら、ジュエルウエポンを復活させてこの世を崩壊させかねないからな。こうして子供のおもちゃで遊ばせておくのがこの世界のためになるだろう。おお、おお、すっかり熱中しちゃって。これでしばらくジュエルウエポン復活はなさそうだな。


 それにしても、モザイク絵の表現が何回も分裂した小さいスライムの蛍光でできるとはな。しかも、ナンバリングしたスライムが光っているか光っていないかだけが必要な情報だから、光るスライムの番号だけ伝えれば、画像の情報を数字だけで伝達できると言うことではないか。モールス信号の応用で、光っていることを1で、光っていないことを0とすれば、0と1で画像が伝達できるんだな。


 これはいいぞ。いままでは敵の人間がどんな風体かを伝えるには髪型がどんな感じで服装があんな感じでなんてまだるっこしい説明をしなければならなかったが、これでいちいちイラストを手紙でやりとりせずともモールス信号が可能なら、画像情報が伝えられる。敵の人間が、どんな顔をしているかを遠く離れた相手に画像として認識させられるんだ。


 しかし、白黒キャラクターのマッドドクターと違って、たいていの人間はフルカラーだからなあ。それをどう白黒の0と1で表現するか難しいとことだな。それとも、赤のスライムと緑のスライムでも同じことができるようになれば、光の三原色の組み合わせでフルカラーの表現ができるようになるのかも……


 くそ、夏休みの宿題は工作よりも読書感想文でポイントを稼いでいたわたしが、どうしてこんなに技術的なことで頭を悩ませなければいけないんだ。そりゃあ、さっきの青い蛍光色の『Merry X'mas !』にはちょっぴりどきっとしたけれども……やはりわたしは自分で作るよりも、誰かに作ってもらったものをどうこうするほうが向いてるな。


 マッドドクターが作る人でわたしが利用するマオウ課長。うむ、人間を搾取するモンスター。まさにモンスターと人間の理想の関係だな。これからもこのような良いご関係をマッドドクターと保ち続けていきたいものだな。


 しかし、『X'mas』かあ。


「マッドドクターさん。あなた、神の存在がどうのこうの以前言ってたわよね。なかなか深いメッセージじゃない。マッドドクターさんにこんなセンチメンタルなところがあったなんてねえ」


「どういうことですか、マオウ課長さん?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る