第5話判別
やれやれ、この前のマッドドクターとの接待はとんでもないことになったな。まさかジュエルウエポン軍の新進気鋭の技術者が人間だったなんて……あのマッドドクターあの後で上司にわたしの告げ口なんかしてないよなあ。それがまわりまわって大魔王様に伝わったとしたら……考えただけで恐ろしい。
「あの、マオウ課長。少しお時間よろしいですか?」
「おお、スライムCか。なんだ。話があるなら言ってみろ」
「!!!」
「どうした、ポカンとして。わたしも暇じゃないんだ。早くせんか」
「いえ、よく僕がスライムCってわかりましたね。他のモンスターはおろか、自分たちですら区別がつかなくなるのに」
「そうだ、そのことでお前たちスライムに話があったんだ。今からお前たちの部屋に行くぞ、ついてこい、スライムC」
「あ、待ってください、マオウ課長」
くっくっく。今まではいきなりのことに不覚を取ったが、エリートであるこのわたしがいつまでも部下になめられたままではいかん。目にものを見せてやる。
「おい、邪魔するぞ」
「おお、スライムC、マオウ課長にこの前の食事のお礼をしたいって伝えたか……マオウ課長じゃないですか。どうしたんですか、こんなところに」
「用事があるからに決まってるだろう。ええと、お前がスライムAで、お前がスライムB、そしてお前がスライムDで、お前がスライムE、それでもってお前がスライムFで、お前がスライムG、最後のお前がスライムHだな。どうだ、あってるか?」
「「「「「「「「すごいです。マオウ課長。あってます」」」」」」」」
ふふふ、そうだろう。思い知ったか、スライムどもよ。こうと決めて勉強したときのエリートの実力を思い知ったか。
「マオウ課長。僕たちの見分けがつくようになったんですか? すごいです。こんなの初めてです」
「正確に言うと、見分けがつくのではない。お前らのステータスと名前の一致がわたしの頭の中で完了したと言うことだ」
「ステータス?」
「なんだ、知らんのか。ヒットポイントやちからにたいりょく、そしてすばやさやらなにやらがお前ら一人一人違うんだぞ。そして、モンスターのステータスを一瞬にして見抜くこのマオウ様の千里眼があれば、お前ら一人一人の認識などへのカッパだ」
「ほ、本当なんですか、マオウ課長? 僕たちにそんな違いがあったなんて」
「現にわたしがお前らの名前をぴたりと言い当てただろう。お前ら、自分で自分のことも把握しとらんのか。『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』と言うだろう」
「た、確かに……そうだったんだ。僕たちが気付かなかった僕たちのことにマオウ課長が気付くなんて」
「何を言ってるんだ。自分のヒットポイントがわからなかったら、命にかかわるんだぞ。それに力は敵に与えるダメージに、素早さは攻撃の順番にかかわるんだ。そんなことも知らんのか。たるんどるぞ」
「す、すいません、マオウ課長」
「まあいい。それで、用と言うのはだな、分裂した後のステータスも把握しておきたいから、お前ら今すぐ分裂してくれ。できるか?」
「わ、わかりました、ただいま」
ポンッ!
ええと、スライムA1のステータスがこうこうで……それにしても、こうして一人一人の区別がつくようになると、それぞれの個性も見えてくるな。スライムA1、A2は長男気質っぽいな。スライムリーダーってところかな。
スライムB1、B2は面倒見がよさそうだ。スライムダディーかな。
スライムC1、C2は世話焼きだからスライムマミー。スライムD1、D2はナルシストなんだな。スライムナルとしよう。
スライムE1、E2はスケベで、スライムエロ。スライムF1、F2は無口だからスライムロンリー。スライムG1、G2は無邪気でスライムイノセンス、スライムH1、H2は熱血ってところでスライムヒーローか。
「よし、覚えたぞ。お前らもう融合していいぞ」
「え、もういいんですか、マオウ課長。まだちょっとしか時間たってませんよ」
「なんだ、疑うのか。いいだろう、証明してやる。お前がスライムA1、お前がスライムA2、お前がスライムB1、お前がスライムB2、お前がスライムC1、お前がスライムC2、お前がスライムD1、お前がスライムD2、お前がスライムE1、お前がスライムE2、お前がスライムF1、お前がスライムF2、お前がスライムG1、お前がスライムG2、お前がスライムH1、お前がスライムH2だ。どうだ、間違いないだろう」
「「「「「「「「「「「「「「「「全問正解です! マオウ課長!」」」」」」」」」」」」」」」」
これだ。この歓声が第2話で聞きたかったんだ。この歓声こそエリートであるこのマオウ様にふさわしい。
「ああ、それから、融合を間違えるなとは言わんが、スライムDEと、スライムADが同時にはできないように気を付けるんだぞ」
「どうしてですか、マオウ課長?」
「スライムDE、ADでは縁起が悪いだろう」
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