Presence of heart

さとお

第1話 判定された者達

この世界は心の有無によって、人間の善悪、能力、価値を判定する世界。


子供達は勝ち組になるか負け組になるかを15歳という年齢で判定される。


勝ち組には自由な人生。

負け組には拘束された人生。



この物語は残酷な世界を変える為に戦う、双子の壮絶な戦いの歴史である。


とある小さな国のカマールという村に15歳になる双子がいた。

兄のハーティーと弟のハーレスは裕福でも無く、貧しくも無いごく普通の家庭に産まれ13歳から寮での義務教育を受けていた。


15歳の判定前日の夜、ハーティーはハーレスに質問した。


「明日から判定期間に入るけど、心の準備はもうできたのか?」


その質問にハーレスは

「まだ、出来てないかな」


弟の答えを聞きハーティーは就寝の準備にすら入らずに

「明日は判定なのに、こうも呑気でいられるとはたいしたもんだ」と関心していた。


ハーレスはさっきの質問を深く考えもせずに、就寝の準備に取り掛かっていた。


そして2人は就寝のベルと共に深い眠りについた。



判定日の朝、ベルの音と共に起床しハーティーとハーレスは心の有無を判定する為に役場まで歩いていた。

役場まであと少しの所まで来た時ハーティーはとてつもない不安に襲われ

「もし、心が無いと判定されれば俺はどうなるんだ?、、負け組になりハーレスとも離れるのか?、、怖い、、、行きたくない、、負け組になんかなりたくない」

一方、ハーレスは昨夜と変わらず呑気に

「今日のお昼ご飯はなに食べようかな?」


役場に着くと、そこには大きな機会と役人が2人いた。

役人から説明書を渡され、よく読んでおくようにと言われた。

そして遂に判定機の中にハーティーが呼ばれた。

ハーレスも流石にハーティーが呼ばれてからソワソワして、落ち着いては居られなかった。

次にハーレスが呼ばれた。

機会の中は暗闇で椅子がポツンと一脚置いてあり、役人から楽にして座っていてくださいと言われた。

ハーティーは「楽になんかできるものか」と思わずには居られなかった。

ハーレスも「緊張するなぁー」と思っていた。

そして機会が動き出し、、「ピッ、、ピッ、」と音をたててクルクルと2人の周りを3周程回って止まった。

ハーティーとハーレスはビクビクし、「早く終わってくれぇー」とおもった。

役人が中に入ってきて、ハーレスが呼ばれどこかに連れて行かれた。

ハーレスは「あれっ、、俺から?」と心の中でつぶやいた。

その頃、ハーティーは役人からも呼ばれずに待たされていた。


5分後、、、


ハーティーは役人に連れられ説明書を渡された所に帰ってきた。

そこにはハーレスの姿は無く、役人に家に帰っても良いと言われた。

ハーティーは役人に「ハーレスはどこに居るんですかっ?」と掠れた声で質問した。

すると役人は落ち着い声で「 ハーレスは心が無いと判断された」


ハーティーは頭が真っ白になり、気が着くと寮に帰って来ていた。

「ハーレスに心が無い、、」役人の一言が頭の中で反響していた。


一方、ハーレスは役人に呼ばれてから手錠をかけられバスに載せられていた。

周りを見ると同い歳の子が2人、同じ様に手錠をされたまま座らされていた。

ハーレスは「俺はもしかして心が無いと判定されたんだろうか」と考えていた。


そしてバスの中に役人が入ってきて、バスが発進した。

そこからはバスに揺られること2時間、やっとバスが止まり役人が説明を始めた。

「えっと、、お前達3名は心が無いと判定された!!よってお前達をこれより隔離施設で拘束し労働について貰う」

ハーレスは役人に問いかけた。

「いつまでですか?」

役人は「死ぬまでだ」

ハーレスと2名の子供達は一斉に「なぜだ」と叫んだ。

役人からはとんでもない答えが帰ってきた。

「お前達は心が無い者と判定されたのだから当然だ!!」

そしてこう続けて役人は暴言を吐いた。

「心の無い者は人間以下なんだよ、心の有る者は偉いんだ!」

ハーレス達は項垂れて、何も言い返す事が出来なかった。


こうしてハーティーは心が有る者、ハーレスは心が無い者としてバラバラの判定を下された。

寮でハーティーはハーレスを心が無い者とはとても思えなかった。

隔離施設でハーレスも「俺は心が無いなんて嘘だ」と思っていた。

そして2人は「なぜ、15歳で心が有るか無いかなんて分かるんだ?」「なぜ心が能力や善悪に関係しているんだ?」と思っていた。

ハーティーとハーレスは同じ思いを胸に深い眠りについた。


隔離施設での生活はとてもまともな生活とは程遠い。


5時に起床。

6時に朝食のパンとスープが配られる。

7時から労働が始まる。「男は力仕事」「女は清掃」

12時に昼食のパンとスープが配られる。

1時からまた労働が始まる。

8時に労働が終了する。

9時に月曜日と木曜日だけ水浴びがある。

10時に完全就寝。

これが毎日続く。

もちろん給料などはなく、娯楽もない。


起床時間より前に起きたハーレスは「 隔離施設にきてもう1週間かぁ」と心の中でつぶやいた。

毎日、毎日この日課に従い労働させられていた。

そんな中にもハーレスは1つだけ楽しみができたのだった。

それはある1人の少女との会話だった。

少女の名はエリ、彼女は1年前にこの隔離施設に連れてこられたそうだ。


エリの話によると「隔離施設は2つにわけられてあり、ハーレスとエリのいる隔離施設は15歳から18歳まで」そして「もう1つは18歳から100歳までの隔離施設までだ」と言っていたなと考えながら労働の準備をし部屋を出た。

ハーレスはエリを見かけると

「おはようエリ」とあいさつをした。

エリも

「おはようハーレス」とあいさつを返した。

「また今日も1日労働かぁ」

「そうね」

「今日も頑張ろう!」

「うん!、怪我しないでね」


そしてそんな会話を交わしていたハーレスとエリはお互いに惹かれ合っていった。


一方ハーティーは判定の次の日から色んな大人に心が無いと判定された者がどこに行くのか尋ね廻っていた。


そして1週間たった頃、ようやく手掛かりを見つけることが出来たのだった。


それはある老人から聞いた話だった。

「わしは隔離施設を建てる仕事をしていた」


「場所は分かりますか?」


「あぁ、、ここから車で2時間くらい走ったロード地区に有るよ」


「歩くとどれくらいかかるものかな」


「そんなの分からんが、5時間もかからんじゃろ」


そこからハーティーは直ぐに用意をし、隔離施設のあるロード地区を目指し歩いた。


5時間半後、ハーティーはロード地区に着いた。


ロード地区にはとてつもなく大きな建物が2つしか無く、他には建物すらない寂しい所だった。


ハーティーは建物の門の前で「すいません」と叫んだ。

建物の中から役人が2人出てきた。

役人は「なんだ!」とぶっきらぼうに答えた。


「ここは心が無い人達の隔離施設ですか?」


役人はその質問に答えることは無く、建物に戻っていった。


ハーティーはハーレスがここに居るか確信を得ることができなかったが、心が無い人達が居るということは確信できた。


























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