第39話
今日、十二月十日。
この日は、重要な日。
最愛の人が生まれた日。
誕生日だ。
ジリリリリンとけたたましい音が頭の左から聞こえて来る。
「ぁー……」
眠い目を擦り、枕元に置いてあるスマホを見てみる。朝の六時を画面に表示していた。
鳴りっぱなしのアラームを止めて、そのまま軽く伸びをする。
いつもならここでさっさと起きるのだが、なぜだか起きれない。
いつもより布団があったかくて、安心する匂いがした。そしてこの匂いには、覚えがある。
「ん……?」
寝返りうって右の方を見てみると、そこには愛菜之がいた。
「おはよう、晴我くん」
「……おはよう。愛菜之」
寝起きのまったりした口で挨拶を返す。あまりのことに頭が追いつかない。今見ているのは夢かなにかだろうか。
試しに、愛菜之の頭を撫でてみた。綺麗な艶のある髪の毛は、カーテンの隙間から漏れている朝日に照らされて美しかった。
くすぐったそうに、幸せそうに俺に撫でられていることを喜んでいる表情や、手に触れる髪の毛にも確かな実感がある。どうやら夢じゃないらしい。
聞きたいことは山ほどあるが、とりあえず今一番気になっていることを聞いてみることにした。
「愛菜之」
「うん、晴我くん」
「なんで裸なんだ?」
「お待たせ、晴我くん」
「あ、ああ、ありがとう……」
ベッドから出ると愛菜之には服を着てもらい、俺は顔を洗った。
なんで制服じゃないんだろうか。上はタートルネック、下はブラウンのゆったりとしたスカート。
胸の形がよくわかる俺好みの服装。……もしかして、俺の好みに合わせてるのか。
そのあと、愛菜之に座って待っててと言われ、言われた通り待っていた。少ししてから、テーブルに湯気を立てているフレンチトーストとミルクが置かれた。
一つに気になるのは、フォークが愛菜之のほうに置かれていることだ。
「……いただきます」
とりあえず、そう言って手を合わせる。
「どうぞ召し上がれ。はい、あーん」
やっぱりそういうことだった。自分で食べることはできないみたいだ。
そのまま口を開け、一口サイズに分けられてフォークに刺さっているフレンチトーストを食べる。
じゅんわりと牛乳や卵の風味が口に広がる。カフェで食べるような美味しいフレンチトーストだった。
「……うん、美味いよ」
「ほんと? 良かった」
にっこり笑って、またフレンチトーストを俺の口元に持ってくる。
それをまた食べての繰り返し。時折、ミルクを飲んで。
まるで映画の一場面になったような気分だ。
「……愛菜之、なんで裸になってたんだ? ていうか、どうやって入ったんだ?」
さっきから気になっていたことをようやく聞いてみる。
裸になっていたことも気になるが、どうやって家に入ってきたかも知りたかった。
「どうやって入ってきたかは、合鍵があるから」
そう言ってどこから出したか、左手に鍵を持ち、俺に見せてきた。
確かに、形も俺の持っている鍵に似ていた。
「合鍵、どうやって作ったんだ?」
「ひみつ」
そう言って人差し指を自分の口に当てる。可愛いから方法なんてどうでもいいと思えてきた。我ながらちょろい。
「あ、鍵を変えちゃダメだよ? 合鍵作るのも結構大変だから」
そう言って念を押すように、ね? と言って首を傾げた。
「鍵を変えるつもりはないよ。……ていうか、言ってくれれば渡したぞ?」
俺と母さんしか住んでいないし、母さんは仕事場に泊まることが多くてあまり家に帰ってこないから合鍵の一つや二つ、言ってくれれば渡していた。
「ほんと? ……嬉しい。私のこと、信頼してくれてるんだ」
そう言って嬉しそうに笑い、フレンチトーストをまた口元に運んできた。
「それと裸なのはね、寒そうにしてたから人肌で温めたほうがいいかなって思って。あと私の裸、晴我くんは好きでしょ? それとあと……それが一番、晴我くんに尽くしてるって感じがしたからだよ」
「待って、裸が好きってとこ訂正したいんだけど」
俺が性欲旺盛彼女の裸体に興味深々のやばいやつみたいな認識になってるじゃないか。
「私の裸、嫌い?」
「なわけないだろ」
嫌いなわけがない。好きな女の子の裸が嫌いな男がこの世にいるか? いないな。
「じゃあ、訂正しなくていいね」
「いや、その……はい……」
「それに晴我くん、私の裸見て喜んでたもん」
俺が諦めて認めた直後に追い討ちをかける。いや、追い討ちというのは語弊があるか。喜んでなんていないからな。
寝起きの時、裸見れて嬉しくなったりなんてしてないんだからね!
「よよよ喜んでなんていませんよ?」
「動揺した時に敬語になる癖、治した方がいいと思うけど、そんなところも可愛くて好き。それに……」
「……それに?」
動揺した時の癖を指摘されてズタズタの俺にまだ追い討ちをかけようというのか。
そう身構えていると愛菜之は目線を下げて、顔を赤くしながらボソボソとこう言った。
「私の裸を見て、おっきくなってたから……」
その言葉に思わず頭を抱えそうになるがまだ大丈夫だ。
そう、朝は男の男が否応なしに元気になってしまう。あれは生理現象。俺は愛菜之の裸を見て喜んでいたという論を否定できる。
「いや、あれは朝、男なら必ずそうなるんだよ」
「そ、そうなの?」
頬に赤みを残しながらそう聞いてくる。やっぱり知らなかったみたいだ。このままいけば……。
「そうなんだよ。だから俺は喜んでなんて……」
「私の裸見ても、嬉しくないの……?」
「嬉しい」
こう言うしかないじゃん嘘つけるわけないじゃん。
彼女の裸が嬉しくない彼氏がいるか? いないな。
「じゃあ、晴我くんは私の裸を見て喜ぶんだね。えへへ、嬉しい……」
「うん、はい、そうです、はい」
思考停止の俺をよそにえへえへ嬉しそうに体をくねらせている。ああ可愛いなぁ……。
「……で、尽くすってのは?」
思考回路が復活したところでそう聞くとうん、と頷いて、愛菜之が俺の口元をティッシュで拭った。これじゃあ尽くすっていうよりは介護だ。
「今日は特別な日だから、晴我くんにいつも以上に尽くしたいんだ」
「……特別な、日」
……どうしよう、心当たりがない。
なにかの記念日か? 付き合って何ヶ月記念日とかそういうやつか?
わからない、わからないぞ。どうすれば……。
「……晴我くん?」
俺が考え込んでいると、愛菜之が怪訝そうに声をかけてきた。
思わずビクッ、と肩をはねさせる。冬の朝だっていうのに、嫌な汗が背中にじわりと広がっていくのを感じた。
「もしかして、今日がなんの日か忘れたの?」
俺の彼女は察しが良すぎる。そういうところも尊敬するところだし好きだが、今はちょっと困るんだよね……。
俺が何も言えずにいると、肯定と受け取ったのか愛菜之は頬を膨らましてぷりぷりと怒りだした。
「今日は大切な日なんだよ? 晴我くんが分からなかったらダメなんだよ?」
「はい、すいません……」
「もう。……今日はね、晴我くんの誕生日だよ」
───誕生日。
そういえば、そうだった。今日は俺の誕生日か。
「あ、ああ……誕生日か」
言われてやっと思い出すほど、自分の誕生日というものに関心がなかった。
言っておくが、家族が祝ってくれない、なんてことはない。母さんは仕事人間だったから家にいなくて、祝おうにも祝えず、お金だけテーブルに置かれている、ということが多々あった。父さんは単身赴任だから家におらず、メッセージアプリで一言おめでとうと送ってくるぐらいだった。元々口数が少ない人だったし、俺も一言お祝いの言葉を貰えるだけでも嬉しい。
お姉ちゃんは……後日、大量になにかよくわからないものを誕生日プレゼントと言って送りつけてくる。ただ海外からの配送だからか、配達日がまちまちで、誕生日から数日経っていることが多かった。なのであまり誕生日プレゼント、という風に感じれなかった。というか、誕生日だろうがなんだろうが関係なく物を送りつけてくる。やめてほしい。
「お誕生日、おめでとう」
今までの誕生日を思い出していた俺の隣に、いつの間にかいた愛菜之が俺を抱きしめてそう言った。
「生まれてきてくれてありがとう、晴我くん。愛してるよ」
愛の言葉を紡いで、頭を優しく撫でてくれた。心に、じわりと暖かいものが広がっていく。生まれてきてよかったと思わせてくれるほどに暖かい気持ちになれた。
「愛してる、好き、好き。好きで好きでたまらない」
「うん、嬉しいよ。ありがとう」
「好き好き好き好き好き」
……あれ?
なんか雲行き怪しくなっていってる気がするが。
「生まれてきてくれてありがとう生きててくれてありがとう息をしていてくれてありがとう私の隣にいてくれてありがとう私を愛してくれてありがとう」
「ま、愛菜之?」
「愛してる愛してる好き好き好き好き」
言葉を紡げば紡ぐほどに抱きしめる力は強くなっていく。
頭が柔らかな双丘の谷間に沈んで、愛菜之の甘い匂いに包まれて脳が痺れそうだ。
「……晴我くん?」
思わず愛菜之の腕を掴んで、離れていた。
朝から理性を飛ばされたんじゃたまったもんじゃない。
「よくわかったよ、愛菜之。どれぐらい俺のことを好きでいてくれてるかが」
「……なら、なんで」
なんで俺が愛菜之から離れたか、それが聞きたいのだろう。
「嫌なわけじゃない。むしろずっと抱きしめていて欲しい。でもな」
そう言って、テーブルに置いてあったスマホを手に取り、電源を入れて愛菜之に見せた。
「時間がない」
画面には白い数字で、しっかりと七時五十分と表示されていた。
走ってギリギリ間に合うぐらいの時間だった。
「大丈夫、今日は学校お休みだよ」
「……んん?」
俺の聞き間違いかな? 今日は学校お休み……うーん?
それが事実ならおかしい。今日は祝日ってわけでも、学校のなにかしらの記念日ってわけでもない。
俺が首を傾げていると愛菜之が自分のスマホのロックを解除し、なにかを検索しだした。ホーム画面が俺の寝顔の写真だったのには、後で話し合うとして。
少しして愛菜之はほら、とスマホを見せてきた。
「学校のホームページに、諸事情により本日はお休みですって書かれてるよ」
「……マジか」
いや、それならメールでお知らせが来るはずだが……。
「学校の方は相当慌ててるみたいで、メールを送るのを忘れてたのかも。今ぐらいにくるんじゃないかな」
そう愛菜之が言った瞬間、ピコンと高い音が俺のスマホから鳴った。
「……本日は急遽休校といたします……」
あまりにも信じられなくて思わず口に出して読んでしまった。いや、本当になんで今日が休みになってるんだ?
「今日はお休みだから、いーっぱいイチャイチャできるね。晴我くん」
屈託のない笑みで俺にそう言い、抱きついてくる。暖房いらずだな、と呑気に考えているのは無意識に現実逃避を図っていたのかもしれない。
「……愛菜之、なんかやったの?」
学校は慌てている、なんてなんで知っているのか。それは愛菜之がなにかをしたからではないか。
恐る恐る聞いてみると可愛らしく小首を傾げ、首を横にふるふると振った。
「なにもしてないよ?」
「………うん、そうかぁ……」
諦めながらため息を吐く。うちの彼女さんは、どうにも俺が関係するととんでもないことをしでかすらしい。
その知った口振りからは、愛菜之がなんで休校になったかを知っている可能性はかなり高い。
メッセージアプリを開き、クラスのグループチャットを確認してみるがみんながみんな、
「休校ひゃっほー」
「よくわかんないけどラッキー!あそぼぜ!」
「誰か宿題の答え送ってくんない?飲み物奢るから」
と、休校を喜んでいた。一部関係ないが。
愛菜之の他に休校理由を知っていそうなやつはいなさそうだ。
「本当に……なにをしたんだ」
「ちょっとテストの答案を隠し……なくなっただけ、なのかも。でもそれが万が一でも生徒に知れたら、学校は困るだろうね。とっても大切な書類を無くすなんて管理責任が問われちゃうもん。だから学校は休みになったんだよ。あ、なのかも」
「そういうことね……」
どうやら、テストの答案をどこかに隠したらしい。
というか、最後の方もう説明口調じゃん……。ボロ出てるよ……。
ていうか、制服じゃなくて私服だったのは今日が休みなのを知っていたからか。道理でな……。
「隠したのが愛菜之ってバレたらどうするんだよ?」
「大丈夫、バレないようにちょっと工夫したから。それに、いつも学校が終わるころの時間帯で見つかるようにしてあるよ」
もうしらばっくれるのもやめている。……それなら、いいのかな? もう頭がいろんな感情でしっちゃかめっちゃかだ。
「じゃあ、今日はお誕生日お祝いのために頑張らせてもらうね」
「ああ、はい……」
許容量をオーバーした感情に押し潰されそうになりながら上の空な返事をした。
そしてその後、上の空な返事さえしなければ、なんて悔やんでしまうハメになる。
「裸で近づくの禁止ね」
「そんな!?」
そんな!?って。そんなに驚くことかぁ……?
ていうか、ほんとに裸だけは勘弁してほしい。心臓と理性に悪い。
「晴我くんは私の裸を見て喜ぶんでしょ!? 私ずっと裸でいてもいいぐらいなんだよ!? 裸の私を隣に並べて外へお出かけしてもいいよ!?」
「ダメでしょ!? なに考えてんの!?」
この彼女さん俺が関係すると思考まで飛躍するの? 普通に怖いよ?
でもそこも魅力と感じてしまっている。恋は病とはよく言ったもんだ。感心しちゃうね。
「それに、俺は愛菜之の裸を他の人に見られたくないんだよ」
顔を逸らしてそう言う。顔に血があつまっていくのがわかる。あっついな全く。夏ですか今は。
「そ、それもそうだね。私も晴我くんにだけ裸を見せたいし、でも晴我くんには私の裸見てもらいたいし……」
「それもおかしいね? 自分の体大切にして?」
「え!? 私の体は晴我くんの体だよ!? このおっきいおっぱいだって晴我くんがおっきいおっぱいが好きだからって大きくするために色んなこと試して大きくしたし、髪だって晴我くんがロングヘアーが好きだからって伸ばして手入れもしてるんだよ!? 全部全部晴我くんの理想の女の子になりたかったから!」
「マジかよ好きだよ!」
知らなかったそんな努力。俺の理想の女の子になりたいからってそこまでしてたのか……。
「そんなに俺のためにいろんなことしてくれてたんだな!! ありがとう大好きだよほんと!! でも裸は禁止!!」
「なんでっ!?」
大声で言い合い、俺が裸禁止令を発令しようとすると愛菜之が怒り、理由を聞いてきた。わかりきったことを聞くかね普通!
「理性飛ぶから! 襲う自信あるの俺!」
「襲ってよ! 襲ってもらうための裸だよ!?」
「襲ってもらうためってなに!?」
襲ってもらうために裸で迫るのは確かに効果的だが愛菜之と一緒にいる時にそういうことばかりっていうのは……。
俺としてはデートしたり、家で二人でゴロゴロしてたりのんびりしていたいんだ……。
そのあと、しばらく言い合いは続いた。
「はぁ、はぁ……」
「ハァ、ハァ……」
二人して息を切らしている。せっかくの休日だっていうのになにをやっているんだろうか。
仲の良い彼女と、変なことで言い合い……。
「ハァ……は、はははは」
考えてみたら、言い合っている内容がひどすぎる。なんだか変な笑いのツボに入ってしまい、思わず笑ってしまった。
「な、なんで笑って……ふ、ふふ……」
愛菜之も俺に釣られたのか笑ってしまっている。二人で顔を見合わせ、しばらく笑っていた。
「はぁ……いやさ、言い合いとか普段しないしさ、そもそもなんで言い合いしてるのか考えたら……笑っちゃって」
「ふふ……言い合いなんて珍しいね、私たち」
言い合いできるぐらいには、仲が深まっているのかもしれない。そう考えると、この言い合いが嬉しくもあった。
「まぁせっかくの休みだし……出かけるか?」
裸禁止令はさておき。
時刻は九時半頃。グループチャットのボルテージも下がり、スマホの通知音もほんの少ししか鳴らなくなった。
「うん。でも行くなら、晴我くんと一緒にね」
「それは勿論なんだが、あのさ……」
「うん、なぁに?」
俺の口に蜜柑を放り込みながら、優しい笑みで返事をする。
尽くすとは言っても……膝枕をしながら蜜柑を食べさせてくるとは思わなかった。
幸せだし嬉しいことこの上ないが、今日一日ずっとこんな感じで尽くしてくるのかと思うと、少し胃が痛む。
「ああ、いや……美味しいよ」
やめてくれとも言えない俺は臆病ものだなぁとしみじみ感じる。情けないったらありゃしない。
言い訳させてもらえるなら、言いたい。膝枕、彼女が剥いてくれた蜜柑、そしてあーん。
この三連コンボをやめてと言えるだろうか。
無理だろうな、うん。断れるわけがない。俺が断れないのも普通のことだ。
「良かった。晴我くん、すっぱい蜜柑より甘い蜜柑のほうが好きでしょ? 甘いの選んだんだ」
そんなところまで掌握されているとは思わなかった。ほんと、俺のことを骨の髄まで知り尽くしていそうで怖い。でもそこも魅力……以下略。
「うん……なぁ愛菜之、一回起き上がらせてくれない?」
「ダメ」
ダメですかぁ……。本当にそろそろ起き上がらないと起きたくなくなるんだけどなぁ。
「起きれなくなっちゃうんだけど」
「起きれなくなっちゃってもいいんだよ? 晴我くんはお家でごろごろするの好きでしょ?」
思考が読まれてるのかと疑う。いや、俺がさっきそうしたいなぁと思っていたことを言い当てるとは……。
だが、間違いが少しだけある。世の中には完璧など存在しないのだよ。
「間違いだな」
「え?」
「俺は愛菜之と家でゴロゴロするのが好きだ」
「…………だいっすきぃ……」
そう言って耐えきれないように蜜柑を放って、嬉しそうに俺の頭をぎゅむぅぅぅ、っと抱きしめる。
「んむっ、んむんむ」
胸が、胸が顔を覆ってる! 息ができない!
……ん!? この柔らかい感触は……!?
「あっ。ご、ごめんなさい」
俺がもがもがしていると、息ができないことに気づいたのか慌てて離れる。酸素がありがたい。
「いや、大丈夫……じゃない! 愛菜之! 下着は!?」
そう、胸を押しつけられた時に感じた感触があまりにも柔らかくて幸せすぎた。
「着けてないよ? 着けてないほうが晴斗くんは嬉しいでしょ?」
「嬉しい……けど!」
否定できない自分が悲しい。だって好きなんだもん。
「……でも、着けたほうがよかったなぁ」
「え? なんで?」
きょとんとしながら聞く。いや、まぁ下着はつけるべきですけどね?
愛菜之は、少し恥ずかしそうに俺から視線を逸らして指をもじもじと絡ませた。
「その、擦れて……体が熱くなってきちゃった」
「……え? 擦れ、え?」
どこが擦れているとかは聞かないけど、体が熱くなるって……嫌な予感がするんだが……。
「だから、その……シよ?」
「あの、一応聞くんですけど、拒否権は?」
「ない、かなぁ」
ですよねー……。
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