第8話 七日目
【七日目】
『――――以上。これが私の記憶回路に保存された経緯です』
今、私は絶賛取り調べを受けている。本来ならばメインチップを解析するだけで詳細情報を細部まで見れるのだが、包み隠さず話すと言った主張を、人は信じてくれた。
「なるほどねぇ。そのー。エリック? ヴァルトロ? どっちでもいいや。何せ我々もロボットさんに対する取り調べは初めてでね? 君が嘘を付いているとは思いたくも無いし、現に細かな話ができるのは君だけだ。これからも協力してほしいね」
小太りの男性が、皮肉っぽく鼻を鳴らし部屋を後にすると、扉の向こう側で会話が繰り広げられていた。私の高感度マイクの収音を馬鹿にしてもらっては困る。
「バカバカしい。俺にお人形さんとお話する趣味はない。後を頼んだ」
すると、直ぐに入室してきたのは、先程より一回りも歳が若そうな青年男性だった。
「あ、ああ、こんにちはエリックさん」
『先程の話、聞こえてましたよ』
「お見苦しい事を聞かせてしまいましたね。どうも歳を取った人達は頭が固くていけません」
『それは、ごもっともで、とても面白い話です』
私に笑い声を出すことは出来ないが、微笑むことは出来る。
「それで、お話の続きを聞かせて頂きたいのですが……。如何せん、法律上機械を保護する法も、逮捕する法も、はたまた裁く法も無いので、何を話せと言われても困るのですが政府の意向で、一時的に保管せよとの事です」
『なるほど。だったら、良くも悪くも、ぜひロボットに適応できる法律という物を作っていただきたいですね』
青年は困ったように笑うと、私に尋ねた。
「そういえば、こういう時はお茶なんかをお出しするんですけど、やっぱりロボットはロボットらしくオイルとかなんですかね?」
彼の表情から読み解くに、これは決して皮肉では無く、思いやり何だと理解することが出来た。今、私は人から思いやりを向けられているのだ。
ならば、私も思いやりを持って接するべきだろう。
『では、珈琲を頂けますか?』
「は?」
◇
「お待たせしました」
『ありがとうございます』
初めて飲む珈琲は体中に電撃を走らせ、染み渡らせていった。
それはとても、刺激的な味だった。
珈琲と恋とロボットと、 ぼさつやま りばお @rivao
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