事情聴取〜王子、メイド編①〜

 王子の部屋でザランをユミナが慰めていた。ショックが大きいせいか頭を抱えるくらい、なかなか立ち直れなかった。

「ザラン王子……」

「ごめん。やっぱり辛い」

「……」

 ベットの上に2人は座っており、まるで親しい仲のような距離感を取っている。

 ザランにとっては彼女は幼なじみでもあり、親友と言うくらい心を開いていた。

「なぁ……。オレは王様としての器あるかな」

「あの時の……まだ不安なのですか?」

 ザランは本音を漏らした。王としての器が持ててるか不安を感じていた。あまりにも唐突なできごとに中々飲み込むにはキツかった。

「なぁローナは伝えたのか……? お父さんが死んだことを」

「いえ。まだ十四歳である姫様にはまだ伝えてないはずです……。ですが伝えるべきだと私は思います……」

「そうか……」

 ローナは今回のパーティーには参加しなかった。それはあの出来事があったため、部屋に閉じこもって護衛を付けさせていた。

 二人はこのことを伝えることに悩んでおり、どうするべきか迷っていた。

「おいおい! ガキ! 入るんじゃねぇ!」

「うるせぇな! 頑固ジジィ! とりあえず通してくれ!」

 部屋の外で騒がしい声が廊下から響いていた。

「なんだろう? 誰が来たんだ」

「私が応対します」

 ユミナは廊下で騒いでる様子を伺うためにドアをゆっくりと開く。するとアズサと護衛の分隊長のガルダンと揉めていた。服装はチェーンメイルで布製の黒ズボン身につけていて、自然に馴染むような緑色のマントを羽織っていた。

 突破を試みようとするアズサ、それを守るガルダンは取っ組み合いをしていた。

「アズサさん! どうされたのですか?」

「この人をどうにかしてくれよ! んぎぃぃぃ! 事情聴取したいのによ! うがぁぁぁあ!」

 アズサは頬引っ張られるが一歩も引かない。

「このアホが王子の元に行こうとしてるんだよ。傷ついてるのに追い討ちかけるの信じられねぇぜ!」

 二人は息を切らしたあと、にらめっこしつつ、お互いに意地を張っていた。殴るまでは行かないが相撲のように押し出し合いをしていた。

「お、王子。客を入れますか?」

「……? まぁとりあえず通してくれ。話があるなら」

「分かりました。ガルダンさん。通して大丈夫と許可を頂いたのでやめてください!」

 二人は一度取っ組みから収まり、ガルダンは手を振り払っていた。

『四〇歳位のジジィなのに力あるな……。クソ。今度勝負する機会あったらぶっ飛ばしてやる』

 地味にライバル心を燃やしたアズサは服を整えたあと、そのまま部屋に入る。

「おいガキ。変なことするなよ」

「そんなことはしないよ……」

 すれ違いざまに念を押されるように耳に声をかけられる。あまり好きになれない人だったが忠実な人柄は見えていた。

「すいません。失礼なところを聞かせてしまいました」

 一度ザランに向けて謝った。それなりの礼節を持つのは探偵の基本でもある。

「いいや。大丈夫だよ……。むしろ恥ずかしいところを見せてしまったから。こっちが申し訳ない」

「私も謝ります。王子がこのようなことを……」

「おいユミナ……!」

 連帯責任を感じたか彼女も謝ってきた。それなりに信頼関係があることが伺えていた。

 ただアズサにとっては後味を悪く感じてた。

「大丈夫ですよ……。とりあえず本題にはいるけど、ちょうど二人に聞きたいことがある」

「わ、私もですか?」

「うん」

 二人は少しキョトンとしていたが、事件の関係性が上手く飲み込めなかった。むしろ被害者の立場のため聞かれるとは思っていなかった。

「まず王子様から聞きますが、今回の殺人が起きる前から、脅迫や怪しいことはありませんでしたか?」

「あ、怪しいことか? んー脅迫状が送られることは時々あったが、怪しい人は見た事ないな……」

 怪しい人物が居ないか……

 なかなか難しいところだ。

「あと悪いけど探偵さんよ。ザランと呼んでくれ。同じ歳に見えるからタメ口で大丈夫だ」

「そうですか……。オレは構いませんが、せめて探偵さんでなく、アズサと呼んでくれ」

「あぁ。よろしくアズサ」

 改めて握手をする。同じ歳と言うけど多分歳は少し上くらいだろう。ただ顔のことを思い出してしまうが、触れない方が良さそうだ。

「とりあえず続きだが、パーティーが始まる前はどんなことしてた?」

「え、えーと。オレは正装を着替えるために召使いと着替えてたな。その後は……」

「なるほど……あのまま会場か」

 この話を聞くと王子は白だ。

 次は……

「ユミナは?」

「私はパーティーが始まる前は料理の準備してました。その後は接待のために飲み物を運んだりしてました」

 あの魔法が手動形式だった場合はアズサの隣にいたのでアリバイありか。なんでか分からないが安心をしていた。

「あと。もしナイフで刺すなら、どこに刺す?」

「えーと……私は胸ですね」

「オレも胸だが?」

 ザランが心臓の方に手を当てていた。

「そうか……。ありがとう」

 ズボンのポケットから手帳を取り出して。聞けた内容をメモでまとめた。

「あ、そう言えば……」

 ザランが思いつくようにフッとした感じ口を開いてきた。

「ん? なんだい?」

「人柱伝説は聞いたことあるか?」

「少しくらいは……? でも事件との関係は?」

「少しはあるかもしれない……。実は……」

 人柱と聞くとあまり良い印象はないが、知ってはいけないとアズサの勘ではそう思っていた……

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異世界探偵アズサ ~異世界事件簿〜 四季巡 @shikisyuichi

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