第45話 ギルドの牢獄

 ギルドの応接室、レインの元へ戻ってきた。


「戻ったか」

「待たせたな。朗報だ。イフニスが復活した」


「マジかよ!?」

「さっそく見せたい気はやまやまだが、今の状態で依頼主の前にお届けできれば、感動が二割増しになるかもしれない」


「なんだそりゃ。なにか企んでいるようだが、生き返ったのは確かだな?」

「それは間違いない」


「わかった。この件も直近では今日から明後日の間で、常識的な時間ならいつでも大丈夫だと聞いている」

「会わせるだけなら、すぐ終わりそうだから、先にエレの町に行って、それから国の施設に行くか」


「相変わらずの詰め込みぶりだな」

「転移を使えば、すぐ終わるさ」


「そうかもしれないけど」

「本当は見せたい素材があったが、急いでないからまた次回にさせてもらうよ」


「お気遣いどうも。早く終われば見てやるよ」

「それはありがたい」


「では、ギルド管轄の牢獄へ案内しよう」

「よろしく」


「とりあえずレインハウスまで転移してくれ」

「了解」


 作業場のレインハウスの中に転移した。




「ここの裏口から行くと、近いし誰にも会わないで済む」

「なるほど」


 なんとなく受付のアリスを一目見てみたい気もした。

 朝も彼女の家で会っていたというのに。

 家でいくらでも聞ける曲が、外の店でかかっていたらテンションが上がるやつに近いか。


「あそこだ」


 レインハウスを出て、さらに作業場の裏口から出て少し進むと、マンションのような建物があった。


「あれが?」

「ここは街の外れに位置してはいるが、おっかない雰囲気にするのもどうか、ということで外見は普通にしてある」


 彼は入口の弱そうな兵士と目を合わせ、軽く会釈してから、IDカードを認証装置らしきものにかざした。

 扉が開いたので中へ入った。


「厳重だな」


「くれぐれも俺から離れるなよ、と本当は言いたいところだが。お前に限っては、はぐれたら好きなところに転移すればいいだけのことだな」

「そうだな」


 エルフの里のように収容率は低く、大して危険そうなやつはいないように見えた。

 国が管轄しているほうは知らないが、ここだけ見ればやはり平和だと言えるだろう。


『そこの里の名前ってなんだ? 気になったんで教えてくれないか』


『プキル』

『ありがとう、それじゃあまた』


 同盟を結んだ仲なので、場所の名前ぐらい覚えておこうと急に思い立って、フィンに聞いてみた。

 的確に一言だけ返ってきた。


「この国はそれほど規模が大きくないから、ギルド管轄の牢獄と言えば、本部のここだけにしかない」

「国が管理している牢獄は各地にたくさんあるのか?」


「それも同じく王都に一つしかない」

「収容数に困っていないということか」


「まあ、それもあるだろうな。さて、ここがあいつをぶち込む独房だ」


 そうこうしていると着いたらしい。

 牢屋の中に入った。


「ここでいいんだな」

「この牢屋の中では、あのレインハウスのように魔法が抑制される。安心してくれ」


 レインにもう一度確かめてから、ジグを出現させた。

 間違ってもいくらでもやり直せるが念のため。


「……ん?」


 転移に多少慣れてきたのか、異変を感じているが動揺はしていないようだ。

 それともあの尋問が堪えているのか、暴れる気配もない。


「ここが今日からお前の寝床だ。そんなやつにもちゃんと食事が付いてくる贅沢ぜいたくな宿だ、感謝しな」


 レインは相変わらずだな。


「いよいよ本格的な牢屋か」


かせは無くて大丈夫なのか?」


 ジグを無視してレインに聞いた。


「当然するさ。普通じゃない搬送手順だったから仕方ないだろう」

「たしかに」


「看守に任せてもいいが、今回は俺が拘束する。……暴れたら殺すぞ」


 レインは牢屋の中にある手錠と足枷あしかせをジグに装着していく。

 それが終わると、俺とレインは牢屋の外に出て、鍵を閉めた。


「俺はいつまでここにいるんだ?」

「さあな。俺は他にもやることがいっぱいあって忙しいんだ。また暇になったら相手してやるぜ」

「そうかよ」


 ジグはそれ以上レインに尋ねることはなかった。


「歩いて戻るぞ」

「わかった」


 牢屋の中から俺を無言で見つめる彼を、気に留めることなく歩き出した。

 彼にとっては、さっきまで会話してた続きの流れだが、俺やレインにとっては、随分久しぶりな感じなのだ。

 こっちとしては完全に終わった話で接しているので温度差があるのは仕方ない。




 レインハウスまで戻ってきた。


「さてと、次はエレの町に行くんだったな」

「その手前まで行く」


「よろしく」


 エレの町の手前に転移した。

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