第27話 トカゲのしっぽ
「な~んちゃって」
ネクロマンサーの両手首と両足首が再生していく。
ゆっくり立ち上がり首をかしげている。
試しにもう一度、
「うぐ!? イテテ……これ、何回させられるのかな」
やはり切断した部分を修復させた。
痛がっているのは本当なのか演出なのか、どっちなのだろうか。
「ぐああ!」
できる男ジグが好機と見たのか、出口に向かって走ったが、まだ障壁らしきものが残っていたようだ。
あっちに行っても行き止まりなのに、どうするつもりだったんだろうか。
「寂しいじゃないか、おいて行かないでくれよ。これならどうかな?」
ネクロマンサーの前方に、三体の……どうやら人間のアンデッドが召喚されたようだ。
じっとしているが、盾となるように配置したということだろうか?
人間がいても不思議ではないが、俺にとってはうれしくもあり悲しくもある事態が発生した。
エレの町の件で捜索対象となっていた男がその中にいたのだ。
これまで一体どこにいたのだろうか。
怪しまれてもいいので、現れた彼を闇へ転送した。
「さっきから全てがおかしい」
「それは僕のセリフだよ。一体
「俺は知らない」
「これまで味わったことない鋭い切り込みだったよ。切られた感触すら無い程の。まるで十匹のアンデッド達が最初に切り裂かれたときのようなね」
「じゃあ、やったのはそいつじゃないか」
「今僕が呼び出したアンデッドのうちの一体もためらいなく消すなんて、人間とは思えないよね」
場に残っている召喚された二体のアンデッドは姿を消した。
意味が無いと悟ったらしい。
「俺は巻き込まれているだけなんだ」
ジグは完全に戦意を喪失しているようだ。
とっておきがあったようだが、肩を落とし身構えることもやめ、ただその場に立ち尽くしている様子だ。
再生を繰り返すネクロマンサーに対してもそうだろうが、俺という見えない新たな脅威に作戦が立てられないのだろう。
「いるんだろ? 出ておいでよ」
ネクロマンサーの誘いに応じる必要はない。
今度は
「うがあああ!」
すかさず切り離した四肢を闇に送る。
バランスを失った体は地面に倒れ伏す。
「サディスティックな恥ずかしがり屋さんだね。あれ、無くなってる?」
無から再生ができたとすれば不死身に近い。
切断面を
痛がり方は本当のようで、遠隔で操作されているくぐつのようなものではなさそうだ。
万が一、本体ではなかったとしても、重要な手掛かりにはなるだろう。
問題はこの危険な者を、俺の闇に捕らえた後、どのようにして引き渡すかだ。
どこから現れたのかも謎で、ひょっとすると転移系の魔法も使えるとなると厄介になる。
俺と違い、おそらく純粋な魔法の類であるはずだから、魔法を阻害するような施設があれば大丈夫そうだが。
まだまだ活きがよさそうなので、もうちょっと切ってみるか。
トカゲのしっぽみたいだな。
分裂しないだけマシか。
追撃の
「ぐぎゃあああああ!」
一番大きな声が出た。
四肢の根本付近から切断する。
切り離した部位を闇に送る。
そこにはボロボロのローブをまとう、顔と胴体だけとなった無残なネクロマンサーが横たわるのみ。
「ぐ、ぐ」
やり過ぎてしまったか?
回復魔法のエキスパートがいればなんとかなるだろう。
ネクロマンサーを闇に送った。
「……終わったのか?」
倒れこむように両膝と両手を地に着かせるジグ。
彼もまた例外なく闇に戻ってもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます