第23話 同族対決
今回の依頼に決まった期限は無いが、できることなら早く解決しておきたい。
やはり時期尚早だったなんて言われたくない。
今までと違い、ただ依頼の指示に従っていれば解決するというものではなく、自ら考え行動する力が試されている。
とは言え、俺にとってやることは一つ。
一つ問題が生じた。
二十階層目を過ぎた辺りから、重要な鍵となるアンデッドが見当たらないのだ。
ひとまず最深部に進んでしまう作戦もあるが、それよりも試しておきたいことがあったので、最初に遭遇した十五階層目に戻った。
最初に見つけた七匹のゴブリンのアンデッドは同じところにかたまっていた。
どう呼ばれているか知らないがクラス名っぽく呼ぶならゴブリンアンデッドという感じだろうか。
もう一度、西の森林で捕獲したゴブリンの中から、一匹追加して合計二匹を闇から戻す。
さっき一匹出したときは俺の魔力が本当に
近い距離で生のチームと死のチーム、それぞれのゴブリン達でお互いが向き合う形にしてある。
戦ってくれるとするならば、魔力を見て七対二がちょうどいいと思った。
生のチームはやはり異変に戸惑っているようだ。
こいつらの直前の記憶は、西の森林の洞窟で俺という恐怖の侵入者に立ち向かっているシーンだろう。
それが
今視界に映るのは、謎のゴブリンアンデッドで、
状況に理解が追い付かないのか、しばらく
「なんだこいつらは?」
「どうなっているんだ?」
死のチームが一斉に生のチームへ襲い掛かったからだ。
「俺達の仲間じゃないことはたしかだが……」
「明らかに様子がおかしい」
生のチームはアンデッドを初めて見るのか、その存在自体に対する認識も無いようだ。
一応、生のチームを応援しているので、武器として剣を持っていた個体を選んである。
聞いてる限りはアイアンソードらしいが、無いよりはマシだろう。
一方、死のチームには武器が持たされていない。
経費の削減だろうか。
襲い掛かってくるところを見ると、戦闘要員ではあると思うのだが。
それから死のチームはどうやら会話ができないようだ。
遊んでいる暇はないのだが、調査する上で必要なことだから仕方ない。
でも、どうせなら楽しみたいと思って、同族対決という企画を組んでみたのだが、すぐに終了してしまった。
生のチームの圧勝という形で終わった。
死のチーム側が弱かったのか、アンデッドになると弱体化するのか。
生のチーム側は意外と強かったのか。
ゴブリンは基本的に肉弾戦が得意だろうから、魔力だけで判断するのが間違いだったか。
俺に魔物同士の優劣を見極める能力が無いことをあらためて理解したと同時に、このアンデッド達について新しくわかったことがある。
アンデッド側の仲間以外には同族であろうが、見境なく敵と見なすということだ。
今後の呼び出しで、新鮮な反応を期待できないと思われる勝者の二匹には、闇にて絶命してもらった。
死のチーム側の残骸も合わせて送ってある。
さらなる実験を試みるため、少し階層を下りた。
ゴブリンアンデッドを五匹集めた。
二足歩行でトカゲのような魔物もアンデッド化しているものがいて、それも五匹集めた。
仮に名前をリザードマンだとすると、リザードマンアンデッド部隊となる。
適当に開けた場所で、ゴブリンアンデッド部隊とリザードマンアンデッド部隊を出現させ向き合わせた。
結果は
ということは、こいつらは仲間で同じ支配者の元に従っていると考えてもよさそうだ。
次なる実験を試みる。
今ここに集結した二つの部隊を、闇に送るのではなく、現実世界で息絶えてもらうのだ。
さきほどのゴブリン同士の戦いでもそうだったように、どす黒い血なら多少流れているようだが、それは生きていたときの残留物であり、体内を巡っていないようだ。
生きたゴブリンを切り裂いたときのように血しぶきが舞うことはなかった。
普段なら死体であろうが肉片であろうが全て闇に回収するスタイルだが、今は放置してじっと待っている。
アンデッド化したもの達と
だが、しばらく待ったが現れる気配は無い。
価値がない個体だったのか、感知できないのか、ここにはいないのか……。
そろそろ都合のいい展開になってくれることを祈るばかりである。
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