第22話 魔力

 エレの町の上空に転移した。

 もちろん【完全バニシュ】の状態である。


 そのまま北にしばらく進むとたしかに洞窟のものと思われる大きな入口が見えた。

 アリスから追加資料として洞窟の外観が写った写真をもらっているが、それと見比べてみると間違いないようだ。

 やはりAランクともなるとサービスが向上するのかもしれない。

 それとも……?


 さっそく中に入り、出し惜しみせずいつもの闇霧あんむを放つ。

 横方向だけではなく縦方向にも伸びているようだ。

 道は迷路のようになっていて階層があるようだ。


 律儀に階段とか探す気はないので、適当に進んだところで、岩盤をすり抜ける様にして、ゆっくりと下へ向かう。

 ダンジョンで最深部を目指すことを競い合う世界なら間違いなくナンバーワンになれるだろう。


 浅い階層には、この前捕獲しているケイブバットやケイブスネイクなどの小物が生息しているようだ。

 知らないものもいたが、似たようなものだろう。


 階層が深まるにつれて、徐々に魔物達の魔核のエネルギーは強くなっていく。

 見た目も比例して強そうになっていっていると思う。


 ケイブバットでも大型のものがいたりする。

 おそらくだが小物であってもハイクラスのものが混じってくるようだ。


 依頼書には十四階層辺りから目撃例があるそうだ。

 十階層前後では、まだアンデッドらしきものは見当たらない。


 俺の中では新種であったとしても、しばらくは目を引くような魔物には遭遇できていない。




 問題の十四階層目に差し掛かったが、特に変わったことはなさそうだ。


 ここらへんになってくると、魔物の基本的サイズは人よりも大きい。




 十五階層目、ついに遭遇したかもしれない。


 こいつらは俺の知っているゴブリンで間違いないだろう。

 西の森林のやつより一回り小ぶりだが、今はそんなことは重要ではない。


 魔核のエネルギーが感じられないのだ。

 この程度の魔物であればなんらかのスキルで隠蔽されているとは思えない。


 随分と負傷しているように見える。

 それどころか、肉がえぐれて骨がむき出しになっていても平気なようだ。


 それら数匹とも、ただじっと立ち構えているだけで、動く気配が無い。

 まさにしかばねのようである。


 しばらく観察していると、ちょっとした発見があった。

 魔核のエネルギーが感じられない代わりに、体全体からエネルギーが感じられた。

 追加資料のアンデッドに関する説明によれば、魔力と呪いの力によりアンデッドは作られると書いてある。

 今感じているエネルギー、これが魔力なのか。

 ただし、闇霧あんむごしでないと全くわからない。


 試しに西の森林で捕獲していた活きのいいゴブリンをその場に戻した。

 そいつがここどこ状態に陥っているのをよそに、俺は自らの成長に喜びをかみしめていた。


 コツというか、わかってしまえば簡単だ。

 これは俺だけなのかもしれないが、魔核同様にエネルギーの大きさは濃さ、言い換えれば密度として捉えている。


 ルシアが魔核のエネルギーと魔力は基本的には同じと考えていいと言っていた意味がようやくわかった気がする。

 魔力を一切放出していなければ魔核のエネルギーと等しくなるのだろう。

 魔核は魔物の判定に用いるとして、それ以外では魔力にだけ気を向けておけば、ある程度の個体の強さがわかりそうだ。

 闘力についてはよくわからないので今のところ諦めている。


 用済みのゴブリンを闇に収めた。


 その後も、他の種別の魔物においても同様のアンデッド状態と思われる魔物を発見した。




 二十階層目、ちょっと関係ないが、手応えのある魔物に遭遇した。

 筋骨隆々の体格で、顔は牛、手にはおの……あの有名なミノタウロスだよな?


 夜には約束があるので、そんなに遊んでいる暇もなく、さくっと闇に送った。


 果たして元凶と思われる者は、本当にここにいるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る