第10話 初クエスト
デリシャスラビットは近辺では王都の南にある森林の、そう奥まってはいないところによく現れるらしい。
依頼書とアリスからの情報にしたがって捕獲ポイントに到着した。
敵と戯れている暇も無いので【ヴァニッシュ】は解除していない。
当たり前だが今回の獲物は危険性が少ない。
それゆえFランクも対象なのだが、すばしっこく警戒心も強いため、見つけて捕まえるのは難しい。
さらに生け捕りとなると難易度は増すようだ。
普通のFランクならばそうなのかもしれない。
だが俺ならば話は別だ。
正攻法で取り組むのも新人冒険者らしくていいのだが、やはりそこは俺らしさを出していこうと思う。
とりあえず【
俺の闇に送ってしまえば、それらがどういった物質であるかはわかるので、この辺り一帯を取り込むつもりだ。
知らない物体の名称まではわからないが、それほど問題ではない。
唯一のデメリットは、出現させた
悪の道に走るならそれでもいいのだろうが。
しばらく考えて、ある方法を試してみることにした。
木、草、土、石、生き物……周辺の物質が手に取るようにわかる。
無数の極小な
そしてその一つ一つは空間にあるものをわずかに切り取るが、すぐに同じ場所に放出するようにしておく。
すると疑似的に闇に転送している状態となる。
受けているものからすれば
たったこれだけでうまくいった。
これを世界レベル、いや宇宙レベルにすれば、千里眼ではすまない超能力と呼べるだろう。
ただ、俺という謎に満ちた力を際限無く引き出したとき、今のままでいられるのか少し不安なので程々にするつもりだ。
ちなみに、攻撃的な技でも無いので、他人に聞かせるような名称は考えていない。
表現するとすれば、
今回の獲物はばっちり見つけられたので、それぞれに
あっさりと手中に収めることができた。
条件が五匹以上なので、その倍の十匹も捕獲すれば依頼主も大喜びだろう。
気が向いたら食べてみようと、自分用に五匹確保した。
少し場所を移動し、
<薬草採集 ハーブ 一キログラム以上>の依頼も同じ要領で、さくっと終えた。
こちらも二倍採集しておいた。
南の森林にはまだ用がある。
<調査 洞窟内部の状況>の依頼内容もこの近くだ。
森林の少し奥まったところに、最近発見された洞窟の入口があり、中に凶悪な魔物がいないか調査せよとのことだ。
根っからの冒険野郎なら既に潜入している奴もいそうなものだが。
依頼書に記された場所が丁寧だったので、これも迷うことなく入口の前までたどり着けた。
適当な大きさに
この先、これを乱用することは間違いないだろう。
内部の構造はわかった。
名前はわからないが、おそらく魔物だと思われる生き物が何種類かいる。
命令されてはいないが、こいつらは勝手に捕まえても問題ないはずだ。
心臓や核となる部分に一般的な人間や動物には無い特殊なエネルギーがあったので、おそらく魔物だと思われる。
これが魔力の源だとすれば、訓練すれば俺にも闇を通さずともそれを感じ取れる可能性はあるな。
さっきのデリシャスラビットも同じ性質だったので、あれも見た目はただの可愛らしいウサギだが、れっきとした魔物なのだろう。
たまにはナビに役立ってもらうとするか。
『ルシア、聞こえるか?』
『あら、もうアタシが恋しくなってきたのね?』
『まぁそんなところだ。心臓に特殊なエネルギーを持つものは魔物なのか?』
『へぇ、そんなことがわかるんだ。だいたい合ってるわ』
『だいたい?』
『神か魔王のような存在に意図的に作られる以外では、魔物は魔素から誕生するの。そのエネルギーはその証で、魔核と呼ばれているわ』
『それがわかるということは、魔力も感じられるようになるのだろうか?』
『基本的には同じと考えていいから大丈夫よ。アタシの魔力を一切感じなかったアナタのことだから、多少時間はかかるかもね』
『ありがとう。そっちは随分忙しいみたいだな。俺は今、ギルドに所属して初めての依頼で魔物を狩ったりしているところだ』
『神も大変なのよ。当分そっちに行く用は無いけど、アナタが出世したときには、特別な依頼を受けてもらおうかしら』
『楽しみにしておくよ。それじゃあ』
『またね』
知らない場所や物の名称がわかるようなチートスキルを、頼めば授けてくれるのか聞いてみようと一瞬思ったがやめておいた。
なんの面白みも無くなりそうなので。
それに借りを作り過ぎるのは得策ではない気もしたからだ。
残念ながらこの洞窟に宝箱は無かった。
この世界にはダンジョンのように宝箱が湧いて出るような場所があるのだろうか。
これはギルドに戻ったら聞いてみよう。
残る二つの依頼は王都だな。
俺は王都へと瞬時に転移した。
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