第2話 謎の女神

 目覚めた地点に留まり、自らの存在や能力について考察していたときだった。


 なにか聞こえたような気がした次の瞬間、まばゆい閃光せんこうが視界に広がり、地鳴りのような轟音ごうおんが鳴り響いた。

 俺の周りが激しく爆発しているようだ。

 夏の花火大会どころではない。


 普通の人間ならば目も耳もやられている。

 いや、即死しているだろうな。




 またもや音のした後方上空を向くと何者かがいた。

 聞き取れないがなにか言っているようにも見える。


 すぐさま一段と激しい爆発が起きた。

 とにかく爆発させるのがお好きなようだ。

 これは魔法だろうか。


 敵と見なすには十分な状況である。

 だが、記念すべき第一遭遇者であり、どんな奴か見てみたい。




 爆煙がおさまると、女が近くに降り立ち、つぶやいている。

 人間基準で言うと若く見え色気もある。

 薄紫色のローブをまとっており、隙間から除く髪は紫色をしている。


「もしもーし、もう言葉わかるよね?」

「聞こえている」


 こんな奴に敬意を払う気は無い。


「本来アタシの力で会話できるんだけど、通じないから超特別大サービスでアナタにもその力を与えてあげたわ。感謝しなさい」


 言語を理解できるスキルの類か。

 俺のような存在でも与えられるようだ。

 偶然にも一番の不安が解消された。


「それはありがたいが、それなら何故なぜあんな派手な歓迎を?」

「説明する義理はないわね」

「普通なら死んでいるところだぞ」

「そうよね。でも無傷で反撃の様子も無い。今こうして話しているのは、アナタに興味を持ったからよ」

「奇遇だな。俺もお前に興味がある」


「あら? いきなり愛の告白だなんて、アタシの美貌も罪よね。アナタのことを教えてくれたらアタシの秘密も少しは教えてア・ゲ・ル」

「俺は地球と言う星の日本という国の人間だったが、事故でここへ転送されたらしい。これからどうしようか考えているところだ」

「転生・転移で流行りの常連さんね。おそらくアナタは非公式なルートでここへ来たようだわ。聞いてる限りはこの世界に固執する理由は無いわけね」


 元の世界=地球にはおそらく戻れるだろうが、そうするつもりはない。

 宇宙船が崩壊する中で、あれほど生に執着していたのが不思議に思える。

 元の人生に未練は無いし、こんな状態で戻っても迷惑だろう。

 ここがいわゆるファンタジーな世界なら、こんな俺でも少しは馴染めるはずだ。

 異世界モノの話は好きで、そっち方面の知識には自信がある。


 話し相手がいる環境を探すのも大変なので、この星を拠点とするのは決まりだな。


「非公式?」

「不法侵入者ってとこかしらね」


 正式に召喚されていないということだろう。


「次はお前の番だ。お前は精霊か、悪魔といった類なのだろう?」

「せっかちはモテないわよ。女神みたいなものかしら。でもそんなアタシにもアナタのステータスは何一つ見えないのよ」


 後ろから殺しにかかる神などいるか。


「それは知らん。なんらかの気を察知して駆け付けたんじゃないのか?」

「あらあら、特別扱いされたと勘違いしているようね。ここへは用があって来ただけよ」


 女はクスッと嘲笑を浮かべている。


「その用とは?」

「はい、説明はここまで! 久々の珍客で楽しませてもらったわ。では、お帰りいただこうかしら」


 女が呪文を唱え始めると、俺の周りに魔法陣が現れた。

 初めて見る魔法は美しく神々しかった。


「ではごきげんよう。【真・テレポート】」


 頭上の雲を貫く一筋の光が現れた。

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