第4章 『対決とその事件の果てに』    全20話。その19。

            19。



 時刻は二十時四十五分。


 狂人ゲーム終了まで後十五分となったこの場所に、一人の男がドアを開けながら堂々と入ってくる。黒のダークスーツに身を固めたその男の名は、黒鉄探偵事務所所長の肩書きを持つ、黒鉄勘太郎である。


 たった今開けたドアに鍵が掛かっていなかった事を確認した勘太郎は、もしかしたらこの中に今も行方不明になっている海月リクと緑川章子がいるのでは無いかと、僅かな希望を信じていた。


「ここか。緑川が黒鉄探偵事務所のホームページの紹介欄を使って日記欄に書き殴ぐったと言う、俺達に提示してくれた場所は。でもこんな場所に海月リク君と緑川章子が本当にいるのか。でももし本当にこの場所に二人がいるのだとしたら早く見つけてやらないといけないな。でないと何か不味い事が起こるような気がする」



 そう独り言を言いながら勘太郎が足を踏み入れたのは、人の気配が全くしない最上階にある真っ暗な屋上だった。

 月明かりと周囲の町から照らされる明かりでどうにか屋上の状況が見えてはいるのだがその光景は何処か不気味で、薄暗さから来る静寂と物音を立てながら時々吹く風が勘太郎の焦りと緊張を更に高めていた。


 そんな不安を払拭するかのように屋上の角の端にある高いフェンスの隙間から下を覗き込んだ勘太郎は、下でいつでも突入出来る準備を整えている警察関係者達がその入り口前で待機をしている光景が見える。

 そしてデパートの外に止めてある数多くのパトカーや救護車は、綺麗に順序良く駐車場に並び。デパートの周りは人々の声や数多くの物音で溢れていた。


「くそ、野次馬達もかなり集まっているようだな。もしかしてこの事をテレビ中継でもしているんじゃないだろうな……いや、それは流石にないか。円卓の星座の存在は世間一般には全く知られる事無く、秘密裏にされているからな。恐らくは何らかの事故が起きたとか言って、もう既に情報操作が行われているのかも知れない」


 そんな想像を述べた勘太郎は、今度は屋上内にある様々な物を軽く見渡す。屋上内の広場にはちょっとした軽食が楽しめるカフェテラスの長椅子や机が並び、その一番奥の片隅には大きな貯水槽が堂々とそびえ立っていた。


「あれか、緑川の奴が最も気にしていたと言う場所は。ホームページの書き込み欄にもそう書いていたからな」


 不気味に聳え立つ貯水槽を見つめながらそう呟くと、勘太郎は直ぐさまその貯水槽を目指して歩き出す。


「ここか。ここが貯水槽の入り口だな」


 その貯水槽の所まで来ると、貯水槽の上の蓋が閉まってある所まで続いている階段があり。その剥き出しの鉄の階段を上らないと貯水槽の中を覗く事は出来ないようだ。


「まさか本当にこの中にいるんじゃないだろうな。でもこの屋上で水が関係している所と言ったらもうここくらいしかないからな……階段を上がって中を確認するしかないか」


 そう呟いた勘太郎は、無造作に鉄のホルムが見える鉄の階段の手すりに手を掛ける。その足下には猫除けか鳥除けなのか、二リットルサイズの大きな水の入ったベットボトルが数個並んで置いていた。


「なんだ、この屋上には猫でも出るのか。でもここって屋上だよな。こんな所まで猫は一体どうやって上がってくるんだ?」


 そんな今はどうでもいいことを一瞬考えた勘太郎だったが、直ぐに考えを変え貯水槽の一番上に設置してある入り口の蓋を目指す。

 一段一段階段を上る度にもしかしたら二人の溺死した死体があるのではと正直そんな考えが頭を過るが、そんな事は決して無いと信じながら貯水槽の頭の蓋まで到達する。


「蓋が開かないように施錠していたはずの南京錠が見事に外れている。もしかしたら本当に、この中に海月リク君と緑川の奴がいるんじゃないだろうな。よし、では開けるぞ!」


 意を決した勘太郎は蓋の止め金を外すと、勢いよくその貯水槽の蓋を開ける。


「海月リク君、緑川、中にいるのか。いたら返事をしてくれ!」


 勘太郎が持っていた懐中電灯の光を貯水槽の中に当てると、中が照らし出され貯水槽の中に溜まっている水が懐中電灯の光に反射する。


「ん……?」


 勘太郎が懐中電灯の光を当てながら目をこらしていると、その暗い水溜の真ん中付近にプカプカと浮かぶ一つの影があった。

 いや、厳密に言うと二つだ。その一つの影が小さな影を抱えていたから一人に見えたのだ。その人物とは、海月リク君を抱えながら水に浮かぶ緑川章子の姿だった。


 もう既に何分か……いや何時間この貯水槽の中にいたのかは分からないが、緑川は寒さで震えるその顔を頭上にいる勘太郎に向けながら力なく声を上げる。


「く、黒鉄先輩……やっと来てくれましたか……見つけるのが遅いですよ……」


「すまん、だいぶ遅くなった。まさか黒鉄探偵事務所のホームページにこの貯水槽の事を書いているとは思わなかったからな。して海月リク君はまだ生きているのか? お前が胸に抱きかかえているようだが、さっきからピクリとも動かないじゃないか」


 勘太郎の指摘にあったように緑川が水の中で抱えている海月リク君はさっきからピクリとも動かない。それどころか海月リク君は体温低下の為か血の気の引いた青い顔をし、もう既に死んでいるようにも見えた。


「まさか……死んでいるんじゃないだろうな」


「いいえ、まだ辛うじて生きていますよ。でももう既に気を失っていてかなりの低体温なので、早く水から上げてその冷え切った体を暖めてやらないと本当に危ないです。今は私が立ち泳ぎで何とか海月リク君の顔が水中に沈まないように頑張ってはいますが、もう私もそろそろ限界みたいです。もう体の全体が冷え切って手足に感覚がないですからね。いつ疲れ果てて沈んでしまうか分かりません。なので早く私と海月リク君をこの貯水槽の水から引き上げて下さい」


「そうは言ってもなぁ。一体どうすれば……。今ロープか何かを見つけ出して持ってくるからそれまで何とか耐えてくれ!」


「お言葉ですが……黒鉄先輩……私にはもうロープにつかまってよじ登るだけの力もありません。なので先ずはこの貯水槽に供給しているポンプの水を止めて……それからこの貯水槽に溜まっている水を全て抜いて下さい。そうすれば少なくともこの水で溺れ死ぬ心配は無くなりますから」


「わ、分かった。取りあえずは直ぐにこの貯水槽に溜まっている水を抜いて、その後でお前達を助け出してやるぜ。だから沈むんじゃないぞ、緑川!」


 そう叫ぶと勘太郎は勢いよく階段を伝い貯水槽の下まで降りる。


「お、落ち着け……ま、先ずはこの貯水槽に供給している水を直ぐに止めるんだ。このバルブだな。よ~し、回すぞ!」


 そう意気込むと勘太郎は貯水槽の水を供給しているバルブを力の限り回し、そして閉め上げる。


「よし、水は止まったぞ。次はこの貯水槽に溜まっている水を全て抜くんだ。でもこの貯水槽の水はどうやって抜いたらいいんだ。浴槽のお湯を抜くような蓋はこの貯水槽にはないのかな? と、とにかく急ぎその水を抜く方法を探さねば!」


 勘太郎は懐中電灯の光を当てながら貯水槽の回りを急ぎ調べていると、月明かりに照らされながら近づく何かの影が真っ直ぐに勘太郎の間合いまで歩いて来る。

 その何かを引きずりながらゆっくりと近づいて来る音を聞いた勘太郎は、かなり緊張した顔をしながらその音のした方に直ぐさま視線を向ける。その先には人を引きずりながら近づく一つの影があった。


 左手には大きな大木槌、顔には大きな逆さの水瓶を被ったレインコートを着た人物がそこには立っていた。長い厚手の痩せ型のトップモデルのような曲線美とロングスカートを履いている事から女性だと思われるその人物は決意に満ちたその闘志を向けながら勘太郎を見つめていた。


「ここに来てまたお前に出会うとはな、ハッキリ言ってもう二度と会いたくはないと思っていたんだがな。それに今はお前に構ってはいられないほどにとても忙しいんだ。だから今は、今だけは邪魔だけはするなよ。分かったな、水瓶人間!」


 そう、そこにいたのは、大木槌を振り上げながら構える、円卓の星座・狂人が一人・悪魔の水瓶その人だった。

 その悪魔の水瓶が右手で力強く引きずっていた物を無造作に投げつける。


 バタン、ゴロゴロ、ドサリ!


 勘太郎の目の前に転がってきたのは、無残な死体へと変わり果てた梅塚幸子の姿だった。


「この死体は、う、梅塚幸子……悪魔の水瓶……これはお前がやった事なのか。応えろ!」


 勘太郎の怒りの指摘に当の悪魔の水瓶は距離を保ちながら近づいてくる様子が無かったので、勘太郎は素早く目の前に転がってきた梅塚幸子の死因を軽く目視で調べる。


 体全体にライトを当てて軽く目視をした結果、彼女の死因は体中を何かで叩かれての撲殺、外傷性ショック死であることが分かった。その証拠に梅塚幸子の手足はまるで拷問でもされたかのように折れ曲がり、全てがあさっての方を向いていた。


 もしかして、あの大木槌で梅塚幸子の手足を一本づつ破壊しながら海月リク君の今場所を聞き出そうとでもしたのか。だからここに現れたのかも知れない。

くそ、一番会いたくない奴と鉢合わせしてしまったらしいな。


「応えないと言う事は、お前がやったと言う事で間違いは無いんだな。自分の依頼人を殺してまで、ここに何しに来たんだ。まさかとは思うが俺をわざわざ殺しに来たんじゃないだろうな」


 その言葉に応えるかのように悪魔の水瓶は「ポポポポーッ、ポポポポポポポーッ!」と狂気しながら勘太郎の前に一歩一歩静かに歩み寄る。


 くそ、本当に俺を殺しに来たのか。それとも物のついでに殺しに来たのか。どっちなのかは分かったもんじゃないな。でも仮に一戦交えるとしてもあの本物の悪魔の水瓶が相手では俺のちょっとした奇策程度では簡単には出し抜けないかも知れない。でも……それでも俺がやらないといけない。俺がこの状況を打破しないと、俺だけでは無く、緑川や海月リク君がそのまま溺死で死んでしまうかも知れないからだ。それだけは何としてでも避けなけねばならない。でも一体どうすれば。くそ、こんな時に黒鉄の拳銃があれば……奴ともまともに戦えるのに……」


 黒鉄探偵事務所に保管してある黒鉄の拳銃の事を思いだしながら、感太郎は傍にある水の入った二リットルサイズのペットボトルを両手に持つと、悪魔の水瓶を威嚇するかのように睨みつける。


「悪魔の水瓶、お前は一体誰なんだ。そしてなぜここにいる。何のために俺達の前にその姿を現したんだ。もうお前がここに現れる理由は何も無いはずだ。それとも本当に海月リク君を救い出すためだけにこの屋上まで来たのか。応えろよ、悪魔の水瓶!」


 勘太郎の必死の訴えに対し悪魔の水瓶は「ポポポポーッ」と言うよな奇妙な鳴き声でしか返事を返しては来ない。

 勘太郎は羊野が言っていた、悪魔の水瓶は決して子供は殺さないという言葉を思い返しながら、そのにわかには信じられない噂に賭けてみる事にした。


「悪魔の水瓶、実はこの貯水槽の中には今現在行方不明となっている、あの海月リク君が監禁されているんだ。俺がさっき彼の無事を確認したから、まず間違いは無い確実な情報だ。だが見た感じじゃかなりの低体温を起こしていて早く水の中から助け出してやらないと物凄く危険な状態なんだ。つまり一刻を争うと言う事だ。だから今は、今だけは邪魔はしないでくれ。頼むよ!」


 羊野の情報を信じて悪魔の水瓶に語りかけた勘太郎だったが、そんな勘太郎の思いとは裏腹に悪魔の水瓶はゆっくりとした歩みから行き成り物凄い勢いで走り出す。


「ポポポポポポポポポポポポーッ、ポポポポポポポポポポポポーッ!」


「く、来るか、悪魔の水瓶。この二リットル入りのペットボトルをくらえ!」


 大木槌を振り上げながら猛然と襲い来る悪魔の水瓶に対し、勘太郎は両手に持つ水の入った二リットル入りのペットボトルを投げつけながら、悪魔の水瓶の進行を阻もうとする。だがその程度では悪魔の水瓶の勢いは止まらず、投げつけてきた二つのペットボトルを素早く豪快に叩き落とす。


 マジかよ。この薄暗さだから一個くらいは確実に水瓶人間の体に当たると踏んでいたんだが、二つとも見事にたたき落としやがった。くそ、なら俺が直接奴に飛びかかって、あの大木槌による攻撃を避けるしかない。あれは重量級の長い得物だから体にひっつかれたら思うようには振るえないはずだ。


 そう瞬時に考えた勘太郎は二つのペットボトルが叩き落とされたのと同時に悪魔の水瓶の腹部に見事なタックルをかましていた。


 やった、悪魔の水瓶の体を抑えたぞ。後はこのまま寝技へと入って……と思ったのも束の間。勘太郎は悪魔の水瓶が出した右手で胸ぐらを力強く捕まれるとまるで万力のようにゆっくりとその体から剥がされる。


「くそ、息が苦しい……胸ぐらを掴むのをやめんかい!」


 胸ぐらを掴んでいる右手に何とか抗い抵抗しようと勘太郎は両腕で挑むが、その右手はビクともせず、逆に片でだけで勘太郎の体は持ち上げられてしまう。


 この人は本当に女性なのか。俺の体を片手だけで持ち上げやがった。う、嘘でしょう。


 圧倒的な力の差に絶望し苦しみ悶える勘太郎の姿を見ながら悪魔の水瓶は勝利の余韻に浸っていると、そんな彼女に勘太郎はつらい息を吐きながら尚も語り掛ける。


「悪魔の水瓶……俺を殺したいのならこの場で殺すがいい。だが今も海月リク君の身を必死の覚悟で守っている緑川章子の命だけはどうか見逃してやってくれ。彼女はあんたと同じように……子供の命を守るためなら自分の命すらも返り見ずに助けに入る……そんな人なんだ。だから彼女のことは殺すんじゃない。彼女は死んではいけない人間だ……優しい人間だ……正しい心を持った温かな人間だ……だから……だから……」


 つい仲間を助けたいが為に……命乞いをしてしまった。でもいい。それで緑川の奴が助かるのなら……俺は何度でも土下座をしてやるぜ。それで一つの命が助かるのなら……俺の情けない命乞いなどは……安い物だぜ。恐らく悪魔の水瓶は、俺を殺した後……海月リク君は助けるが……緑川の奴は助けてもらえないかもしてない。だから少しでも緑川が助かるかも知れない……その可能性を残して置くんだ。それに羊野や関根孝さんはここのことを知っているから、後数分くらいで羊野の奴が下にいるみんなを引き連れて必ずこの屋上に来てくれるはずだ。その為にも何としてでも時間を稼ぐんだ。


 息が出来ないのか、次第に声と言葉が小さくなっていく勘太郎を見ていた悪魔の水瓶は、物凄い勢いでその腕を豪快に突き放す。その瞬間勘太郎の体は豪快に吹きっ飛び、 勢いよく後ろにある大きな貯水槽に叩き付けられる。


「ぐはぁぁーっ!」


 勢いよく貯水槽の壁に叩き付けらえた勘太郎は痛みの為か瞬時に意識を取り戻したが、強く頭を打ち付けたせいか意識が朦朧として、体が思うように動かない。


 くそぉぉぉ、体がもう思うように動かない。たった今頭と背中を直に打ったからそのダメージがもろに来ているのか。ま、まずい。このままでは確実に殺される。と、とにかく今は貯水槽だ。早く貯水槽の水を抜かないと……」


 勘太郎は直ぐにその場から離れようと体を動かそうとするが、バランスを崩しつい力なく片膝を突いてしまう。


 も、もうここまでなのか。直ぐに悪魔の水瓶の、次の猛攻撃が来るぞ!


 そう思い顔を上げた瞬間、勘太郎の目の前には豪快に振り下ろされる悪魔の水瓶が持つ大木槌がしっかりと映っていた。



            *



「勘太郎さん……黒鉄勘太郎さん……起きて下さい。大丈夫ですか?」


 心配する誰かの呼ぶ声で我に返った勘太郎は、頭を押さえながらどうにか目を覚ます。頭がズキズキするような痛みに悪魔の水瓶との無謀な戦いを思い出した勘太郎は、はっとした顔をしながら直ぐさま回りの状況を確認する。そこには既に悪魔の水瓶の姿は無く、そこにいたのは、何やら心配そうな顔をしている甕島佳子の姿だった。


「その声は甕島佳子さん……どうしてあなたがここに?」


「それはこっちの台詞です。どうしてこんな所にあなたが倒れているのですか。勘太郎さん」


「こ、これにはいろいろと訳がありまして。そうだこんな所でいつまでも寝てはいられない。早く二人を助け出さないと!」


甕島佳子がここにいると言う事は、あれから一体どれくらいの時間が過ぎているんだろうか。緑川や海月リク君は一体どうなってしまったんだ?


 いろいろと頭が混乱する中で勘太郎が急ぎ立ち上がろうとすると、その行為を目の前にいた甕島佳子がとめる。


「勘太郎さん、無理はいけませんよ。それに何やら勘太郎さんの体からは血の臭いがします。何処か怪我をしているのですか?」


「あ、はい、どうやら頭を強く打ったようです。そこから血が出ているみたいですね」


「まあ、それは大変ですね。急いで止血をしないと。ちょっと待っていて下さい」


 そう言うと甕島佳子は持っていたスカーフを紐状に破ると、そのスカーフを勘太郎の頭に丁寧に巻いていく。


「即席の応急処置です。後は病院に行ってちゃんとした手当てをして下さい」


「ありがとうございます。それで、佳子さんはなぜこの屋上にいるんですか」


「屋上にもしかしたらまだ逃げ遅れた人がいるかも知れないと思って、ここまで手探りで歩いてきたのですが、何やら人の気配を感じてここまで歩いてきたのですよ。持っている杖で貴方を叩いていたら呻き声を上げましたので、ここに倒れている人間は勘太郎さんでまず間違いは無いと思った次第です。でもいくら叩いても突っついても中々起きませんでしたから怪我でもしているのではと思い、とても心配しましたわ。実際に貴方の体からは血の臭いがしていましたからね」


「血の臭いと僅かな物音だけで、意識を失い倒れている俺の居場所が分かってしまうだなんて、全く犬のような能力ですね。佳子さんのその感覚は」


「ふふふ、犬とは失礼ですね。でももう大丈夫です。勘太郎さんの一番の心配事はもう既に解決していますから」


「な、なんだって!」


 そう言いながら甕島佳子が目の前を遮っていた自分の体を横にずらすと、強い光が勘太郎の視界を照らし回りの状況が明るみになる。

 そこには現場の指揮を取る警視庁捜査一課特殊班の川口大介警部や赤城文子刑事、山田鈴音刑事と言ったお馴染みの面々が他の大勢の捜査員達を引き連れながら各仕事に勤しんでいた。


 警察がもう既にこの屋上に来ていたのか。と言う事は既に狂人ゲームは終わったと言う事なのか?


 呆然としながらいろいろと考えていると、その勘太郎の考えを読んだかのように甕島佳子が今ここで起きている事を静かに語り出す。


「私がこの屋上に来て、意識を失い怪我をした勘太郎さんを見つけたのは二十一時丁度頃だったと思います。鍵も何故か開いていて人の気配を感じた私は急ぎ中に入り、そこで倒れている勘太郎さんを見つけて110番通報をしたんです」


「なんで二十一時丁度だと分かったんですか。あなたは目が見えないはずなのに?」


「ああ、これです。私が持っているスマホ携帯のアプリの中に音声お知らせ時計機能が備わっているんですよ。そのアプリ機能で今の時間がわかったんですよ。因みに今は二十一時三十分です」


「そうでしたか。今は便利な機能があるんですね。それにしても、つまり俺は四十分も意識を失っていたと言う事か」


「それに、水が流れ出る音も聞こえましたからね」


「水が流れでる音だって?」


「ええ、勘太郎さんは恐らくは約十分くらいは気絶していた物と思われるので知らないとは思いますが、その水の音のお陰で勘太郎さんを見つけることができ、そしてこの貯水槽の中に海月リク君と緑川章子さんがいることも分かったんですよ」


「水……水だって……誰かが貯水槽の水を放水したと言う事か。でも一体どこから、どうやって?」


「貯水槽の裏側に回ってみて下さいな。そうすれば全てが分かりますよ」


 甕島佳子に促され、まだおぼつかない足でゆっくりと貯水槽の裏側に回った勘太郎は、コンクリートの床が大量の水で濡れているのを確認する。その視線を貯水槽の大きな容器の壁に向けると、その貯水槽の壁には小型の大砲でも撃ち込まれたかのような無数の穴が空いていた。その穴から今もチョロチョロと小さな水が流れ落ちる。


「こ、これは……この破壊の後は……まさか……」


「私が不信に思って屋上に入った時には、水の放出する音はもっと大きく聞こえていて、物凄かったんですけどね。今はもう殆どの貯水槽の水は全て流れ出てしまいました」


「それで肝心の海月リク君と緑川章子は本当に無事なんですか? 」


「ええ、二人とも無事のようです。確か、命に別状はないとか聞いています」


「そ、そうですか……」


「はい、この屋上に突入して来た警察関係者達が話しているのを盗み聞きしていたのですが、その話では警察の人は貯水槽の中を確認した時には緑川章子さんは沢山浮かんでいる大きなペットボトルの一つに必死にしがみついていたそうです」


「ペットボトルにですか。そう言えば猫除けの二リットル入りのペットボトルが数個ほどこの貯水槽の回りに置いてあるのを見たな。そのペットボトルの水を抜いてそれらを貯水槽の中に投げ入れたんだ。そうだろう」


「はい、そうです。しかも大きな浮力を作るためか。そのペットボトルは全て二つを一組にしてガムテープでグルグル巻きにしていたらしいですよ。しかもそのペットボトルが月明かりで見えるように貯水槽の蓋は全開に開けられていたそうです」


「あの悪魔の水瓶がそこまで考えてやったと言う事なのか……」


「さあ、それは分かりませんが、あの貯水槽の壁の穴の後は間違いなく大木槌による打撃の後ですから、その場にいた悪魔の水瓶がやったのだと思いますよ。当然勘太郎さんはその悪魔の水瓶と交戦したんですよね?」


「ああ、あの悪魔の水瓶は確かにここにいたよ。だから海月リク君と緑川章子を助けたのは間違いなく、その彼女で間違いは無いだろう。だがそのたったの十分以内に悪魔の水瓶は何処かにその姿をくらましてしまった。恐らくは脱出経路をちゃんと確保してから事に当たっているだろうから、もうこのデパート内にはもしかしたらいないのかも知れないな。なにせ奴はプロの殺し屋でもあるからな、自分の正体を示す重要な証拠は一切残してはいないだろう」


「そうですか……あの悪魔の水瓶があの二人を助けたんですか。それはなんとも、らしくない事をしましたね。本来狂人は人助けなんか絶対にしないのに……おかしいですよね。本来彼らは……円卓の星座の狂人達は人を助けたりなんかは絶対にしない……そんな狂った人間達ばかりなのですよ」


「でもあの悪魔の水瓶は海月リク君だけでは無く、緑川章子のことも助けてくれた。そして何故か俺にもトドメは刺さなかった。一体なぜだ?」


「さあ、何故でしょうね。緑川章子さんの場合は自慢の大木槌がただ単に届かなかっただけでは有りませんか。それにあの二人を引き上げる手段がなかったのだと思いますよ。だから彼女はペットボトルを使った浮き袋を即席で作るくらいしか出来なかったのではないでしょうか。それが結果的に二人を助けるすべになってしまった」


「俺のことはどうなんだ。俺はなぜ助かったのだと思う?」


「さあ、なぜでしょうね。きっと気まぐれだと思いますよ。でも、もしかしたら、自分の命も返り見ずに二人を必死に守る為に立ち向かうその姿を見て……悪魔の水瓶が持つ大木槌の狙いがそれてしまったのかも知れませんね」


「そんな事で、あの悪魔の水瓶の心が変わったとはとても思えないんだが」


「確かにそうですね……でもあの悪魔の水瓶だって一応は血の通った人間なのですから……もしかしたら情けを掛けたのかも知れませんよ。実際勘太郎さんが屋上に出向かなかったら悪魔の水瓶は貯水槽に行く事はなかったのですから……」


「なぜ佳子さんにそんな事が分かるんだよ。あの悪魔の水瓶は梅塚幸子を拷問して海月リク君の居場所を聞いたからこの場所に来たんじゃないのか」


「ええ、もしかしたらそうなのかも知れませんね。いいえ、恐らくは多分そうです。でも勘太郎さんも、もうこんな無茶は金輪際しないで下さいよ。円卓の星座の狂人は、みんな狂った恐ろしい人達の集まりですから、こんな奇跡のような事はもう二度と起こらないと思いますよ。今回は何故かたまたま気まぐれを起こした悪魔の水瓶が貴方を見逃したようですが、だからと言って決して勘違いをしてはいけません」


「か、勘違いですか?」


「そうです。悪魔の水瓶は子供は必ず助けてくれるし、もしかしたら本当は心が通じる優しい人物なのかも知れない、だなんて思わないことです。そこだけは絶対に違いますから!」


「あ、ああ、わかったよ。肝に銘じて置くよ。でも佳子さんはまるで悪魔の水瓶の事を知っているような口ぶりで話すんですね」


 その勘太郎の言葉に甕島佳子は少し困り顔で話す。


「狂人の考えていることなんてみんな大体は同じですよ。直ぐに想像が出来ます。あの組織の連中はみんな狂っているんですよ。私は小さい頃からいろんな事件や狂人達の話をお母さんに聞かされて育ちましたから、大体の狂人のことはみんな知っているんですよ。昔お母さんは推理小説を書いている合間にあなたのお父さんでもある黒鉄志郎にも捜査協力をしていたという話ですからね」


「そうか、あなたの母親でもある甕島直美さんは俺の父親や黄木田店長に関わりのある人でしたね。なら円卓の星座の狂人達の事を知っていても別におかしくはないか。そして今回現れた水瓶人間の事も……」


「何年か前に行き成り現れたあの悪魔の水瓶が関わる謎の溺死事件の事も勿論全て調べていましたからね。だから悪魔の水瓶の犯行やそのやり口も大体は知っているんですよ。その完璧で情けを一切見せない冷血な性格もね」


「でも俺は冷血無比と言われている、その悪魔の水瓶がたまたま起こした、その気まぐれで助かったのか……」


「そうです……勘太郎さん、あなたが助かったのは、悪魔の水瓶のただの気まぐれです!」


「き、気まぐれか……」


「そうです。ただの気まぐれです。そして勘太郎さん……恐らく次はありませんから!」


 そう言いながら勘太郎に向ける甕島佳子の顔は何故だか不気味で、その気迫はより一層説得力を増す。そんな緊張感漂うその会話の中で、甕島佳子とあの悪魔の水瓶の姿が一瞬だけダブって見えた。


 まさか甕島佳子が……まさかな。


 そんなよく分からない意味不明の緊迫をほぐすかのように甕島佳子がまた笑顔を取り戻しながら笑いながら話す。


「ほほほ、ごめんなさい。怖がらせるようなことを言ってしまって、でも円卓の星座の狂人は本当に危険ですから、あんな考え無しの無茶な事をしたら命が幾つあっても足りないと思ってつい厳しい事を言ってしまいました」


「佳子さん、俺のことを本気で心配してくれてありがとうございます」


「分かってくれたらそれでいいんです。それともう一つ、勘太郎さんの傍に誰かの死体らしき物が転がっていたのですが、あれは一体誰だったんですか。もう既に冷たくなっているみたいでしたので、私、目が見えないから誰だか分からなくて?」


「ああ、あれは梅塚幸子さんですよ。悪魔の水瓶に殺されたようです」


「そうですか……やはり狂人は恐ろしい存在ですね。でもいつかは彼らもその罪を償う日が必ず来るでしょう。いつか必ず……」


「佳子さん……」


 また微妙な空気になったので今度は勘太郎が明るい声で話題を変える。


「しかしそうか。海月リク君と緑川章子は助かったのか。そうか、よかった!」


「はい、二人とも、体の疲れと長く水に浸かっていたせいか低体温に陥ってはいますが、命に問題はないとの事です。その後は直ぐにタンカーに乗せられて近くの病院に運ばれて行ったので大丈夫でしょう」


「そうか、そうか。海月リク君と緑川章子はもう既に救急車で運ばれて、梅塚幸子さんの死体も俺が意識を取り戻す前に綺麗にかたづけられているな。でもだとしたら、なんで俺はこのままなんだ。一応は背中と頭に打撲を負っているんだが。俺は救急車で運ばれないのかな。て言うか運んでくれないの?」


「その事なのですが、その程度の怪我で救急車にわざわざ乗せなくてもいいと言ったのはそこで指揮を取っている川口警部とかいう刑事さんです。聞きたいことが山ほどあるからそれまでは病院には行かせないとか言っていましたよ」


「あの親父ふざけんなよ。背中と頭が痛くて怪我をしているのに。これは立派なパワハラだ。くそ、今直ぐに抗議に行ってやるぜ!」


 そう言いながら川口警部の元に行こうとした時、屋上の入り口の方から白銀の長い髪を揺らしながら近づく白一色の服装をした人物が勘太郎を目がけて真っ直ぐに来る。白い肌に赤い眼光をギラギラさせながら近づくその人物は、紛れもなく羊野瞑子その人である。

 羊野はニコニコした顔を見せながら勘太郎の前まで来ると、さも態とらしく心配するような言葉を掛ける。


「黒鉄さん。人づての話では、頭と背中を強く打ったようですね。大丈夫ですか」


「ああ、どうにかな。その事で今から俺は川口警部に抗議に行く所だよ」


「私の所にも来ましたよ。お前にはこれから事情聴取があるから、それまでは病院には行かせないとハッキリ言われました。はあ、警察も横暴な事を言いますね。私達は警察の部下ではありませんのに。あくまでも互いに協力する側なはずですよね」


「でもその警察の管理下でお前はシャバに出して貰っているんだから、警察には全面協力をしないといけないのは分かるが、なんで俺までこんな不当な扱いを受けないといけないんだよ。ちゃんとした保証と仕事内容の改善を要求するぜ!」


「ふふふ、そんなに文句が言えるほどに元気なら、もう大丈夫のようですね。すいません。私が不覚を取ったばかりに、黒鉄さんを危険な目に遭わせてしまいました。今回はもしかしたら本当はその場で死んでいたかも知れないとも聞いています」


「そうだな、今回は俺もお前も、あの悪魔の水瓶に情けを掛けられて助けて貰ったからな。勝負に勝って戦いに負けたと言った所かな。まあ、二人揃って負けてたんじゃ意味が無いけどな」


「そうですね……今回は私達の完敗ですね。事件は何とか解決は出来ましたが、このデパートにいた多くの人が死んでしまいました。そして私達は本物の悪魔の水瓶には勝てなかった。そしてその正体も未だに知る事が出来ません。でもそれは今回だけです」


 そう言いながら羊野は後ろにいる甕島佳子に近づくと、太股に隠していた包丁を彼女の首元に突き付けながら甕島佳子を睨む。


「今回は確かに不覚を取り、敵に情けを掛けられると言う屈辱を負ってしまいましたが、いつか必ずあなたの正体をつかんで見せますわ。狂人・悪魔の水瓶!」


 そんな羊野の予告とも言える宣言に、甕島佳子は不気味に微笑みながら和やかに言い返す。


「あなたが一体何を言っているのか私にはさっぱり分かりませんが、もしかしたら私のことを悪魔の水瓶と勘違いをしているのですか。だとしたらそれはただの思い違いですよ。大体私は目が見えないのですから、あの悪魔の水瓶のように、素早く豪快に、しかも確実に動ける訳がないじゃないですか」


「でもあなたはこのデパート内の事なら全てを熟知しているはず。ならこのデパートの中を自由に動けてもおかしくは無いと思いますけどね」


「自由に動けると簡単に言いますけど、それは杖があればの話で、それでもちゃんと杖で前の障害物を確認しながらゆっくりと歩くのがやっとなのですよ。それを大木槌を持ったまま、隠れている人を探し出して襲わないといけないだなんて、目が見えない私には絶対に無理な話ですよ」


「でもあなたは私の刃物による攻撃を止めた。ならその超人的な能力で相手を察知する事は出来るのではありませんか」


「それは無理です。私があなたの攻撃を止める事が出来たのはあなたの殺気や体の僅かな物音や臭い、そして感覚が伝わってきたからです。私の間合いに入って来た人ならどうにか対応は出来ますが。逃げ惑う人を追いかけ回す事は流石に出来ませんよ。それにその悪魔の水瓶は以前から外でもいろんな犯行を繰り返している狂人だと言うではありませんか。なら尚更私には無理だとは思いませんか。なにせ私はお外のことは全然分かりませんからね」


「本当は目が見えるという可能性は」


「そう思うのなら私を眼科にでも連れて行って徹底的に調べたらいいでしょう。私のお母さんは下半身が不随で歩けず。私は目が本当に見えませんですから。ああ、白内障を装う為の濁ったコンタクトレンズは目には入ってはいませんよ」


「でも私達が六階に上がって以降のあなたのアリバイはありませんよね。それを証明してくれる人はいますか」


「あなた達と別れてから、私達は皆別々に別れて行動をしていましたからアリバイなんてありませんよ。水谷里子さんや木戸警備員、長瀬警備員もみんな何処かに行ってしまいましたからね」


「それで……他の三人は今はどこにいるんですか?」


「さあ、分かりません。このデパート内の何処かにはいるとは思うのですが」


「後で、彼らにもアリバイを聞かないといけませんね。一体何をしていたのかを」


「そうですね、是非ともそうした方がいいと思いますよ。でもどうやら五階フロアーと六階フロアーの監視カメラの映像は見れない見たいですよ。監視カメラに詳しい木戸警備員の話では、何者かに五階と六階の監視カメラの線を繋ぐコンセントからプラグを抜かれていた見たいですからね。しかもご丁寧に全てのカメラのレンズに黒色のスプレーが吹き付けられていたみたいですよ。あれじゃ何も映ってはいませんよね」


「あなたは……」


「だから私ではありませんと何度も言っているじゃないですか。いい加減にしつこいですよ、白い腹黒羊さん!」


「あなたには卑怯な不意打ちで壁に叩き付けられた恨みがありますからね。あんないかれた馬鹿力を持っている人物は、このデパート内では恐らくは貴方くらいだと私は思っています」


「力自慢の大の男ならあれくらいは簡単にできるでしょ。少し大袈裟ですよ。それにあなたが軽すぎて、ただ単に非力なだけではありませんか」


「なんですてぇぇー、この馬鹿力女が! その私よりも弱くてか弱い黒鉄さんをボコスカと虐めてくれた事には、後で必ず落とし前を付けさせて貰いますからね!」


 おい、まて、俺はそんなに弱くはないぞ。と思わずツッコミたかったが、その言葉を好かさず羊野が止める。


「それともう一つ。甕島佳子さん、あなたは、梅塚幸子さんのポケットから取り上げた緑川章子さんのスマートフォンを態と関根孝さんの傍に落として行きましたね。つまりあなたは関根孝さんの死んだふりも全て見抜いていたと言う事です。あの暗闇でそれを見抜くだなんて……あなたは人の呼吸音や心臓の心音すらも聞こえるのですか。だから関根孝さんの迫真の演技すらも見抜く事が出来た」


「ほほほほー、あなたが何を言っているのか私には全く分かりませんが、その話には流石に無理があるのではありませんか。傍まで近づいたのならともかく、遠くで呼吸音や心臓の心音を聞くことは私には出来ませんよ。漫画じゃあるまいし」


「でも、今の言い方だと、相手の近くにいたら呼吸音も心音も聞こえるとも聞こえますが」


 その人のあげ足を取るような羊野の言葉に甕島佳子の顔の綺麗な眉がピクリと動き、明らかに不機嫌そうな笑みが彼女の口から零れる。


「ははは、やはりあなたとは気が合いそうにありませんね」


「はい、わたしもそう思います。ですのであなたとの決着はいつか必ずつけなけねばならないと思っています。その時は覚悟して下さい。甕島佳子さん!」


「なんの決着かは知りませんが……まあ、楽しみにしていますわ。羊野瞑子さん!」


「お、お前ら、いい加減に喧嘩はやめろよ。本当にお前らは中が悪いな!」


 睨み合う羊野瞑子と甕島佳子の仲裁に入りながら勘太郎は、この奇想天外な狂人ゲームが終了した事をようやく理解するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る