予定変更
西園寺さんはあからさまに深い溜息をついた後、何やらブツブツと呟きはじめた。
「やれやれ……あれだけの事を私がして、まさか私が好意を抱いてないって思ってるなんて……鈍いを最早通り越してますね……全く……」
若干黒いオーラも漏れてるので話しかけにくい……いや……でも話しかけないと先に進めないし……
「あの……西園寺さん……?」
「先生。決めました。私、予定を変更します」
私は意を決して西園寺に話しかけたのだけど、すぐに西園寺さんがこちらを振り向いていい笑顔で私にそう言ってきた。私は西園寺さんの言ってる意味が分からずに困惑していると、西園寺さんはゆっくりゆっくりと私に近づいていき
「ねぇ、先生。そもそも私が好きでもない相手にあれこれ世話焼いたり、裸エプロンまで誘惑したりするフシダラな女に見えますか?」
「そ……それは……」
確かにそれはずっと気になっていたところだった。
最初は、親の願いに応えてあげてるのかとも思ったけど、西園寺さんは嫌な事は絶対にしないタイプなのは、一緒に暮らしはじめてからなんとなく分かってきた。だから、本当に嫌なら絶対にあんな事をするはずはないだろう。けど、もし……そうだとしたら……
「先生にはハッキリ言わないとダメみたいですから、もうハッキリ言っちゃいますね」
私は心の中でこれ以上はダメと訴えられ、逃げようと後ずさるも、西園寺さんが両手で私の顔を挟むように触れ、絶対に逃さないと言わんばかりに、西園寺さんの顔をしか見れない位置に固定されてしまう。
「先生。私、先生の事好きなんです。もちろん。恋愛的な意味でですよ」
西園寺さんから衝撃的な一言が放たれる。私は呆然としてしまい、どうしていいか分からず困惑してしまう。
「ど……どうして……私なんか……29のババァって言われてるような奴を……」
ようやく絞り出した私の言葉はそれだった。けど、西園寺さんはまっすぐ私の瞳を見つめたまま……
「きっかけはちょっとした出来事でしたけど、そこからはもう完全に先生に夢中になってしまっていました。真面目に努力する姿や、ちょっとどころかかなり鈍感なところ。陰口を言われて平気そうにしてるけど実はすごく傷ついているところ。それに、本当は誰よりも恋愛に興味津々なところも全部含めて可愛いです」
「んなぁ!?かわぁ……!!?」
可愛いなんて言われ慣れない言葉に動揺していると、西園寺さんはその美しい顔を更に私の顔に近づけてきた。
「だから、どんな事があったにせよ、先生とこういう関係になれたのは嬉しかったんです。本当はゆっくりじっくりと先生が私無しではいられないようにするつもりでしたけど……先生があまりにも鈍感なのがいけないんですよ?」
西園寺さんがそう言うと、西園寺さんの綺麗な唇が徐々に私に近づいていき……そして……
チュッ
私の額に柔らかな何かが押し当てられた感触がした。
「今はここで我慢します。けど……いつか先生が心身共に私のになったらここを……」
西園寺さんが指で私の唇を撫でたような気がした。しかし、私はその瞬間に意識を手放した。なんだか西園寺さんが慌てて私を呼ぶ声がしたが、完全に私はブラックアウトした。
で、数時間後目を覚ましたら、宿の部屋の布団に寝かされていた。どうやら、私は長時間湯に浸かっていた為にのぼせてしまったらしい。まぁ、正直西園寺さんの言動で頭がオーバーヒートしたせいなような気がするけど……いや、もしかしてアレは私がのぼせたせいで見た幻では?と思ったのだが……
「先生。これからはもっと積極的にいかせてもらいますからね♡」
と、西園寺さんがいい笑顔で言ったので、アレは現実だったと実感する私だった……
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