柊さんの恋愛事情

全ての事情を私は柊さんに打ち明けた。すると、柊さんは何かブツブツと呟きだした。


「……お酒のせいにして過ち犯したようにみせかけるって……相変わらず遥香ちゃんやり方がえげつないよ……」


何の事を言ってるんだろう?と私が首を横に傾げていると、柊さんはようやく独り言をやめてこちらを振り向いた。


「それで、高橋さんは西園寺さんへの感情が恋愛方面に向いてないのに、この関係を続けてはいけないと思っていても、心の中でそれを拒絶している高橋さんがいるという訳ですね」


「…………はい」


改めて言われると本当に酷い話だ。きっと、柊さんは呆れてさっさと関係をやめた方がいいと言うだろうなと私は思ったのだが……


「まぁ、なるようにしかなりませんし。自分の心のまま、流れに身を任せてみるのもいいんじゃないですかね」


「……えっ?」


まさかの回答に思わず目が点になって驚いてしまう私。そんな私を見て柊さんはクスリと笑い


「関係をやめろって言われると思いました?まぁ、多分理央君と付き合う前の私だったらそう言っていたかもしれませんね」


柊さんはそう言うと、少し懐かしむような目をしながら自分が理央君と付き合うまでの話をしてくれた……



理央君と付き合う前の柊さんは、私と同じく自分には恋愛が出来ないと思っていたという。ただし、私とは全く違う理由である。

柊さんは見た目が小学生女児にしか見えない為、教職員の仲間どころか、生徒達にすら子供扱いされ、彼女を見る目のだいたいが妹のように見ている人が大半だった。だから、彼女に恋愛を抱く者は皆無で、抱いたとしてもそれは幼女好きの人ばかりである。当然、そんな人と恋愛出来るはずもなく、柊さんは完全に恋愛を諦めていたのだが……


「柊先生!俺!柊先生の事が好きなんです!」


諦めかけていた時に、柊さんにそう告白してきたのが藤村君だった。

最初こそ、何かのイタズラかもしくはこの年齢で幼女趣味なんじゃないかと警戒していた柊さんだったが、いつも自分の前にやって来ては猛アプローチをしてくる藤村君に、これは本当に本気なんだということに気づき、次第に、柊さんは藤村君の事を意識し、結局完全に藤村君に堕ちてしまったという……




「まぁ、私の経験でしかないですけど……惹かれる時はいつのまにか惹かれてるのが恋愛だと思うんです。だから、自分の心の本当の気持ちが見つかるまで流れに身を任せてみるのもアリなんじゃないかなぁ〜って思うんですよ」


柊さんは苦笑を浮かべながらそう言った。その言葉を述べた柊さんは見た目は小学生女児でも、雰囲気が大人の女性のそれで、やっぱり私より色々経験してるんだなぁ〜……と私は改めて実感したのだった……

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