大浴場の脱衣所にて

大浴場へと向かう私だったけど、一つだけ失念していた事があった。それは……大浴場の場所を知らないという事だった。大浴場自体があるのは、行く前に西園寺さんに聞かされていたので知ってたんだけど、どこにあるのかは知らなかった。

いや、多分部屋に案内される道すがらで、案内してくれた宿の人が説明してくれたんだろうけど、私はあの時心ここに在らずの状態だったからすっかり聞き逃していたのが原因か……


散々迷った挙句、どうにか宿の人を見つけて案内してもらい私はなんとか大浴場へとたどり着いた。


「うわぁ〜……この広さで本当に脱衣所なの?」


大浴場の脱衣所に入った瞬間、私は驚いて呆然と立ち尽くしてしまった。その広さは、私のマンションの部屋の何十倍もあった。まぁ、数百人の人が来るのを見越して作ってるんだから、これぐらいの広さは当たり前なんだろうけど……

とりあえず、脱衣所には服や浴衣を入れる棚はもちろん、女性は必須な化粧をする為の洗面台。女性が1番気にする体重計。座り心地が良さそうなソファの近くには、女性向けの雑誌が置いてある簡易の本棚もある。もちろん。牛乳などの多種多様なドリンクが入ってる自動販売機もある。脱衣所の別部屋にはエステにサウナにシャワー室まである。脱衣所だけでもかなり充実してるかもしれない。


そして、やはりこういう大浴場の脱衣所には、やはりというかマッサージチェアーがいくつも置いてあった。私は何気なくそのマッサージチェアーを見ていたら……


「ああぁぁぁ〜……!」


マッサージチェアーにドッシリと座って、口の端にヨダレを垂らしてしまうほど気持ち良さそうな顔をしている小学生の女の子……じゃなくて柊さんがいた。


「柊さん……?」


「ほぇ……?」


私が声をかけたら、柊さんはものすごく蕩けた顔で私の方を振り向いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る