若干芽生えつつある想い……
佐藤君と藤村君との一件も片付き、職員会議も終えて、私はいつものように帰宅の途についたが、その道すがらて私は大きく溜息をついた。
「はぁ〜……私ってば本当に何を考えてるのよ……」
思い出すのは西園寺さんとの関係が壊れると思ったあの瞬間だった。私はあの時、間違いなくこの関係を終わらせたくない。まだこの関係を続けたいという気持ちが出てしまい、罪悪感が胸いっぱいに広がっているのである。
「私のせいで西園寺さんは将来を奪われたのに……」
私の酒の過ちからこのような関係に陥ってしまい、西園寺さんはこんな私の面倒をみなくてはいけなくなったと言うのに、私があの時望んだのは、この関係を無くしたくないという気持ちだった。そんな風に思ってしまう自分に罪悪感と嫌悪感が襲ってくる。
「けど……久しぶりだったのよね……暖かい部屋に、暖かい食事……それに……私ほとんど聞き手だけど、楽しい会話のある食事って……」
教職に就いて、一人暮らしを始めてから、基本私あのマンションの部屋でずっと1人だった。だから、当然部屋は帰る時は真っ暗で、誰かが出迎えてご飯を作ってくれる事もないし、ましてや会話をしてくれる人なんて1人もいない。だから、今の生活が楽しくてとても充実しているのである。
「はぁ〜……私って本当に最低だ……」
そんな想いを抱いてしまう自分に内心腹がたち、罪悪感が心の中を支配していく。そして、ついに私は自分のマンションの扉の前に立つと、首を横に大きく振った。
「とりあえず……こんな顔を西園寺さんには見せないようにしないと……」
こんな私との生活を、恐らくだけど楽しんでくれている西園寺さんに、私の罪悪感で塗れた暗い顔を見せる訳にはいかない。私のせいでこんな生活を余儀なくされたんだから、とにかく暗い顔だけは見せないようにしないと……」
「ただいまぁ〜」
私がそう言って扉を開けると……
「おかえりなさい♡先生♡ご飯にします?お風呂にします?それとも……わ♡た♡し♡」
再び裸にエプロンだけのスタイルであのお決まりのセリフを言ってきた西園寺さんに、色々な意味で私は頭痛を感じずにはいられなかった……
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