全ての始まりの日

side:西園寺 遥香


あれは、私がまだ6歳の時でした。


当時の私は6歳にして色々達観し過ぎていたと自分でも思いました。ですが、それも無理もない話だと思います。

私は西園寺グループの1人娘という肩書きプラス、自分でいうのアレですが類い稀な容姿を持っていました。故に、家族や身内に近い人達、それ以外の人達も必ず私に


「遥香ちゃんは可愛いですねぇ〜」


と言ってくれますが、すでに何回も可愛い可愛いと言われ続け、その当時から私にはその「可愛い」の言葉の裏に隠された下心が分かってしまっていました。

もちろん。本当に私の事を可愛いと思ってくれる方達ばかりでしたが、その裏に隠れているのは、「ここは私を褒めて西園寺グループとの繋がりを持とう」とか「自分の子とくっつけて西園寺グループと懇意になろう」とかのあからさまな下心が若干6歳の私でも分かりやすく、正直私は「可愛い」という言葉を聞くのもウンザリしてました。まぁ、家族や身内などからのは、本当に心の底から言ってると分かっているので受け入れてましたが……


6歳ながら達観していた私に、ある日運命の出会いが待っていました。

翔太お兄様が卒業パーティーを家でする事になり、私も翔太お兄様の同級生さん達へ挨拶しなければならなくなりましたが、内心はすごく嫌でした。しかし、もう決まってしまった事なので、内心嫌だなと思う気持ちで、翔太お兄様の同級生の方々の対応しました。


「うわあぁ〜!?これが噂の翔太君の妹さん!?本当に可愛いですねぇ〜!」


「本当に!本当に!将来俺と結婚してほしいぐらいっすよ!」


そこでやはり連呼される「可愛い」という言葉の嵐に、私は辟易しながらも笑顔で対応してました。6歳にして人の心の内が読めるようになってしまった私は、彼らの心の内が手にとるように分かっていました。

女性だと、翔太お兄様には立派な彼女がいるというのに、私を褒める事で、翔太お兄様との繋がりを持とうとする方々が多く

男性だと、本気で私を狙おうと考えてる人が大半で、「ロリコンかよ……」と思わず内心で舌打ちをしてしまいました。


が、たった1人だけ違う人がいました……


「へぇ〜。本当に噂通り可愛いですねぇ〜」


それは、翔太お兄様の彼女よりも、失礼ながら地味な見た目をした女性でした。眼鏡は地味さが目立つ物で、ダボダボな服を着てるせいで膨よかにも見えました。

しかし、私はその方からの言葉に酷く衝撃を受けました。


(反応が……!?薄い……!!?)


彼女も他の方々と同様に私を「可愛い」と言いました。普通に私を可愛いと思ってくれてるのも間違いありません。しかし、彼女の「可愛い」の言い方は快晴の日に


「今日はいい天気ですね」


と言ってるのと同じ感覚で言っていたのです。あくまで、彼女は私が可愛いから可愛いと言った。それ以上もそれ以下もないと言った反応でした。


そんな薄い反応をこれまで一度もされた事が無かった私にとってはまさに衝撃でした。気づけば、私の視線はずっと彼女を追っていました。

卒業パーティーをしている彼女は、やはり他の方々とは違い、お兄様と積極的に会話に交じる事なく、ほとんど聞き手に回っていました。他の方々が積極的に翔太お兄様と関わりを持とうとする中、彼女だけはずっと聞き手のポジションを維持してました。だからでしょうね。翔太お兄様が秋穂お義姉様の次に多く話しかけていたのは彼女でした。


(どうして……?どうして私はこんなに彼女の事が気になるのでしょう……?)


私は今まで感じた事がない感情に戸惑っていました。けれど、私はすぐにその感情の答えを見つけました。


(私は……あの人を……私の物にしたい……!)


6歳にして私は彼女に強烈な恋心を抱いたのです。



そして、私は後にお兄様達から彼女の名前を聞き出しました。


高橋たかはし 真由美まゆみ……後に、私が通う高校の担任の先生に無理矢理させる人の名前を……

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