念願成就に向けて進めていかなくては……

side:西園寺 遥香


ふふふ……うふふふふふふふふ……!!ようやく!ようやくこの時がきました!長年かけて打ち立てた計画を実行に移すこの時が!


私は感極まって雄叫びを上げそうになるのを必死に堪える。まだ計画は始まったばかり。落ち着かないと……とりあえず、まずは先生ね。


桔梗ききょう。いるわね」


「はい。遥香お嬢様」


私のすぐ側に突然メイド服を着た少女が現れる。普通の人ならビックリするのだろうけど、私からしたら彼女のこのような登場の仕方は日常茶飯事なので驚く事はない。


彼女の名前は相沢あいざわ 桔梗ききょう。私と同い年であるが、私の専属メイドである。彼女も私と同じく私立藍那高等学校の3年A組であるが、学校では三つ編みのおさげに、先生と同じような地味な感じのする眼鏡をかけ、「私は本以外に興味がありません」と言わんばかりの文学少女を演じてる為、誰も目の前にいるクールビューティと言われる雰囲気を持ったメイド少女と同一人物とは思わないだろう。それに、彼女は普段学校では影ながら私を見守っているので、私に声をかける事はないから、私と彼女に接点があるなんて学校のみんなは誰もそんな事は思っていないだろう。


「桔梗。計画通りに先生を先生のマンションの部屋まで運んでちょうだい」


「かしこまりました」


桔梗は表情一つ変えずに、先生をお姫様抱っこの要領で抱える。それを、若干羨ましいと思いつつも、私はふとある事を思い出し、追加の指示を出す。


「あぁ、それと。先生のに関しては、私がしたいので、私が先生のマンションに行くまで、先生を布団に寝かしたまま何もしないように」


私が追加の指示を出したら、桔梗の目が若干が細まり、ジッと私を見つめていた。その目が「この変態お嬢様め」と言ってるような気はしましたが、私はあえて無視すると、桔梗は諦めたように溜息をつき

「かしこまりました」と言って先生を抱えて移動し始めた。


「はるちゃん。本当にやるんだな……」


私にそう声をかけてきたのは、この居酒屋の店主で、実は私のお父様の無二の親友で、私も彼の事を「おじさま」と呼んで慕っています。この居酒屋が西園寺グループの系列店なのもそういった経緯があったりもします。


「おじさま。ご協力ありがとうございます」


私はにっこりと微笑んでおじさまにお礼を言った。実際、先生がおじさまの営んでいるお店の常連でなかったら、こうも上手く私の計画は運ばなかっただろう。本当におじさまには感謝しかない。


「いや、まぁ……はるちゃんの頼みだしねぇ〜。それに……真由美ちゃん。毎回うちに来てはそんなに強くないのにお酒飲んでは、「私だって結婚して普通の幸せを……」ってボヤいてたからねぇ〜。早く幸せになってもらいたいって思ってたからねぇ〜」


「大丈夫ですわ。先生は西園寺グループが……いえ、この私が絶対に幸せにしてみせますから」


私がキッパリとそう断言すると、おじさま苦笑を浮かべ「はるちゃんがそう言うなら間違いなく幸せになるだろうねぇ〜」とそう言われた後


「そういや……ずっと気になっていたんだけど……はるちゃんは何でこの計画を高校入って実行しなかったんだい?」


「その話ですか……」


おじさまのその質問に私は思わず苦虫を潰したような顔をしてしまう。


「それは……あのクソ総理大臣のせいですわ」


「総理大臣が何を……?って、あぁ、そういう事かい……」


おじさまも何かに気づいたように溜息をついた。そう。あのクソ総理大臣が無能な政策で女性の18、私がこの計画を遅らせる事になった最大の要因である。


「まぁ、2年遅らせた分じっくり先生の事を理解出来たのと、総理大臣の弱みを握って色々動きやすく出来たのは良かったと思いますが」


「総理大臣の弱みを握ったって……」


私の発言に若干おじさまが引いてますが、あの無能総理大臣のせいで私の長年かけた計画が遅らされる結果になったのだから、これぐらいの報復ぐらいは普通であると私は考えている。


「それでは、おじさま。まだバイトの途中なのですが、私は先生の介抱の為にここで抜けさせていただきます」


私はそう言ってにっこりと微笑んで一礼し、私は待ってないと言わんばかりに足早に先生のマンションへと向かって行った。





「しかし……うちの子が知ったら……絶対怒り狂うだろうなぁ〜……」


そんなおじさまの呟きは、長年温めた計画を早く実行したい私の耳に届く事はなかった。

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