行きつけの居酒屋にまさかの……

私はいつも通りコンビニでお弁当を買って家に帰ろうかと思ったのだが、今日の教頭の言動や田中君の言動などが頭をよぎり、私はついフラフラといつも立ち寄っている居酒屋さんに足が行ってしまった。


「いらっしゃい!おっ!真由美ちゃん!いらっしゃい!いつもの席なら空いてるよ!」


この居酒屋「春秋夏冬はるあきなつふゆ」の店主のおじさんが、私を見ると愛想の良い笑顔を浮かべそう言ってきた。私は嫌な事があると必ずこの居酒屋に来るので、もう店主に顔を覚えられている。


私は店主に軽く頭を下げて、店主が言っていた私がいつも使っている席に向かう。そこは、本当に見事なまでに端にある畳の席だ。こんなに端にある席なので、他のお客さんの目にもとまらず飲めるので、独り身の私には最高の場所なのである。


「ご注文をお伺いします」


私が席に座ると、女性従業員が私に声をかけてきた。随分と若々しい声で、あまりこの店では聞いた覚えがないので新人のアルバイトさんだろうか?けど、この凛とした涼やかな感じがする声……どこか別の場所で聞いた覚えが……


「とりあえず、ビールと。後、この本日のオススメのおつまみとお魚を……」


とりあえず私は気にせずメニュー表を見ながら注文をし、ようやくメニュー表から顔を離して、その女性アルバイト店員らしき人を見て……固まってしまった。


「はい。ビールに本日のオススメのおつまみとお魚ですね。かしこまりました。少々お待ちください」


そう言ってにこやかに微笑んだ女性アルバイト店員らしき人の正体は……


「さ……!?さ……!?西園寺さんッ!!?」


私の叫びが居酒屋中に響き渡る。正直、私じゃなくても彼女を知る人なら誰でも驚きの声をあげていただろう。


何故なら、その女性アルバイト店員らしき人は、自分が受け持ってるクラスの生徒。「高嶺の花」だとか「学園のマドンナ」と学校中で絶賛の声を集めている西園寺さいおんじ 遥香はるかだった……

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