ついにこれで独り身は私だけ……いや、もう一人いたわ……

時間はあっという間に過ぎて、もう部活をやっている生徒も下校して、私も今行われている教員の定例会議が終われば帰宅出来る時間になった。


「えぇ〜。さて、ここで皆さんに重大発表があります」


定例会議の進行を務めていた教頭が、突然勿体ぶったような言い回しをしてきた。一体何があるんだ?と周りの教職員がザワつき始めるが、私はただただ黙って教頭の話に耳を傾けるだけに留める。


「実は………………浅井先生と玉木先生が昨日結婚いたしました!!」


教頭のその言葉に、皆が「おめでとう!!」という言葉と共に、浅井先生と玉木先生に拍手を送る。祝福の拍手を受けた2人は照れ臭そうに頭をかいたりしながら、「ありがとうございます」と皆に感謝の言葉を述べていた。

一応、私も2人に拍手を送った。まぁ、なんとなく2人が結婚するだろうなぁ〜というのはなんとなく分かっていた。2人共、新任教師だけどお互い付き合っているのはすでに周知の事実で、結婚秒読みだろうと言われていた。


この結婚発表により、この学校で結婚していないのは私だけになったなぁ〜……いや、一応1人だけ独り身がいるか……


「これでうちの学校で独身はいな……おっと!これは失礼。失言でしたな」


教頭がわざわざ私をチラ見しながらそう言ってきた。私は「お前もだろうが!!」と言葉に出そうになるのをグッと堪えて我慢して俯くだけに留めた。

まぁ、と言っても向こうは自分の方が上だと思っているだろうなぁ〜。なんせ、教頭は一応1回は結婚を経験している身だし……噂によると、教頭の誰にでもするセクハラ発言に嫌気がさして奥さんが離婚届を投げつけたらしい。なので、教頭は一度も結婚していない私とは違い、バツイチの独身である。



まぁ、そんな2人への結婚祝福ムードで場が湧いているが、私はそんなの関係ないと言わんばかりに、帰宅準備を整えて帰宅しようとする。


「すいません。それではお先に失礼します」


一応、私は皆にそう一声かけて帰宅を開始する。2人の祝福ムードに湧いている現状で、私の声に耳を傾けている人は誰もいなかった。まぁ、元々私はあまり目立つ存在でもないからいつも通りの反応だ。


「あぁ、高橋先生。待ってください」


今日も何事もなく普通に帰れると思っていたら、そんな私に声をかけてきた人物がいた。あの教頭である……

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