厄介な手紙ばかり


 お手紙が、桜子さんの担任の先生より届くのです。

 ……はしたない言動が見受けられます、ご家庭でしっかりと躾をお願いします……


「まったく……桜子のお陰で、手紙恐怖症になりそうだわ……」

 この後、いつものとおり、桜子さんにガミガミと怒っていた梅香さんでした。


 そんな中、津野田学塾から荒井めぐみについての苦情が、トウキョウメイドハウスから転送されてきました。


 ……はしたない行動が見受けられます、ご家庭でしっかりと躾をお願いします……


 どうもお友達と映画を見に行き、痴漢に会い、警察に通報、事情聴取されたらしいのです。

 で、学校側の見解として、そんなところへいってはいけない、と、家庭内でも注意して欲しいという内容です。

 

 織田千代子さんを呼び、手紙を見せ、今回のことでは叱責を受けることはない、がしかし、女性として用心に越したことは無いので注意させます、と返事を返しました。


 しかし美子さんが一言、

「そんなもんほっときなさい!都女子の女専課程へ編入させなさい」

 と怒ったようで、めぐみさんは目出度く都女子のメイド任官課程に特別編入となりました。

 案外にめぐみさんは喜んだようです。


 サンモール高等女学校から、左藤文(さとうふみ)についても苦情がトウキョウメイドハウスから転送されてきました。

 ……はしたない行動が見受けられます、ご家庭でしっかりと躾をお願いします……


 どうやらパーマを当てたのが、校則違反らしいのです。


 これは明確な校則違反、左藤文(さとうふみ)さんには梅香さんから直々に注意しました。


 ……やれやれ、お手紙をいただくたびにドキッとするわね……


 でも、最後に特大の厄介ごとを持ち込む手紙が……

 照明女学院からのものです。


 * * *


 ご父兄様へ

 本学園もマルス移転をつつがなく終わり、生徒の皆様も誰一人かけることなく、学業に勤められておられます。


 さて突然ではありますが、本学園は長く経営不振でしたが、このたび不渡り等が発生し、教職員の給与支給さえ、困難な事態となりました。


 学園存続、及び在校生のために、市当局と折衝を重ねてまいりましたが、このたび新入生募集を停止し、現在の一回生が卒業するまでという条件で、市当局の援助を獲得いたしましたが、五年先には廃校となります。


 在校生徒の教育については、支障なく続けさせていただきます。

 とりあえず廃校決定となったことを、お知らせいたします。


 * * *


「廃校?照明女学院が?」

 すぐに足立先生に、どうしてか理由を聞きにいった梅香さん。

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