山下三姉妹


 夜は再びホテルの一室、月曜にはメイドハウスは発足します。

 忙しい梅香さんに代わって、藤子さんが明日の日曜、買い物に付き合うことになっています。

 

 夜話はその日も続き、メイドのことや、宇宙鉄道のことなど、色々な事を桜子さんは聞きました。


「梅香姉さま、美子様は女性がお好きなのですか?」

「好きでしょうね、皆さんから、色魔と呼ばれていますから、寵妃はすごい数なのよ」


「大奥を想像すればいいのですか?」

「当たらずとも遠からず、というところかしら、ただね、陰湿なところはないわね、負けず嫌いな方は多々おられ、競争はありますけど」


 藤子さんが、

「お国柄ですよ、アメリカの方々は、概ね負けず嫌いだから」

「じゃあ私はアメリカ人なのかしら、なんとしてもチョーカーがいただきたいのだけど……」

「ねえ、梅香姉様、ご寵愛をいただくには、どうすればいいのでしょう?」


「桜子は十二歳よね、女の印はまだなのでしょう、早いのでは?」

「女の印?何ですの?」

 桜子さんのこの返事に、二人はあわてました。


「学校とか施設では教えないの……だったかしら」

「そういえば尋常小学校では教えませんよ、そもそも母親が教えるはず……私は姉さまから、教えていただいたのですから」


「そういえば三月の初めに、施設の六年生の女の子ばかり集めて、体についてのお話が、看護婦さんからあるけど……」

 

 施設には戻らない桜子さんですから、二人はあわててしっかりと教えたのです。

 ただ藤子さんは知識があまり無く、梅香さんが教えるのですが、そこはその道を知り尽くしています。

 かなり脱線した知識を、授けてしまいました。


 桜子さん、その為か自信満々、表には出しませんが、絶対に自分は、チョーカー持ちになると決めています。


「私、美子さまに身売りしたのですから、お仕えするのがスジですわ」

 これが口癖になっています。

 

 ついにミヤコ・メイドハウスは発足し、山下三姉妹も目出度く引越しが終わり、桜子さんも照明女学院の一回生、なんせリングを持っている生徒が、入学したのですから注目の的です。

 制服など着てお澄ましすれば、絵に描いたような美少女さんです。


 ただ口癖がね、時々梅香さんは、照明女学院からそれとなく苦情を聞かされる羽目になりました。

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