売買契約
「待っていたわ、今日はこれから貸切よ、エールさんが話を聞きつけて、ホテルに電話して、貸切を交渉してもらったの、で交渉成立したから、ここを薦めてもらったわけね、私の耳は地獄耳なのはご存知でしょう」
「美子さま……でも、これは私的なことでして……」
梅香さんの抗議など意に介さずに、
「桜子さんといったわね、私がナーキッドのオーナーなの、でね、頼みがあるのだけど、聞いてくださらない?」
圧倒的な迫力ですから、小学生の小娘さんなど、言葉も無いようです。
なんとか首を縦に振るのが、精一杯ですよね、これ脅迫ではないですか。
「桜子さん、私に買われない?」
さすがに二人の姉があわてます。
「桜子はまだ十二歳になったばかり、夜伽はまだ……」
「変な誤解をしないでよ、購入してメイドさんになってもらうつもり、ならメイドハウス内でも住めるでしょうし、ハウス内から通学すればいいでしょう」
「急なので、すぐに入れる高女を探すことになりますが、私が思うに照明女学院なら可能でしょう」
「今回の土地斡旋の代価を、支払ってあげますから、それに負債は、桜子さんの購入代金で払えるでしょう」
「好きな子が出来れば、その男が代金を精算してくれます、そのぐらいの男でなければ、メイドは嫁には出来ないのは知っているでしょう」
「私の見るところ、桜子さんは十分に資格はありますよ」
「私でも勤まるなら……」
「大丈夫、勤まらなければ、私の目が節穴ということです」
で、あっという間にリングが、桜子さんの指にはまりました。
「さてミヤコメイドハウスに、新人さんが入ったということで、そろそろ皆が来るころでしょう」
で、六条さんなどがやってきてワイワイガヤガヤ、所用で来ていた、左藤文(さとうふみ)さんまでいます。
美子さん、鉄板料理人と、異名をとったことがありますからね、いつの間にか奉行さんをしています。
「マンボ焼き、任せなさい!」
マンボ焼きって、まあいえば一銭洋食の高級版といえばいいのでしょうね。
ネギ焼きなども焼いていますし、ドロ焼きも出しています。
桜子さん、初めてのものもあるようですね。
「桜子さん、これからは一人じゃないのよ、明日は二人が何とかしてくれるでしょうし、メイドになった以上は、私も手助けしますからね、かんばってね、じゃあ梅香さん、後は頼むはね、私、この後少し用事あるの」
そういうと、盛り上げるだけ盛り上げて帰っていった美子さんでした。
「美子さま、良く来てくださったわね、ニライカナイでミリタリーと打ち合わせのはずだったけど……」
しみじみと六条さんが云っていました。
「ねえ桜子さん、美子さまが、ああおっしゃっておられたけれどいいのね」
「はい、お姉さま」
ボーっとしている、桜子さんの返事です。
織田さんが、
「梅香さま、桜子さんは……」
「美子さまにあのように云われて、舞い上がらない女はいないでしょう、こうなったら早くお手付きにと、願うばかりです」
左藤文(さとうふみ)さんが、
「うらやましいわ、私もあんなふうに云われたかったわ」
この後、お開きになりました。
桜子さんは、初めて姉たちと一緒の部屋で寝ようとしたのですが、夜話は延々と続いたようです。
翌日の土曜日、梅香さんは私用で走り回りました。
まず児童福祉施設に挨拶に行き、桜子さんの債務は、鈴木商会の白川京都支店長にお願いして、解決してもうことにしました。
そして照明女学院へは、結構な額の土地購入の斡旋料が支払われましたので、文句無く決まりました。
そのための入学準備、さらには引渡しを受けた宿舎の部屋割りとともに、桜子さんの部屋も決めました。
「桜子さん、皆さんの手前、一番日当たりの悪い部屋だけど我慢してね、常は私の部屋にいればいいわ」
十二歳の少女には、十分すぎる大きさ、まして桜子さんは、個室など持ったことも無い生活でしたから。
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