懐かしい母校
そもそも照明女学院は、近所のお嬢さんが通う普通の女学校、学力も決して高くなく、高いのは学費だけの結構入りやすい女学校です。
超エリートの都女子とは、雲泥の違いです。
そんな普通の私立女学校に、才色兼備でしかなれないナーキッドオーナーの我妹子が、卒業生と名乗って尋ねてきたのですから、受付事務方は舞い上がっています。
「足立先生はただいま授業中ですが、お声をかけてみましょうか?」
「いえ、ご迷惑ですから、出直しましょう」
この事務員さん、機転が利く方のようで、
「後二十分ほどで授業は終わります、六限目ですので、この後は授業はありません、よろしければ、お待ちになられてはいかがですか?」
「そうですね、では待たせていただきましょうか」
という訳で、応接室に案内されて、待つことになりました。
案内から戻ってきた事務員さんに、他の事務員さんが駆け寄ります。
ここの事務員さんは女性ばかりのようです。
「ねぇ、今の方、ナーキッドオーナーの我妹子さんよね、なんのご用なの?」
「足立先生にご面会にこられたの、教え子だそうよ」
「じゃあ本校の卒業生?」
「らしいわよ」
「でも、ナーキッドの女性用軍服とは違っていたような、たしか、ビクトリア朝の雰囲気だったと思うけど」
別の一人が、
「あれは上級者用よ、あの方、かなり上の方よ」
「お名前聞いたの?」
「確か山下梅香とおっしゃったわ」
皆さん、卒業生名簿など出してきました。
「この方よ、えっ、十六年前、とてもお年にみえないわ、お若いわね」
「そりゃあナーキッドオーナーの我妹子さんよ、綺麗でなければ勤まらないわよ、それにこの方、首席で卒業されているじゃないの」
かしましいですね、そこへ校長先生がやって来ました。
珍しく女の方です。
「何をしているのですか!はしたない!」
「本校の卒業生の方が、足立先生にご面会にこられましたので……」
「だからどうしたの!よくあることでしょうに」
受付した方が説明しました。
「オーナーの我妹子、上級軍服……本校卒業生なのよね……名誉なことだわ、お茶はお出ししたのでしょうね」
しっかり忘れていた事務員の方々に、校長先生のカミナリが落ちたのは当然のことでした。
梅香さんは、応接室を感慨深く眺めていました。
別の星に移転したのがうそのようで、十六年前と多少家具や調度品が違っていますが、雰囲気はそのままです。
「懐かしいわね……私がまだ輝いていた頃ね、あの頃は楽しかった……」
物思いにふけっていると、声をかけられました。
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