修了検定に受かった!

 

 しかし、智子さんの免許取得には、問題が山積みなのです。

 鈴木邸では、ささやかな家族会議が開かれています。


「智子さん!お母さんは反対よ!」

 母親の駒子さんが、断固反対しています。

「どうして?学校も認めているわ!」

「鈴木家の娘ともあろうものが、はしたない!運転手さんを雇えばいいでしょう!」

 

「私も反対よ、貴女は美子様の女なのよ、寵妃なのよ、事故など起きないでしょうが、それでも駄目よ、百に一つ、万に一つが、無いとはいえないでしょう!」

 姉である聡子さんも大反対、その上に、父である順五郎さんが、一言いったのです。


「お前、免許試験に受かると思っているのか、運動音痴であろうが」

 聡子さんが、

「確かにお父様のおっしゃる通り、智子が受かるとは思えないわね」

 失礼なことに、安堵の表情を浮かべます。


「いいわ!絶対に受かって見せるわ!」

 

 そんないきさつがありましたが、何とか自動車学校へ通う事が認められたのです。

 毎日午後四時から、教習を受けることになりました、一応教官は女性となっていますが、優しくはありません。


「鈴木さん、縦列駐車ですよ、ハンドルの切り方が逆です!もっとゆっくり!」

「鈴木さん、クランクですよ、ハンドルは素早く!あっ、ぶつかる!」

 

 自動車学校では、超有名人になり下がった智子さん。

 鈴木財閥令嬢の面目、丸つぶれです。


 それでも頑張る智子さん、奮闘努力の御蔭か、何とか修了検定にこぎつけたのです。

 しかし意味もなく、センターラインはみ出しで、一発で中止。


 懲りずに二回目にチャレンジした智子さん、脱輪して一発で中止。


 さらに三度目では、減点がかさんで試験中止……


「やはり受からないようですわ」

 母親の駒子さんと、姉の聡子さんの会話が聞こえてきます。


「悔しいわ、何とか受かりたいわ!」

 焦った智子さん、なんと無謀にも、四回目のチャレンジをしたのです。


 今回は意気込みが違います。

 緊張に身体がこわばりますが、何とか合格したのです。

 といってもぎりぎりの七十点ですが……


「受かったわ!お姉さま、受かったのよ!どうですか、私も棄てた物ではないでしょう♪」

「まだ修了検定に受かったばかりでしょうに、卒業検定に受かってからよ、明日から路上なのでしょう、気をつけてね」


 しかし智子さんはルンルン、最早免許はその手にあるとばかりに、車などの話をしています。

「やはりオープンスポーツカーよね、ツーシーター以外には考えられないわ♪うふふ♪」


「一度訊いてみたかったのだけど、車に乗って、なにをするの?」

「ドライブ♪愛する美子様と二人でドライブ♪ヘラス海の海辺を走って、ミヤコまで行くの♪」


 マルスの日本地域の海は、半径千五百キロの巨大な衝突クレーターが海になったところ。

 トウキョウからノアキス地方にある、ミヤコ近くまで海岸道路が走っており、絶好のドライブコースなのです。


「いけません!そんな危険な事に、美子様を巻きこむなんて、絶対に許されません!」

 聡子さん、かなりお怒りですよ。


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