ラストダンスはわたくしと


 最後に聡子さんが、

「私たちは皆、美子さまは、最後には私のもとへと思っているものです」

「ただそれは自身の願い、事実はいくつもの最後が有ると理解しています」


「それでよろしいでしょう、近頃やっとサリー様のお気持ちが理解できます」

「私たちはそのように願い、信じているということです」

「どうも私には理解できません」

「別に理解しなくても、かまわないのです、美子様に女心の理解は不可能、有名ですからね」

 酷い言われようですね。


「そんなに美子様は酷いのですか?」

 麻子さんが聞きますと、エステラさんが、

「私が太鼓判を押します、ね、ブレンダさん」


「そうです」

 と、断言するブレンダさんですが、恥ずかしげにしています。


 美子さん以外の、その場にいる女はブレンダさんの恋する気持ちを理解しました。

「なるほど……本当に女心は、おわかりになられないのですね……」


 こんな会話が交わされていますが、アイリッシュダンスの舞踊競技は続いています。

 三校の得点は発表されませんが、拮抗しているように思えます。

 いよいよ最後のクラブ対抗ですが、華宮洋子さん『勝った』と確信しました。


 華族女学校のダンス部は、三校の中では実力的に一番上なのです、負けようがありません。

 案の定、誰が見ても華族女学校のダンス部が圧倒的に上手い、一位確定です。


「ラストダンスは私のもののようです!」

 残りのインペリアル・シスターも、白旗のようです。


 華族女学校の一位で表彰式が終了、いよいよ曲が流れ始めます。

 曲は『ラストダンスは私に』、当初の予定と違い日本語訳のシャンソンのほうです。


 ルンルンの華宮洋子さん、吉川美子さんとのチークダンスですよ。

 

 二人とも小さいピンマイクを付けて、踊りながら歌い始めました。

 最初に美子さんが囁くように、洋子さんの耳元で歌います。

 洋子さん、うっとりしているのが分かり、黄色い歓声が会場を包みます。


 二小節を洋子さんが歌います。

 互いに交互に歌いながら、チークダンスを踊っています。

 二人を華族女学校放送部のカメラが、アップで写しています。


 こうしてスリーシスターズの、秋のスポーツ交流戦は幕を閉じたのです。


 この日、華宮洋子さんは、華族女学校の皆の尽力で最良の日を過ごしました。

 心底感謝したのか、華宮洋子さんは寵妃になって以後も、母校に何かと肩入れするのです。


 ただ、さらに笑いの止まらなかったのは、ナーキッドの幹部会の面々でしょうね。

 へそ曲がりの美子さんを、思い通りに動かし目的を達したのですから……


 美子さんは翌日、最悪の日を迎えたのは確かのようです。

 参加できなかった女達に、散々に嫌みをいわれていましたからね。


 さらに優勝景品のように、華族女学校に一週間譲渡され、大変なめにあったようです。

 そういえば朝倉麻子はこの後、華を散らして格子になりました。


  FIN


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