最後は私の元に
「最後は私の希望の曲で踊る事になっています、『Save the Last Dance for Me』簡単な曲ですから、踊るのも簡単です」
「でもなぜ『Save the Last Dance fo Me』なのですか?」
「この歌の歌詞が好きなのですよ」
「でも歌詞は男らしくない――日本語訳は男性を待つ女性の視点ですが、本来の歌詞は逆となっている、作者――ように思うのです、美子様がお気に召される曲ではないように感じますが?」
「いえね、確かにそのまま読めば、そのように取れますが、この曲が名曲と呼ばれる所以(ゆえん)は、作詞者のドク・ポーマスさんは、病を得て松葉づえ無しでは歩けなかった方、そのドク・ポーマスさんが愛する奥さんに捧げた歌詞なのです」
「切ないけど、奥さんを思いやる彼の気持ちを考えながらこの曲を聞くと、胸に響くものが有ります」
「それに彼は、どん底時代のジミースコットさん再起させようと、親身になっていた」
「そして肺がんで亡くなる間際に、ジミースコットさんに、死んだら『Someone To Watch Over Me』――ジョージ・ガーシュウィンのミュージカル Oh, Kay!の中の曲――を歌ってくれと遺言したと聞きます」
「葬儀の席で、ジミースコットさんは一世一代の『Someone To Watch Over Me』を歌い、多くの人が感銘をうけ、そして再起できたのです」
「私はこの、ドク・ポーマスさんの男意気が好きです、確かに御顔は男前とは言えませんが、しかし見事なものです」
「このような方が控えめに、妻への愛を綴る、自らを認識しながら、最後は自分のところへと願う」
「静かですが、深い愛を感じるこの歌詞を、リズミカルに歌うこの曲が好きなのです」
――作詞者のドク・ポーマスは本楽曲を作詞した当時、小児麻痺の影響で脚に金具を付け両手で松葉杖をついて歩くという状態にあったため片手を女性の手に添え、もう片方の手は相手の肩か腰に当てて、ダンスを踊るということができなかった。でも、女性に手を取ってもらい肩に手を当ててもらいながら、自分は松葉杖をついてでも動くから、ラストダンスだけは私のために残して置いてくれ、そして一緒に踊ろう、というドク・ポーマスの思いが詞にこめられているという。
ウィキペディアの ラストダンスは私に より――
「でも、やはり私は、愛する方を待つ女の恋心の方が素敵ですわ、だって日本語の訳詞、私の気持ちそのものですもの♪」
華宮洋子さんが、異議を唱えます。
「そうなんですか?」
「そうなんです!それに色々あちこちに女性を作られるし、待つ私としては、いつも思っていますもの」
「せめて私を忘れないで、最後のダンスは私と踊って下さいと」
「洋子さんのいうとおりですわ!私も最後は私の元にと願っています!」
ナスターシャさんも同調します。
この後、美子さんはかなり責められています。
群れると怖いですからね、恋する女たちは……
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