『S』への願いがこもります。
会場の体育館は異様に盛り上がっており、一回生の対抗では、華族女学校が一位と思われましたが、得点は最後にならなければ発表されません。
一位は六点、二位は三点、三位は一点、このポイントで争うわけです。
「いいわよ、全力を出したのね、御苦労さま、後は楽しんでね」
三校のインペリアル・シスターは、このようにねぎらっています。
こうして次々と舞踏競技は進み、とうとう四回生が終り、お昼となります。
社交ダンスはくじ引きの結果、最初はオディール、次に都、最後に華族となりました。
なんでも、三人が踊りたい踊りの動画などを、美子さんに渡し、それを見ただけの美子さん、一緒に踊るのはこれが初めてなのです。
最初はラテンからパソドブレ、曲はエスパーニャ カーニ、セルゲイ プロコフィエフの騎士たちの踊りなどでも良かったかもしれませんね。
美子さん、白いメンズラテンシャツと黒のラテンパンツ、スパンコールが結構入っていて、キラキラしています。
麻子さんはオレンジと黒のツートンのラテンドレス、かなりスリットも入っており、背中もあいています、よくオディールが許したものですね。
かなり情熱的な踊りで、いつもの麻子さんのイメージとは程遠く、妖艶に踊っています、麻子さんの美子さんへの思いが誰にも理解できました。
五分の規定時間が、あっという間に終わってしまいました。
拍手が鳴りやみません。
十分の休憩がとられる予定、といっても美子さんの御着替えの時間なのですがね。
美子さん急ぐのか、五分で着替えてきました。
さすがにメイクや髪形はそのままでしたが。
次はアルゼンチンタンゴ、曲はカミニート
だぼだぼの黒いシャツにネクタイを締め、黒いズボンをはき、サスペンダーなどしています。
晶子さんはキュロットジーンズですが、かなりスリットがついています、上は黒いタンクトップ、カジュアルでかなり挑発的です。
やはり六条楼の娘さん、妖艶なところは麻子さんより一枚上ですね。
美子さんに足など抱えさせていますからね。
滑るように踊る二人、明らかに晶子さんが誘っているのが誰の目にも明らかですね。
このあたりで、黄色い悲鳴みたいな声が会場を包みます。
ここでも六条晶子の『S』の相手は、吉川美子と認識されたようです。
晶子さん、相当練習したのでしょうね。
さすがにインペリアル・シスター、セミプロ級ですが、さらに美子さんが上手くリードしています。
最後はウィンナ・ワルツで、曲は美しき青きドナウ。
美子さん、燕尾服など着せられています。
別に女同士なら構わないのですけどね。
二人が出てきます。
洋子さんは純白のスタンダードドレス、手には花束など持っています。
そして曲が流れ始めると、手を取り合い優美に踊っていますが、どうもバレエが入っていますね。
小柄なはずの美子さんが、洋子さんをリフトしているのです。
洋子さん、コール・ド・バレエ――バレエ団にもよるが大体一番下当たりの階級、つまりセミプロよりは確実に上――ぐらいの実力はお持ちです。
先ほどの二人と違い、優雅なダンスです。
洋子さんが陶酔したような顔で踊り、見ている女学生さんはうっとりしています。
ダンスが終わると、大歓声が会場を包みます。
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