私も踊って欲しかった
ナーキッド幹部会の思惑なのか、秋の交流戦にさりげなく次の方たちが、鈴木聡子さんと一緒に見に来ていました。
ナスターシャ・ウラジーミロヴナ・ロマノヴァさん
エステラ・ウィンザーさん
この二人は堂々と、チョーカーなどを付けています。
当然、クセーニャさんとブレンダさんが付き従っています。
案外にこの二人、仲がよいのですよね。
まぁ掛け値なしのプリンセスですからね、華族女学校にはお似合いです。
九月の終りに、マルス移住の話が広まり、五十六年後に、このテラに衝突する小惑星ルシファーが、破壊されたこの頃、ナーキッド・オーナーがどのような存在かは知れ渡っています。
ただ何処の誰かは、いまだ公表されていません。
「美子様、応援に来ましたわ♪」
ナスターシャさんが嬉しそうに、声をかけてきました。
「応援といっても、私は競技に出ないのよ」
「社交ダンスを踊りになられるのでしょう?」
「大きい耳ですね、誰から聞いたの?」
「華宮洋子さんです、各地のハウスには中継が届くそうですが、ナーキッドの勧めもあり、見に来たのです」
「ナーキッドの思惑はどうでもいいのですけど」
……まったく、ナーキッドの叔父さまたちは……二人がこんなところにいれば、私の事が明るみに出そうじゃないですか……
またリークですか?上手いものですね。
私の女好きを、当然視する風潮を作りだすためですかね……
この二人が、スリーシスターズのインペリアル・シスターと親しく話せば、それは同列の女と推測できますよね……
日本に対しての、リップサービスもあるのでしょうね……
ほらね、記者さんたちの動きが、あわただしいですね……
「美子さま、社交ダンスもされるとか……相手の方がうらやましいですわ、私も踊って欲しかった、足も治して頂いたのですから……」
エステラさんの、嫉妬が少しばかり混じった言葉です。
そこに三校のインペリアル・シスターがやってきましたね。
……ナーキッドの思惑通りになるじゃないの……
「華宮さん、見に来ましたわ、少し羨ましいわね、美子様と踊れるなんて」
ナスターシャさんも、心底羨ましいと思っているようです。
「申し訳ありません、三人で少々私欲に走ったのは確かです」
華宮さんは顔見知りですので、親しそうに話していますが、六条晶子さんと朝倉麻子さんはかなり固まっています。
それでも場がなごんでいきます。
鈴木聡子さんがいるからです、ナーキッドの序列では鈴木聡子さんの方が上で、人あしらいの手腕が半端ではないからです。
大体に、美子さんの女たちの不文律として、足の引っ張り合いはご法度、不思議に守られるのです。
本能的に、美子さんがそのような女を避けるからでしょうね。
「そろそろ始まります、ゆっくり見て行って下さい」
そんな時、美子さんの携帯が鳴ります。
出てみると鈴木順五郎さん。
「美子様、昼の時間少し余っているでしょう、ナスターシャ嬢とエステラ嬢の二人を、踊りに誘ってくださいませんか?」
「私が露出してもいいのですか?」
「そこにいる報道関係者は、全て我々の息がかかっています」
「パパラッチより、ナーキッドのオーナーらしき人物が二人のプリンセスと踊っていたという、スクープ写真が撮られた」
「そしてその相手は、さらに三人と踊っていた」
「かなり無理してとった写真が五枚、何とか分かるのは二人のプリンセスの顔と全員の服、そのうちの一枚には観戦していたギャラリーも写っており、良く見ると制服が分かる」
「なるほど……」
「疑心暗鬼の日本国民は安心するでしょう、インターネットの掲示板に、五枚の写真についてのスレが立ちあがり、解説が乱れ飛びますから」
「どこまでも利用しますね、分かりました」
「恐れ入ります」
美子さんがナスターシャさんとエステラさんに説明していました。
少しばかり聡子さんがむくれていましたけど、お父様に八つ当たりの相手をしてもらいましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます