優勝景品は美子様


 六条さんはこの日から、秋の交流戦まで都女子学園へ、深草近郊のシティホテルを、聡子さんが押えてくれています。

 六条さん、何が何でも勝つ気でいます。

 

 それはオディールでも同じで、久しぶりに登校してきた朝倉麻子さんが、異様なのりで陣頭指揮を執っています。

「麻子さま、病み上がりなのですから、お体にさわりませんか?」


「大丈夫です!恋する女性は強いのです!これを見てください!」

 釆女の指輪が薬指に……

 

「ご婚約は破棄されたとか……」

「こんな私でも、拾ってくださる方もおられるのです」

「相手は卒業までいえませんが、お慕いしております!」

「この度はその方に、私を認めてもらうチャンスなのです!」


 ただ朝倉麻子が、吉川美子を見る目がただならぬのは、周りの女学生にきずかれています。

 それとなく『S』の噂が流れています。


 しかし華族女学校では、さらに盛り上がっています。

 華宮洋子が吉川美子と『S』というのは、誰もが知っている事。

 オディールの女ごときに、自校のインペリアル・シスターの相手を取られるのは、屈辱以外の何物でもない。


 まして交流戦では、ほとんどオディールに負けたことが無い華族女学校、雪辱の意味もあり燃えているのです。

「オディールといえど吉川美子様は特別よ、ラストダンスは華族女学校の華宮様と、踊っていただくべきよ!」

「そうですわ、我が校が優勝したら、一週間でいいからこちらの授業を受けていただきませんか、単位は互いに認めているのですから」


 この華族女学校の提案に、都女子学園も同調します。

 インペリアル・シスターの会合は、相当にもめたのですが、「勝てばいい話」との華宮洋子の一言に、朝倉麻子が折れたのです。

 

「優勝したら吉川様が、一週間こちらにこられるの?」

 都女子学園でもすごい盛り上がり、ラストダンスをインペリアル・シスターが踊れば、吉川美子がやって来る。


 前回、吉川美子が来校したとき、都女子学園の女生徒のモーションはものすごく、富田沙織がいなければ、拉致されていたのではといわれています。

 

 とにかく、スリーシスターズの秋のスポーツ交流戦の余興に美子が踊る、この話は、ナーキッドの幹部会に知られたのです。

 幹部会が良からぬ事を考えたのは、確かのようでした。


 十月の第二日曜日の体育の日に、スリーシスターズの秋のスポーツ交流戦が始まったのです。


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