インペリアル・シスターの陰謀
帰りのタクシーの中で洋子さんが、
「聡子さま……美子様、麻子さんとお友達になられないでしょうと……」
何を意味するかはすぐに分かります。
自らも病を治してもらった華宮洋子さんです、捨てては置けない気持ちなのでしょう。
「本気?晶子さんはどう思うの?」
「いいのではないかと……ただお家の方が……」
「それは無いとおもうわ、まあこの話、父に伝えておくわ」
翌日、スリーシスターズの秋のスポーツ交流戦は舞踊競技、アイリッシュダンスの群舞で勝敗を決めると、発表されました。
アイリッシュダンスはコンペティション・ダンスとなり、グループで踊るケーリー・ダンスと決められました。
これが発表されたとき、三校のダンス部は気合が入ったようですね。
日時は十月の第二日曜日の体育の日、場所は華族女学校体育館、一チーム四名で、各校ともにダンス部から一チーム、及び各学年代表チームの九チーム、演技時間は一チーム十分、十分の休憩の後、次のチームが演技する。
朝の八時から低学年から順に始まり、一時間ごとに次の学年となります。
最後の五時からは、ダンス部対抗戦です。
本当は秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい)に行いたかったのですが、学年選抜も参加となり、練習時間が必要になったのです。
春の交流戦はマスコミに公開されますが、秋の方は放送は非公開、女性に限り観戦は許可とのことです。
カメラも持ち込み禁止なのですよ。
ただ各校には華族女学校の放送部が、パスワードつきでインターネットライブ中継をするそうです。
オディールも都も、この日は登校日となりました。
そんな中、朝倉財閥の当主に、総理大臣秘書官からの書簡が届きます。
それを読んだ当主は、あわてて鈴木商会本店へ。
翌日、朝倉財閥は鈴木商会からの資本を受け入れた事が、発表されたのです。
朝倉麻子の指に、釆女のリングがはまったのは、いうまでもありません。
遺伝子疾患なども治り、元気にオディールに戻ってきています。
以後三人のインペリアル・シスターは、良くお茶などしています。
十月の初め、満州で動乱がはじまり、世界は徐々にきな臭くなる頃、美子さんは当面の問題を片付け、ゆっくりしていました。
そんな時、華宮洋子さんが、美子さんを捕まえています。
「三校のインペリアル・シスターのお願いがあります」
「嫌な予感がしますけど、何でしょうか?」
「お昼に三校のインペリアル・シスターが、社交ダンスを踊ることになったのですが、相手を全校生徒の投票で決めたのです」
「それで相手というのが、吉川美子様が第一位……しかもオディールのみならず、都も華族も美子様なのです」
「茜様が美子様は踊りが大変お上手、ぜひ踊っていただきなさいと……」
「まったく、余計な事をぺらぺらと!分かりました!躍らせていただきます!」
「でも私が三つ踊るの?お昼はどうするの?」
ちっとばかり、はしたないお言葉です。
「そこで、春の交流戦の参加メンバーの審判は、取りやめとし、昼の社交ダンス出場者は負担を回避するために、選抜チームに入らない事となりました」
「事後承諾で申し訳ありませんが、お願いします」
華宮洋子さん、有無を言わさぬ迫力です。
たじたじの吉川美子さん、うなずくしかありませんでした。
結局さらに要求があり、最後に優勝校のインペリアル・シスターと踊ることを、承諾させられた美子さんでした。
六時から表彰式の後、六時半から優勝校のインペリアル・シスターとの、再度の社交ダンスらしいのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます