ヒトの歴史やそれをとりまく人々の死を、犬でありかつ不死者であるという特異な生き物視点から切り取った、とても印象深い作品。ストーリーの背景は、教科書で読んだことのあったり、リアルタイムで遭遇した史実ばかりなわけですが。こうして読むと、ヒトの愚かさや儚さを哀しく感じるというか。そして、ヒトでも動物でも誰かと理解し合えないという点に拘ったり、そういう相手と関わりたくないからと遠ざけたりするところがリアルだなぁと。私の生きる目的ってなんだろうな、と改めて考えさせられました。
ある日生まれた犬は、何も食べずとも死ぬことはなかった。様々な犬や出来事に遭遇しながら、長い長い時をぼんやりと生き続けてきた犬は、やがて何を思うのか……簡素な最後の一行が、何故か頭から離れません。