第52話 ょぅι゛ょとダンジョン
入り口の陰気な雰囲気とは一変して、洞窟の奥はあからさまにダンジョンめいていた。
どんな感じにダンジョンかというと、最初にたどり着いた中くらいの部屋の壁一面に白スプレーや黒スプレーなどで色々な落書きがされており、そのどれもがこのダンジョンに先にやってきている冒険者たちのメモ書きのようだったからだ。
要約すると、「このフロアは簡単!」
「もう随分と先客が来てるみたいだな」
カチャーが腕組みしながら壁を眺める。
アリスは壁に描かれた地図を見て迷路のどちらに進もうか考えているところだった。
よくよく壁の落書きを見ると「簡単!」の文字にはバッテンが書かれており、上の方にはアリスたちの知らない文字が書かれていた。
「これは……なんて書かれてるんだ?」
アリスが言うと、カチャー一同が黙ってその文字を見つめた。
「分からん」
「とっとりあえず進んでみよーよ!! 再生回数のためにっ!!」
カチャーとジョルジュがそれぞれ感想を言うと、一人アリスたちの言葉が分かってない風のラマーがはっきりと頭を横に振った。
「こいつ絶対わたしたちの言葉分かってるよな?」
アリスがすかさず突っ込むと、ラマーは大きく頭を横に振って否定した。
「絶対わかってるな」
「まあここで立ち止まってるよりは進んだほうが生産的だな」
「そうだそうだーっ」
「多数決を取ろう。この洞窟を、右に行くのと、前に行くのと左に行くの。どっちに進む?」
「……それはリーダーのわたしが決めることだろう?」
カチャーの言葉を抑えて、アリスはこほんと小さく咳払いをする。
「前に行きたい人キョシュっ!」
すかさずジョルジュが手を挙げた。
アリスも手を挙げる。
カチャーは二人を見て両肩をすくめた。
「二人がそう言うなら、あたしは従うよ」
「ふふんそうだろう。なんてったって、あたしがリーダーだからな」
ラマーは何か言いたそうな顔をしたまま、表情だけで抗議の意思を示した。
しかし一同はラマーの懸命の顔芸をスルーして洞窟の奥へと進む。
残されたカメラマン、ラマーはしぶしぶ三人の後に着いていくのだった。
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