第47話 ょぅι゛ょとゆーちゅーばー
◆
けも耳幼女四人が穴の中に飛び込むと、穴の先は不自然に明るく広い作りになっていた。
穴の出入り口自体は小さなものだったが、それは長年人の出入りがなかったせいで土砂が流れ込み自然とフタのようになっていたかららしい。
で。
一番最初に穴に飛び込んでいたジョルジュが土砂を滑り落ちて一番下。次にアリス。カチャー。カメラマン役のラマーが続き、四人そろって団子状に固まっていた。
「ん? ダンジョン?」
四人の目の前には『ダンジョンはこちら、キョリ500メートル』という小さな立て札が立っていた。
あからさまにダンジョンの案内板が建てられていたのだ。
「これ、あからさまにダンジョン……ていうか、誰か用意した感じだよな?」
アリスが立ち上がり頭を抑えながら言う。
「ただ……いちおう、聞いてた通りだな。少々うさんくさいけどな」
次にカチャーが立ち上がって、服についた土をぽんぽんと払う。
ジョルジュはむすーっとしたまま、地面に突っ伏して動かなかった。
それで最後尾には、アリスたち三人を撮影しているラマーがいる。
「で、どうすんだい隊長」
「ん?」
「冒険だよ冒険」
アリスが唐突に役? を与えた格好になったので、役を与えられたジョルジュが固まった。
「タイチョウ? わたしが?」
「ダンジョンに入るつもりだったんだろ? そんで、ダンジョン最奥にある白い謎の粉を手に入れて家に戻る。アニキがその粉を使って料理を作る、ジョルジュ、アンタが今回の先頭だぜ」
「先頭。……先頭?」
「よくわかんねーけど、センターとか言やいいか?」
だんだんめんどくさくなってきたアリスが投げやり気味に言うと、そのアリスの様子と、戸惑うジュルジュの様子をラマーがしっかりとカメラで録画しているのだった。
「お、おう。つまりわたしがセンターで、この冒険の主役? え、あーもうカメラ回ってるってことはッ……うーぅおっほん!!! えーこんにちは! 今日はですねェー! 町の外れにある謎のダンジョンに潜入してみたいと思います!!!!」
ジョルジュがカメラに向かって謎の他人行儀風な解説を入れ始め、アリスはその隣で顔をゲンナリさせた。
「今日わたしの冒険を手伝ってくれるのは、友達のアリスちゃんとー!」
「だーッ!! 顔は映すな! あと名前も言うなッ! わたしはおまえの友達じゃねえ!!!!!」
腕を絡ませてくるジョルジュからアリスは懸命に離れようとしたが。
こいつ、意外と力が強いぞ?
「友達のカチャーですっっ!!!!」
「どもー」
カチャーは何故か諦め顔でカメラに手を振っていた。
「今日はですねー! これからダンジョンの中にある白い粉を採取しに行くんですけど、これからどんなモンスターが出てくるのか全っ然下調べとかしてないんですよー! なのでこのジョルジュちゃんが体当たりでダンジョンの中に入っていって、これからじっきょーちゅうけーしていきたいとおもいますっ!!!!」
ジョルジュはあからさまにハイテンションだった。
この環境を用意してジョルジュにそういう役を振ったのはアリスだったが、自分がおもっていた以上にゆーちゅーばーなるものがうざいと思った瞬間でもあった。
アリスは基本、ダウナー気質の単独行動主義者なのだ。
「いやーこわいなーっ! ねえアリスぅ!! このダンジョンって危険なモンスターとかいないの?」
「あ゛ぁ? しらねーよ、んなもん」
「またまた釣れないなあ〜、どうせなんか知ってるんでしょう〜?」
「あ゛あ゛あ゛あああああっ! わたしに引っ付くなコンニャロウっ!」
「ラマー! わたしちゃんと映ってるゥ!?!?!?」
ジョルジュがキラキラした目でカメラ役のラマーを見ると、ラマーは黙ったままウンと頷いた。
その様子をニマニマしながら、カチャーが黙って見ている。
「アリスぅ〜、おまえさん、そうやって人に気を使うなんてことできたんだなあー? あたしはしらなかったよーお前がこんなに他人に優しかっただなんて」
「うるせえ。うちに住み込んでるのにいつまでも暗いまんまじゃ困るから、ちょっと気を遣ってやっただけだ」
「ほーーーー。そーかいそーかい、まあそう言うことにしとくよ」
「……後でぶっ飛ばしてやるからカクゴしとけよカチャー」
「おお怖い」
カチャーがあからさまにおどけて見せた。
「ところで動画の編集とかどうするんだい。プロの編集ならうちのツテで用意できるけど」
「!」
ラマーが無言でカチャーを振り返った。
しばらくカチャーとラマーの間で、無言のなんらかのやりとりがされたらしい後、カチャーが驚いた顔で言った。
「マジで、前に編集の仕事もしてたの?」
「……そうなの?」
アリスはカチャーとラマーの間で顔を左右に振った。
「てかどこで会話が成り立ってるの???」
「意外と何でも屋だなラマー」
「!」
ラマーが親指をぐっと立て、続けて先頭を行くジョルジュにカメラを向けて追いかけていく。
「いやー。逸材だなラマーは」
「おい」
「なんだよ」
「いま、どうやってあいつとコミュニケーションとったんだ?」
アリスの問いかけに、カチャーはふふんと鼻で笑い小さな胸を指でトントンと叩いた。
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