第45話 ょぅι゛ょと冒険
そしてそして。
幼女一行はダンジョン入り口前までやってきたのだった。快速バスで。
バス停を降りるとそこは港湾都市だった。
周りに人気はなかったが、代わりに巨大なコンテナヤードがあり、大量の大型トラック(木造の馬車)が片道三車線の大通りを爆進していた。
高架のバス停留所から道の下に降りると、雑草とあぜ道しかないような場所だった。
「帰りたい」
アリスは率直に思ったことを言った。
チュウゴク? 語しか今まで話していないアイシングラマーがウンウンとうなづき、ジョルジュもうなづく。
「ダンジョンってのはこの先だ」
カチャーが縦折りの観光マップを広げて指さした。
鈴虫が草の影でコロコロと鳴き、幼女一行が少しでも動くと草の隙間から様子を伺っていた小虫が勢いよく飛び出てまたどこかの草むらへと飛び込んでいく。
「おまえの情報はあてにならないって、今さらだけど思った。わたしは帰りたいぞ」
「まあまあ。歩いて5分くらいらしいぞ」
「ああ。んー、まあ、見るだけなら見てやってもいいけど。それ本当にダンジョンなのか?」
「作ったやつがパンフレットまで用意して呼び込んでるんだから実際あるんだろ?」
アリスは、うさんくせえ、と思った。
「なんでダンジョンの方からわたしたちを呼ぶんだよ。なんなの。遊園地かなんかなの?」
「体験型テーマパーク、って書いてあるな。『腕に自信のある冒険者求む。ダンジョンの最奥には望み通りの宝が眠るが、数々のトラップ、魔物、数多の試練が訪れる冒険者たちを待ち受けているであろう』」
「このまえの『ぼうけんしゃのもり』みたいな、幼稚な気配がする……」
「言ってろ。ああ、着いたみたいだぞ」
カチャーが指さしたのは、畦道脇にかろうじて跡が残っている一本の獣道だった。
アイシング・ラマージョルジュが怪訝な顔をして、ジョルジュはあからさまに怪しそうな顔をした。
「おいおいふざけてんのか? こんなところにお宝が眠ってるって言うのかよ」
「知らないのか? お宝っていうのは、ここに来たことのある誰かが落としていった貴重品だぜ。そしてここは辺境にある帰らずの洞窟への入り口だ」
「なんだそりゃ。まあいい、儲け話ならアリス様はなんだってやってやるぜ、街の掃除屋、ゴミ拾い係、迷子の預かり係に地域見廻り隊もな。わたしゃ帰るぜ!」
「待ーちな! おまえ、あの男の店を手伝いたいんだろ? ここにある、とっておきのヤクってやつを持って帰りたいって思わないのか?」
「ああ思うさ! けどこんなガキが喜びそうな草原の秘密の隠れ家なんてところにそんなうまい話なんかねえ!! いや、逆にあり得るかも知んねえな! おかしいだろこんな所にお宝が眠ってるってか!?」
「あるって書いてある!」
「じゃあ行くしかねえな!!」
アリスは懐から白い錠剤を取り出すと、一錠だけ指で摘んで口に放り込み奥歯でぎゅーーーっと噛み締めた。
「くぅーーーッ!! お宝のニオイがしてきたぜ!!!!!」
……ムリやりそんなふうに言っているように見えなくもない。
「おいジョルジュ! おまえ、いつもカメラ持って後ろ歩いてたよな!?」
らりった目でアリスがジョルジュを睨みつけた。
ジョルジュの方はというと、突然話を振られてビクッと体を硬直させていた。
「おい、カメラよこせ」
「こ⭐︎これはー……」
「いいからさっさとよこせ!! おいラマー! おめー、機械いじれるって言ってたよな」
むっつり無表情のラマーはアリスに話題を振られて、とりあえずと言った感じで無表情でうなずいた。
「ラマー、m今日はオマエがカメラマンだ。ジョルジュは前に行け」
「ええ」
「いいから行け!! ○されてえねのか!?」
小柄なアリスがジョルジュの背中を蹴り、早速カメラで録画を始めたラマーがその一部始終を収め始めた。
「ライブにしよう」
「ライブ。ら⭐︎ライブ!?」
「いーから歩けっ!!」
アリスは存在しない拳銃を持つふりをすると、地面に向けて一発だけ銃弾を撃ってみせるマネをした。
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