第5話 幼女と大脱出! しかし

 錆びたピックアップトラックに幼女五人が乗り込むと、さすがの大人向けトラックでも車内は窮屈になった。


 なので、M134ミニガンを手に持ったジョルジュが荷台の方に乗り込み、乗車スペースの屋根あたりにミニガンを固定する。

 荷台だけ、さながら対空機銃を対人用途転換したどこかの武装組織のようになった。


「ラマー、出せ!」

 アリスを含む残りの幼女四人が常用席に飛び乗り、中国系けもみみ幼女のアイシング・ラマーが無駄に窓から飛び乗って中国拳法風の気合いを入れる。


 幼女五人組の中でも、ラマーは特に体が柔らかくて身長も低い方だ。

 ラマーが運転席に立つと、隣に座ったカチャーがアクセルを踏みこみ、そのさらに隣に座ったアリスが腕を組んで前を睨む。手の空いたデイメア・マアがドアサイドに「鍵の救急車」というマグネットステッカーを貼り付けて、トラックは勢いよく急発進した。


「検問があっても、業務用車両は怪しまれにくいんだ」

 デイメア・マアは自慢そうにそういった。




 狭い車内に幼女たちが横一列に並び、荷台ではすでに覆面を外したジョルジュが、アイドルのようなひらひらのスカートをはためかせながらミニガンを構える。

 雪の降る田舎道。

 何台かパトカーが幼女たちの乗るピックアップトラックを過ぎていったが、パトカーは一台も追いかけてこなかった。


「やったぜ! あいつらボクたちのことに気づいてないみたいだ!」

 デイメア・マアが後ろを振り返り腕をあげる。

「あとはプラン通りに逃げるだけだな! ラマー、次の交差点を右に曲がれ!」

「イヤッホォウ! おカネ、使いほーだい☆」

「どうかな! そう考えるのはまだ早いぜ!」

「…………!!??」


 突如、暗い田舎道に人影がよぎる。

 田舎の道はただでさえ道路面状態が悪い。小さな起伏にわだちにぬかるみ、それに雪が降ると視界が一気に悪くなる。

 さらに運が悪いことに、日が落ちていた。


 突然見えた人影に、ラマーは驚いてハンドルを横に切った。




 それは三人組だった。

 一人は鎧を着込んだ大男、もう一人は派手な衣装を着て肌の露出が多い女。

もう一人は年がわかく、嫌に澄んだ目をした青年だった。

 アリスはその男と目が合ってしまった。そのとき、男はアリスを見て笑ったような気がする。



「どっどうした!?」

 車が突然左右に触れ出して、ハンドルを握るハクビシン耳の中華幼女ラマーがハンドルごと激しく体を持ち上げられる。


「くっ車が! ぶつかる、うわあああああ!!!???」

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