第4話 幼女と銀行強盗

「タイマーで起爆するぞ! 物陰に隠れろ!」

 アリスは叫び、仲間のヴ・カチャー、口の悪いデイメア・マア、中国っぽい雰囲気を醸し出す無口なアイシング・ラマーと、M-134ミニガトリングガンを腰だめにして巨大な弾倉をショルダーバッグ式の籠のようにかついだアイドル系のけもみみ強盗幼女ジョルジュ・Mが物陰に潜み、リーダーであるアリスが代表して裏口シャッターに爆弾を仕掛けに前に出た。


 タイマー式の爆弾は、金庫を爆破するための爆弾のテストケースに作ったものだ。威力は高いし、裏口程度なら簡単に破れる。


「いくぞ!」


 大きな音とともにタイマー爆弾が爆発して、裏口が吹き飛ぶ。

「L! 車に急げ!」


 Lと呼ばれた小柄な無口幼女が物陰から飛び出し、裏口に向かって駆け出す。

 出ようとした瞬間、外から猛烈な制圧射撃を食らって青い顔をしながら、無言でアリスを振り返った。


「クソっ、もう警察がいやがる。他に出口はないのか?」

 アリスは隣にいる幼女V、ヴ・カチャーを振り返った。

「設計図通りだと、出口はここと表玄関だけだ」

「アネキ待って!」

 デイメア・マアこと、セキュリティ担当のえるふみみ幼女が手をあげる。


「金庫のドア爆破からまだ2分も経ってない。すると近くにいたパトカーは、どんなに早い車両でも一台だけ。それも交代の送迎帰り。警官はたぶん一人しかいない」

「外にいるサツは一人しかいないってこと?」

 アリスはデイメア・マアに問い詰めた。


「応援のサツが他にもいるんじゃないのか?」

「大丈夫。強盗の前に嘘の通報をしておいた。今ごろ交番の警察官は全員出払ってるさ」

 エルフ耳の幼女は緑色の澄んだ瞳で、アリスを見てふふっと笑った。


「どうする、アリス?」

 幼女全員の視線が、アリスに集まる。

 アリスははやくお家に帰りたかったが、その前に、このちっぽけな強盗稼業を切りのいいところまで進めなければならなかった。



 逃走用の車がすぐ目の前にある。

 自分たちを邪魔する警察は、一人だけだ。



「M、私がドアを開ける。私がドアを開けたら、同時に外の警察をやれ! Lはなにがなんでも車を手に入れろ、他の奴らは援護だ」

「りょ〜かい☆」

ジョルジュMがM134ミニガンとバレる駆動用用バッテリーと2000発入りのショルダー式収納弾倉をがっちゃがっちゃと揺らしながら配置につき、犬耳のヴ・カチャーとエルフ耳のデイメア・マア、ハクビシン耳のデイメア・ラマーがそれぞれの小銃を持って物陰に隠れる。


 アリスは全員が配置についたのを確認し、勢いよくドアを開けて銃を撃った。



「死ねッ! 死ねッ! 死ねッ!!!」


 アリスが撃ってすぐに隠れると、反撃の弾がドア枠を貫通して穴を開ける。


 1……2……3……4……5……6………………7っ!


「ジョルジュいけ!」

「死ぃ〜〜〜ねぇぇぇぇぇぇえええええ〜〜〜〜〜ッ☆」


 ジョルジュMがミニガンを持って飛び出し、親指の安全装置を押しながら外に向かって撃ちまくった。


 黄色い炎が銃口から吐き出され、弾を撃つジョルジュの笑顔が妖しく輝く。

 ほとばしる汗。炸裂する弾丸。

 燃料に引火して吹き飛ぶパトカー。頭を抑えて逃げ惑う警官。。。


「よし行くぞ!」

 ミニガンの全弾を撃ちきりバレルが空回りしているのを見たアリスは、銃を撃ち切って恍惚の表情のジョルジュを無視して他の全員に合図した。

「全員車に乗れ! 脱出するぞ!」


 けもみみ幼女たちは銀行の裏口から飛び出し、路肩に停めてあったオンボロピックアップトラックに飛び乗った。



 遠くからサイレン音が近づいてくる。

 それは、雪の降る片田舎での出来事だった。

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