第11話 足りないもの(2)

「そうね。私は私の良さがある。豊が召喚士で後衛になるなら、私が前衛を務めないと駄目ね! 前衛職で一番難しい職業はなにかな?」


 受付嬢は僕と明日香のやり取りを見て「仲が良いのですね」とクスリッと輝かしい笑みを浮かべた。


 その後に、明日香へ解るように言葉を選んで話し出した。


「本多明日香様なら、数多の武器を扱える『ブレイバー』等どうですか? エクラを使う法術も限定的に扱えるので前衛職業の中では破格の人気を誇ります。ですが、必要な経験値が莫大です。だから、適正ジョブとして除外するのが普通ですが、あなた様の場合は適正ジョブと認められます」


 明日香は二つ返事で「ブレイバーにします!」とこたえた。


 これで、僕は召喚士。明日香はブレイバーと職業が決まった。


 後はギルドに向かって認定してもらう必要があるな。


 そこは受付嬢に任せれば大丈夫……、かな?


 受付嬢はギルドカードを見ながら慣れた手つきで、洋紙に筆で何やら紹介状を書いていた。


 受付嬢は一〇分もすると、紹介状とギルドカード、あと、封筒の三つを手渡してくれた。


 なんだか激しく、理不尽な予感がする。


 明日香と目を合わせた後、渡された三つの書類を再確認した。


 受付嬢は人差し指を立てて、嬉しそうに語った。


「わたしから、各ギルドへの紹介状を書かせて頂きました! これを持って各ギルドに向かえば認定書を発行して頂けます! 冒険者、最初の試練! それはもう始まっているのです! その名も『認定証を生きて窓口まで持って来る!』です!」


 嫌な予感は、ここぞって時に当たるものだ。


 若返って、最高の職業に就けるって時にそう来たか。


 受付嬢は満面のドSな表情を浮かべ、僕たちを見ては語った。


「簡単に最高職に就けると考えたら大間違い! 冒険者ギルドのモットーは『経験に対して平等な経験を与える』と掲げています! 経験のない者には簡単に! 経験がある者には難しく! それが冒険者の道です! この広い最終都市ユーグの中からギルドを見つけ出して見せなさい!」


 明日香が不満満杯、面倒臭さ全開に質問をした。


「ヒントはないの? 流石に三つの資料もらっても、手掛かりがなかったら解らないよ!」


 受付嬢が「そう来ましたね!」と答えた後に話を続けた。


「三つ目の封筒の中に各ギルドがある場所の目印になるヒントを三つ書いて入れています! ヒントはその三つだけ! 手段は問いません! あなたたちのようにペアなら情報を共有しあうのも良し! ガロを使って聞き出すも良し! 冒険者らしく振舞ってギルドを探して下さい!」


 これは燃える展開だ。


 つまり、この最終都市ユーグの中にあるギルドを自力他力問わず探し出せって内容だ。


 僕たちは封筒を開いて中身を確認する。


 僕が目指す召喚士ギルドがある場所の目印は以下の三つだった。


※純白のゴーレムが常に見張る巨壁。

※リヴァイアサンの生み出した激流を打ち破る勇者。

※ガーゴイルのくちばしを眺める隠者。



 この文章だけだと意味不明だ。


 最終都市ユーグの土地を比喩した文章なのは解る。


 だが、土地勘が全くない僕にとっては難題だ。


 何か良い打開策はないか?


 考えていたら、鳩尾(みぞおち)に熟練されたボディブローが叩きこまれた。


 明日香がまた、「私、不満があります!」と行動で訴えかけてきた。


 この怪獣女め!


 無駄に力があるから厄介だ!


「豊、自分の職業の場所も大切だけど、私の場所も一緒に考えてよ! 私、豊みたいに頭が良くない! 大学だって運で卒業できたみたいなものなんだよ!」


 プンスカ怒っている彼女様。


 僕よりも偏差値が高い大学出身者な癖に良く言うよ。


 明日香に「見せて」とぶっきらぼうに吐き捨てる。


 明日香はつっけんどんとした態度で、洋紙を渡してきた。


 書かれていたのは以下の三つだ。


※ティターニアの玉座がある岬。

※ガルーダの羽が飛び交う大空。

※タイタンの掌に囚われし姫君。


 僕の文章と同じだ。何を意味しているのか、さっぱり解らない。

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