第6話 冒険者ギルドへ(1)

「気持ち悪い……。まだ、吐ける……。豊、背中さすって――」


「明日香は本当にお酒と乗り物に弱いな……。歩いて十歩もしない内にゲロ十回は不味いよ。一歩で一ゲロ以上の計算になるよ」


 僕たちは夜に最終都市「ユーグ」に到着した。


 ユーグは階層大地イデア=ログの第一階層首都だ。今は人間と共存する精霊たちの最後の砦になっていた。


 明日香がゲロを吐いている間、商人のおじさんから聞いた話をまとめてみよう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 階層大地イデア=ログは五層から成り立っていた。


 百年前、イデア=ログに魂の集合体「幻獣」が現れた。


 イデア=ログに古来より住む者たちと、幻獣は生存権を懸けて全面戦争を行った。これを「統合戦役」と呼んでいた。結果、古来より住む種族が敗北をした。


 幻獣たちは勢力を強め五層、四層、三層と快進撃を続けた。


 今は第一層のユーグ以外は幻獣の勢力下にあった。


 古来より住む種族は数を減らし、姿を消して行きながらも抗っている――。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 僕はここまで、商人のおじさんに聞いた。

 

 その中で、僕たちは戦いに巻き込まれたと憶測を立てた。


 僕の好きな漫画や小説だと、僕と明日香がまるで、このイデア=ログを救うために召喚されたとしか考えられない。いや、僕の考えだと「そうだ」と確信に近い気持ちが心に満ちていた。


 その答えを知るために、冒険者ギルドに向かう。


 だけどその前に――。


「ウエップ……。み、水が欲しい――。なんで、事前に酔い止め薬を持ってこなかったの? 激しく後悔しているわ――」


 愛しの彼女の酔いが治るまで、商人のおじさんに降ろしてもらった入口門前から動けません。


 ゲロ臭い彼女を見ながら涙で前が潤んで見えたよ。

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