第7話 松本 せりか

「短剣を隠し持ってるなんて、卑怯だわ」

 アンがネリに向かって叫んだ。

 ネリの気がアンに向いた瞬間、ガルムに短剣をはじき飛ばされた。

 ガルムがネリの首元に剣を突きつける。

「勝負あったな。勝負の途中でよそに気をやるなんてもってのほかだ」

 いつの間にか来ていたヌーファスが言う。

 ネリは、足から崩れ落ち悔しそうに地面を拳で叩いた。

「ちくしょう!」

 ガルムは、その様子を見ていた。

 別に先程ネリが短剣を隠し持っていた事は、何の問題も無いとガルムは思っている。

 よくあることだし、自分がすることは相手もするだろうと考え戦える。

 ネリも思ってたよりガキじゃ無い。

 真っ先にアンのせいにすると思ってたんだがな。

 けどなぁ、世界はこの子達が思っているほど、平和でも輝きに満ちているわけではない。ありゃ、おとぎ話に近い話だ。

 魔道士ノバの不穏な動きもある……。

 だけど……。ガルムは、アンの首元にある首飾りをみる。

『アンが首飾りを身に着けたら』との、異国王との約束……。

(賭けだったんだがなぁ)

「なぁ、ヌーファス。あんたの息子連れって行っていいか?」

「はぁ?良いわけないだろう。跡取り息子だぞ」

 ヌーファスは、ガルムにふざけるなって感じでいう。


「アン」

「なに? おじさん」

「アンも旅に付いてくるか?」

「え? いえ、私は……」

 アンは、返事をしようとした瞬間、昨晩見た悪夢を思い出していた。

 あの恐ろしい……夢。

「怖い夢でも、見たか。えらい怯えようなんだが」

 ガルムは近くまで来て、頭を撫でてくれた。

 そこから恐怖心が抜けていくようで、アンはホッとする。

 下を向いているアンの耳元でガルムはささやく。

「悪夢が本当にならないように。一緒に旅に出てみないか?」

 アンがガルムの方を振り向いたときには、頭をポンポンってして、ヌーファスの方に向かってた。

「おじさん。僕、一緒に行って良いの?」

「ああ。アンを説得できたらな」

 ガルムは振り向きもせず、片手を上げてネリに言ってた。

「おい。俺はまだ許したわけでは……」

 文句を言っているヌーファスの腕を掴む。

「朝食済んだら、ちょっと真面目な話しようぜ」

 真剣な顔をして、ガルムが言ってきた。

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