第8話 宮上 想史

「たいへんだ!エルフの森に飛空艇が墜落して、森が燃えているらしい!」

太っちょのザビイが勢い込んで走ってきた。

「なんだと!?」

エルフの森は30キロは先にある大きな森だが、ネリたちが住んでいる里と交流があり、物のやりとりが盛んに行われている場所だった。

ガルムはヌーファスに先にいっていると言って、一人で飛び出していった。

ヌーファスは森を鎮火するための、指示を人々にだすために家をでた。

「アン!僕たちも手伝いに行こう!」

「ええ!」


里のものたちの編成隊は水龍に乗って駆けだした。

「グギャアアアア」

水龍の鳴き声。

水龍はトカゲに似た生き物だが、三メータはある大きな体を持った、強い生き物だった。走る速さも馬に負けないほどある。


「見ろ!」


見ると、巨大な木々たちが燃えさかっていた。轟々と燃える炎が逆巻いて森を飲み込もうとしている。

「なんと……」

「こうなってしまっては、我らの力では……、皆やるべきことをなせ!」

水龍に水を吐き出させる。

しかし、水は蒸発して水蒸気になるだけだった。

逃げていたエルフは、魔法が使えるものがあつまって準備をしだす。

「天候みつる所に我はあり、黄泉の門開くところに汝あり」

ぬーふぁす「そ、それは……」

巨大な魔法陣が現れ、まばゆいばかりの極光を放った。

空は曇天になり雨がポツポツと降り出し、だんだんと雨脚が強まっていく。

「これならばこれ以上は燃え広がらないだろう」

その時、水龍に似た鳴き声が聞こえた。

いや、水龍よりも大きくて力強い咆哮だった。

「なんだ?」

ヌーファスの乗っていた水龍は怯えたように動きを鈍らせる。

「飛空艇にくっついて、ドラゴンがいやがるんだ」

エルフが落ちた声音で言った。

「なんだと!?」

ガルムはそれを聞いて、場所はどこだとエルフに聞き出し、水龍でかけだした。


ネリ「オーララララララララララ」

ネリは水龍を走らせる。

「あの馬鹿野郎が!」

ヌーファスは怒りをあらわにして、水龍を走らせようとしたが、ヌーファスの乗っていた水龍は体力の限界に来ていた。

「わたしにまかせてください!」

アンが水龍と共に飛び出す。

「若者はろくに判断もできないから困るわ!」

と激怒して、拳を水龍の硬い鱗に打ち付けた。

「ヌーファス様!帝国の兵がエルフを惨殺しています!」

「な……こんな時に」

ヌーファスは息をはいた。ネリとアンはガルムにまかせることにした。

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