神界
俺はこの景色を知識でしか知らない。
窓から覗くと目の前に広がる無数の日本家屋。その奥には平安の貴族の家があった。
俺のの目の前には無数の人がおり。
その人々も豪華な和装をしていた。
こんこんという音とともに数人の人が入ってきた。
その中でもひときわ目立っている老人がいた。
年はものすごい取っていて、もう死にそうな感じだ。しかし、吸い込まれるような青色の目は俺をじっと捉え、強い意志を感じた。
するとその老人は口を開いた。
「お前はもう死んだいる」
そう言いながら俺に近ずくと頭に触れて涙ぐみ
「すまなかった。お前がこちらの世界に来たのは我々の封印を自力で解き逃げてしまったからだ。」
すると向こうから、女性の声がして、俺と老人の方へとやってきた。
黒髪黒目の十代前半ほどに見える銀髪の彼女は、老人と同じようなきらびやかな十二単をを着ている。
「お父様、あれはあなた様だけのせいではありません。我々神の力を持つものさえ見抜けなかったものであります。そんなに気を落とさないでください」
彼女は老人の方に手を当てながら悔しそうにそう答えた。
俺は何の話かよくわからなくて声を出すことができない。
それよりも俺は死んだのか。まあ、そうだよな。全身火で包まれたのだ。生きていたら全国ニュースに取り上げられること間違いなしだ……、それは嫌だな。俺、目立ちたくないもん。そんなことを考えていたら。彼女が口を開いた。
「あら、あなたには生き返ったもらうよ。だからここに連れてきたのだから」
はい?
「だから、お父様があいつに殺されたのはあまりにもかわいそうだから特例で生き返らせることになったの」
はい?
「だから、お父様があいつ……」
「いや、そこじゃなくてな。生き返らせるってこと?いやいや。バカなこと言うなよ。ここは天国ということなの?」
老人が説明する
「ちょっと違うな。この世界は、いわゆるお前たちからから見た異世界というものであり、それもかなり特殊なものだ。全ての時間と空間から断絶されていて、時空と空間の変化による影響を受けない。ここに入れるのは神達とその従者のみ」
死んだかと、思ったというのに……
目が覚めると俺は、神達のみの異世界、つまり神界にいるということになる。
本当に、ここはどこなのかと言いたいくらいみたことのない世界だ。
死んでどれくらい経ったのか知らないが、経緯を思いおこしてみて、痛みがもう全くなくなっていることにも気づいた。
「ようやく痛みがないことに気がついたか。」
中性的な声が不機嫌そうな声でわりこんできた。
もちろん俺は驚くしかない。
言葉遣いは男性のような、中性的な顔の、白髪をポニーテールにした、平安装束姿の大きく碧眼つり目の少年が俺の横にいたのだ。
「はあ……ちゃんと白衣も着てるしわかるだろ。医神だ、医神。名前は
平安装束が白衣……
「大見さん、ですか……ありがとうございます」
呆れたような自己紹介により、助けてくれたのは大穴牟遅神という人らしい事は分かったので、一応お礼を言っておく。服装については突っ込まない。
と言っても、まだぽかんとしたままで、頭の中はちんぷんかんぶんであるが……特に気にせず話を続ける。
「あの……お二人の名前」
「おお、自己紹介がまだだったの。わしの名はイザナギ。そして、娘のスメだ。
お前達の国では天照大神と呼ばれていた子だ。」
「確か、飛沫創真、でしたか。彼、治ったんですね?」
すめと呼ばれた彼女が大見さんに尋ねる。
「ああ。あいつの炎が禍々しく呪いは完全に消せなかった。だが十分動ける。いまご覧の通り」
大見さんの確認に、彼女は大きく頷いた。
俺にとってはちんぷんかんぷんな説明だった。
「…………」
大見さんの言葉に、俺はただ、ぽかーんとしている。
「そういえば、最終確認しておくな。自分の名前、言えるか?」
「飛沫創真」
「4足す3は?」
「……7、です」
「じゃあ、歩いてみろ」
「はい」
続く大見の質問にも、ぼうっと答え、起き上がってもう痛くない体を歩かせた。
流されるままで、まだ頭の中にある謎は全く解明されない。
「なぜ、お前は生きていた世界で違和感を覚えたのか」
そこで、流されていた俺の言葉はピタッと止まった。
「はい、じゃあ、質問は終わりだ」
大見さんは何かを書き留めると、俺にそう言ってくる。
正直言うと俺はもう、何かを聞く気力もなかった。
どっと疲れてしまったのだ。結局、疲れたから動きたくない、と言うことだろうか。
そのためか、俺は強烈に、眠気に襲われて……
そのまま、眠ることとなった。
どうやら俺は、また眠ってしまったようだ。
周りは先ほどと同じ、
そう、確か、俺は、異世界にーー
「えええええ!?」
俺はそこまで思い出して、流されていた頭の情報に驚き、思わず叫んでしまった。のだが、
「うるさいですよ、創真さん」
そこで横から、淡々とした注意の声が聞こえた。
「え……」
人がいると思わなくて、俺はそう呟き、はずかしさに少し顔を赤くしながら横を見れば、あのすめさんだった。
癖のない長い銀髪に、綺麗な灼眼。アニメでしか見たことがないような美少女だ。俺は、別の意味で顔が赤くなってしまう。
「挨拶を、二度目ですね。すめといいます。今度からあなたの世界に一緒に同行することになりました。よろしく」
しかしその美少女は、またまた俺にとって訳のわからない展開へもっていくような言葉を、淡々と口に出すのであった。
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