ランプ
@yatamikami
6380年の世界
今から当たり前のことを言おう。
六千三十八年現在、日本の首都、東京。
凄まじい権力を握る県であり、人口も周りの比にならないほど多い。
そんなこと、日本にいれば誰もが知っている。
では、今から頭のおかしいことを言おう。
六千三十八年現在、日本の首都は東京だ。
日本には犯罪という言葉か小さいように感じる、もっと別の何かがこの国にはあったはずだ。この国にでは何か恐れてを恐れていたはずだ。
それが何かというと霧が掛かったようで思い出せない。
でも、古文の教科書に出てくる化け物には違和感しか出てこない。
物心ついてからずっと消えない違和感だが、生まれてこのかた、こんなこと誰にも言ったことがない。
だって、バカにされることはもう目に見えているからだ。
例として古事記が挙げられる。
イザナギは、黄泉平坂に、千人がかりでないと動かせないような大岩を引っ張ってきて、それで黄泉の国と地上の世界の間をふさいでしまった。
こうして二人は別れ別れになり、地上の世界と黄泉の国とは、永久に行き来できない石のとびらでふさがれてしまい、それからというもの、亡くなる人よりも生まれる人の方が多くなり、地上の人は次第に増えるようになったのだ。
高校生2年生の俺は、いたって普通だ。
勉強ができるような秀才気質もなく、笑いを取るのがうまくてクラスの人気者でもなく、運動が得意な脳筋でもない。
だが、それでいいのだ。普通は目立たないから、変に絡まれることもないし、色恋の面倒沙汰になることもない。
だからこそ普通の人間には相応しくないだろう。歴史や古文の勉強をするたびに思う違和感など、テストや成績から見てもない方がありがたいのだ。
いつものように、というわけでもなくただちょっとセンチメンタルにそう考えながら、俺は一人寂しく、学校からの帰路についていた。友達がいないわけではないが、帰るときは大体一人である。
ぼーっと歩き、信号が赤になっているのを見たところで、横断歩道の前で立ち止まる。車は来ていないが、止まるのは一応だ。
この大通りを抜けたら家などすぐ‥‥ などと思っていたのだがーー
その人影は、黒いフードをすっぽり被っていた。怪しくないか怪しいか、人目見ればはっきりわかる姿だ。俺は絶対に関わりたくなかった。
だから、はやく横断歩道を渡りたいと思いながら、フードの人物とは別の方向を向いた。もう、赤信号でも渡ってしまおうか。
「この世界は、おかしいと思うか? この世界に違和感を、感じるか?」
だと言うのに、フードの主は、俺の方に目掛けて言葉を投げかけてくるではないか。男性の声のようだったが、かなり淡々とした声であった。
少しずつ近づいてくる彼に、俺は後退りをする。
フードの人物の言葉に、図星をつかれた、と思った。彼の言葉が、怖かった。
初めてあった人物に、思っていたことを淡々と言い当てられるなど……恐怖以外の何者でもない。
「おかしいなんて、そんなわけ……」
だから俺は、思ってもいない否定の言葉を口にした。追及からただ逃げたかったのだ。
そして俺は、赤信号なのも気にせず、横断歩道を渡ることにした。車は来ない今、逃げることが優先だ。
けれど、フードから除く強烈な視線はやまない。
「いや。おかしいと思うお前は、死ぬしかない」
問答無用というようなその言葉と同時に、フードの人物は手を上げると、ものすごい熱さが全身を包む。
一瞬だったー
店のガラスが鏡の役割を皮肉にも果たしている。俺は身体中から火を吹いていた。
「あ、ああああああああああああああああああ!」
多くの人が救急車を呼んだり火を消そうとここ見てくれた。だが火は、勢いを増していく。
そして、俺は叫んで、痛みで、叫んでーー
「あ、あ……」
そして意識は遠のいていった。
ああ、俺、死ぬのか、な……ーー
「起きよ……。そな……まだ死n……」
誰かの声がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます