第32話 戦闘シーンはいるの?

「ああ~、○○少女たちの食費で、私のアフタヌーンティー代が消えていく・・・・・・トホホ。」

 お小遣いが減ることに悲しみを覚える母のひばり。

「お母さん、超能力でお金を生み出せばいいだけなんだから泣かないで。」

 なだめる良く出来た礼儀正しい妹の楓。

「騒がしくてゆっくり新聞も読めないし、ゲームもできない。」

 父の慎太郎は世界的有名なマジシャンで、趣味は新聞とゲームだった。

「お父さん、ゲームって面白いの?」

 ゲームという言葉に食いついた好奇心旺盛の姉の真理亜。

「面白いよ。」

「どんなゲームをやっているの?」

「これか? このゲームは「サイキック少女ゲーム」だ。」

 父の遊んでいるゲームは娘が主人公のゲームだった。

「タイキック少女ゲーム?」

「サイキック少女ゲームよ! お姉ちゃん! 少しズレてるよ!」

「アハッ!」

 お約束の展開。

「それって私が主人公のゲームじゃない!?」

 やっと姉は大切な所に気がついた。

「そうだよ。私が超能力でプログラミングして、サイキック少女ゲームを作ったのだ。ワッハッハー!」

 得意げな父。

「いけないんだー! ゲームの偽造は犯罪よ!」

「超能力だから証拠はない! ワッハッハー!」

「あの・・・・・・お父さん。」

「なんだ?」

「私の出演料はもらえるんでしょうね?」

「もちろんだ。ゲームがバカ売れすればな。ただし、お母さんには内緒だぞ。」

「ニヤッ。」

 父と姉は自主開発ゲームの利権で同盟を結んだ。

「全部、丸見えなんですけど。」

 その父と姉のやり取りを冷ややかな目で見つめる妹。

「このゲーム、戦闘ゲームなのね。私たち○○少女は可愛いのに。」

「今の所ゲーム化しようとすれば、戦闘ゲームが一番簡単。他はアイドルのリズムゲームも登場キャラクターがカワイイというアニメのファンが中心で、実際にやる人は少ないし、忙しいから単純なパズルゲームとかしかやれないからね。」

 父はゲーム業界を語る。

「そうか、じゃあ、私がゲーム化されるためには戦闘シーンが必要なんだ。でも私は大丈夫。アハッ!」

 どこか余裕そうな姉。

「どうして? 必殺技の名前とか決めないといけないんだよ?」

 姉の自信が不思議なので尋ねる妹。

「だって私には、タイキックがあるもの!」

「カッコイイ!」

 タイキックを口にする姉の顔は、妹には珍しく素敵に見えた。

 つづく。

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